旅行者が観光地を選択する時に重視するポイントは、観光地の魅力である。観光地の魅力とは、主観的で個人により差異があり、曖昧な表現である。ところが一般的に観光地の魅力について語るときに、来訪者数(入込者数とも呼ぶ)を用い、その人数が多いことで魅力が大きいと表現することが多い。果たして、人数だけで魅力で大きいと言えるのであろうか?来訪者は、該当する観光地以外から訪れた人々であるが、それらの旅行者の居住地は近隣もあれば遠方であることも考えられる。近くの来訪者より、遠方の来訪者が大きなエネルギーを使い訪れていることになる。観光地の魅力の大きさを考えることには、これら来訪者がどこからどのような交通機関を利用してきたかを理解することが必要となる。本研究では、奈良(1996)の誘致圏と誘致率の考え方を、2つの観光地の宿泊者アンケート調査のデータをもとに分析し、魅力の大きさの差異を示すグラフを示し考察した。分析に使用した宿泊者アンケート調査は、湯田温泉と萩で独自に行った調査である。調査データをもとに、宿泊者の居住地と利用交通機関に関する情報を分析し、誘致率を算出し、誘致率曲線を描き、湯田温泉と萩の魅力の比較を行った。分析結果としては、萩が湯田温泉より誘致圏が広く、曲線の減少幅が少ないことで、湯田温泉より魅力が大きいことを示した。本章と第3章の研究を集約することで、観光地の魅力の定量化についての知見を集約し、「観光地の魅力の定量化モデル」を構築することができ意義あるものとなった。「観光地の魅力の定量化モデル」で、誘致率が高まることが魅力を高めることであることを示した。