Journal of East Asian studies

The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university

PISSN : 1347-9415
NCID : AA11831154

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Journal of East Asian studies Volume 20
published_at 2022-03-01

Practical research on the formation of “agentic learning” in the training and education for speech-language-hearing therapists : through the development of learning evaluation utilizing the ICE approach

言語聴覚士養成教育における 「主体的な学び」の形成に関する実践的研究 : ICEアプローチを活用した学習評価の開発を通して
Matsuo Akira
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東アジア研究_第20号_004.pdf
本研究の目的は、ICEアプローチの学習理論に基づいて目標・評価を設定した授業実践を実施し、その成果を検証することを通して、言語聴覚士養成教育における「主体的な学び」の形成のためにICEアプローチが持つ可能性について明らかにすることである。言語聴覚士養成教育の現状として「主体的な学び」の形成が意識的に行われているとは言い難い状況がある。なぜなら、専門職の将来を見据えた、生涯にわたる学習につながる設計ではなく、「国家試験合格」が卒前教育のゴールであるかのような授業実践が行われている現状が存在しているからである。ICEアプローチは、ウィルソン(Robert J.Wilson)によって1996年に提唱され、2000年にヤング(Sue Fostaty Young)とウィルソンによって発展させられた学習理論である。学習における認知の変容を「基礎的知識(Ideas)」、「つながり(Connections)」、「知の応用(Extensions)」の3つのフェーズで捉えるICEアプローチは、学習者の学習過程や到達度を教員だけではなく、学習者の自己評価も通して双方向から認識することを可能とする点に特徴を持っている。本研究では、ICEアプローチに基づいてデザインされた授業を実践し、パフォーマンス課題に対する学習者の自己評価の記載内容を検討することで、ICEアプローチの有効性を検証した。実践研究の結果として、ICEの3つのフェーズを意識することで、学習者は自分の学びの位置を認識でき、教員も学習者の学びの位置を把握し、指導を検討するといった形成的評価の一面が得られた。教員による評価、学習者による自己評価と独立した評価ではなく、学習者と教員の双方向から学びの位置を認識し学びを進めていくことで、教員側の「何を教えるか」といった教育目標のみならず、学習者側の「何を学びたいか」といった双方向からの教育目標と評価を可能とした。したがって、言語聴覚士養成教育における「主体的な学び」の形成には、ICEアプローチを用いた学習目標ならびに評価の有用性は高いと考えられる。