灰色かび病菌 Botrytis cinerea P_<ERSOON> の分生胞子形成,菌核の形態および分生胞子の発芽について,凍結法によって作製した試料を用い,走査電子顕微鏡によって観察した。1,分生子柄上における分生胞子形成とその発達の順序は,およそ8時代に区別できた。また,分生子柄および分生胞子の表面には微細ないぼ状突起が密布していた。2.培地上に生じた菌核の組織は3層からなり,最外層すなわち皮層は球形の細胞からなる偽柔組織で薄く,内側の2層は菌糸組織からなり,そのうち,中心層は厚く菌糸の配列はやや粗で,また,中間層は菌糸の配列が密であった。3.分生胞子の発芽形態には2型が認められた。一つは発芽管発芽,すなわち長く伸びた発芽管の先端に付着器を形成する型であり,他は付着器発芽,すなわち発芽後ただちに付着器を形成する型である。植物体上における発芽管および付着器形成の生態から,灰色かび病菌は表皮細胞の細胞縫合部から角皮を貫通して宿主体内に侵入することが推測された。(昭和49年7月1日受理〉