Journal of East Asian studies

PISSN : 1347-9415
NCID : AA11831154

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Journal of East Asian studies Volume 11
published_at 2013-03

Musical culture and national identity : a comparative study of Japan and Thailand

音楽文化と国民アイデンティティー : 日本とタイの事例比較
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D300011000001.pdf
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情報や輸送技術の発達によって、世界ではグローバル化が加速していると言われる。これによって多様な文化が一つの強力な文化に収斂していくとも、それに対抗すべくローカルな文化の自己主張が強まるとも言われている。また、複数の文化が混合する文化のハイブリット化も、グローバル化のもたらす一つの現象であるとされ、その際に行われる選択によって、様々に異なるハイブリッド文化を生むだろうと考えられている。しかし、現在進行中のグローバル化の結果として、どのように多様なハイブリッド文化が生まれるのか、その結果を検証するには時期尚早である。このような関心のもと、本稿では、文化のハイブリッド化を研究する手がかりとして、すでにある程度の時間の経過を経ており、何らかの結果が検証可能であろうと考えられる、19世紀後半からの日本とタイにおける音楽文化を事例として取り上げ、西洋音楽文化受容による両国の音楽文化の変化のプロセスと国家の閏わり、その結果としての現在の人々の音楽における国民アイデンティティーを、文献および質問紙調査に基づいて考察することとした。前半では、文献をもとに日本とタイの近代化を比較し、近代化を開始するにあたって、それまでの社会の支配層が入れ替わったかそのままであったかによって、両国の音楽文化に対する政策が異なっていたこと、第二次世界大戦後の社会における天皇と国王の位置づけの違いがあることを明らかにする。後半では、タイと日本の大学生を対象とした質問紙調査の分析結果から、これらの政策の違いが両国の音楽文化に及ぼした影響を考察し、両国とも「国民アイデンティティティー」は西洋化された国民教化目的の音楽であるが、それが特定の音楽カテゴリーとして存在しているか、歌詞の内容によるものかの違いが見られることを論じる。