本稿は、在台湾日系企業で働く日本人と台湾人の日台間コミュニケーション問題が文化の差によって生じたものであることを、理論と面接調査に基づいて解明することを目的としている。はじめに異文化間コミュニケーションにおいて何が重要なことであるかを理論面から考察し、異なる文化間で起きるコミュニケーション摩擦が、自文化で身に付けた行動様式に起因すること、相手にとって適切な行動をとるには、スキーマを身につける必要があることを論じる。次に在台湾日系企業で働く日本人と台湾人への面接調査から得られた日台間コミュニケーション問題を提示し、これらの問題が、文化の差による、相手にとって不適切な判断と行動で生じたものであることを、日本人を対象にした行動様式に関する面接調査と、文献調査から得た日本社会、台湾社会で働く台湾人にとって、日本人との円滑な社内コミュニケーションのために特に留意すべき文化スキーマを示し、それに応じた適切な判断及び行動をとることの重要性と、台湾の高等教育におけるそのような行動を身につけるためにどのような授業が必要なのかを論じる。