肝吸虫がわが国の多くの県に広く分布していることは周知の事実である。山口県下でも昭和39年夏,岡山大学医学部で組織された「中国地方肝吸虫調査団」の来県により,新たに山口市名田島地区において肝吸虫の第一中間宿主たるマメタニシの棲息が確認され,その後の検査によって同地区が本吸虫の濃厚浸淫地帯であることが証明された。さらに猫が肝吸虫の重要な終宿主の一つであることも知られており,この両者の関係を調査した報告は多いが,その患畜についての病理学的所見に関する詳細な記載はない。また家畜におけるアミロイド症は一般に想像されているほど稀れな疾患ではないといわれているが,猫の本症例は比較的すくなく,わが国では中松らの一例報告があるにすぎない。著者らは最近,全身性アミロイド症と肝吸虫の重度寄生を合併した症例を剖検する機会に恵まれたので,主としてその病理組織学的所見に報告した。