『宣講拾遺』は『宣講集要』の後に編纂された清末の説唱形式の宣講書であり、全国的に普及し、各地で多くの版本が刊行された。この宣講書の特徴は『宣講集要』の案証を参考にしながら聴衆の要望に応じて新しい案証を編纂し、案証の冒頭に主旨を解説してわかりやすくし、人物の「宣」を多く挿入して読者の感情移入を誘うという工夫を施している点にある。本論文では『宣講集要』中から収録した案証と本書の案証を比較したり、後世の宣講書や民間芸能に継承された本書の案証を調査したりすることによって、本書がいかに民衆教化に貢献したかを立証する。