What is famine ? : definitions that cannot explain reality

本稿は、多くの辞書や事典などにおける飢饉の「定義」がある偏りを持ったものであり、そのため現実を見る目を、理論的にも政策的にも、阻害していることを論じる。飢饉の定義に、未だ最終的な決定版と呼ばれ得るようなものはない。理論的かつ政策的にも正しい飢饉理解を妨げている現状における「定義」は、根本的に再検討されなければならない。第２節では、日本語を中心とする辞書・辞典類を検討し、第３節で外国語におけるそれらを比較検討する。第４説では、飢饉が起こる因果関係についてはそれほど合意があるのではないことを論じ、飢饉とは極めて複雑な社会的プロセスを表すものであることを議論する。第５節では、当面の飢饉定義を行うことが可能かどうか検討する。最後に、飢饉のおきる根底には貧困と不平等、そして慢性的な飢餓を主な要素とする「飢饉脆弱性」とでも呼ばれるものがあり、その政治経済学的な分析が飢饉理解のためには必須であることを論じる。