Journal of East Asian studies Volume 23
published_at 2025-03-01
総合的な学習の時間の話し合い場面における「協働」の質を高める方略は、教師の経験則に基づいて行われることが多く、暗黙知のままで留まりがちである。そこで本研究では、教師が総合的な学習の時間の話し合い場面における「協働」の質を高めるために必要なイメージと方略を獲得し、それらを実践につなぐために活用することを企図した授業づくり支援ツールを作成した。また、本ツールを用いた研修プログラムを受講した若手教師からの評価をもとにツールを改善するとともに、アンケート調査を通して、若手教師が、総合的な学習の時間に対する意識や総合的な学習の時間の話し合い場面における「協働」を具現化するためのイメージや方略をどのように変容させたかについて把握し、本ツールを活用する意義について分析した。その結果、本ツールは、若手教師にとって、目指すべき質の高い「協働」のイメージと方略を明確化・具体化し、授業づくりの困難さを軽減させるための指針となっていること、学級の話し合いの現状と進むべき方向性を把握し、授業改善へ向かう意欲を高める効果があることが確認できた。
このことは、先行研究や先進実践をもとに導出した理論も踏まえながら、話し合い場面を設定する上での思考・判断の手がかりとなる理論や思考・判断の流れを詳細に顕在化し、若手教師に研修プログラムを通して授業づくり支援ツールとして提供した成果である。また、話し合い場面における「協働」や方略のイメージをもった上で話し合い場面を考案する流れを生み出すようにツールを提示した成果ともいえる。しかし、全研修プログラム終了時には、若手教師はツールをもとに実践を積み重ねている段階であり、「自信がある」という意識をもつまでには至らなかった。「自信がある」と言い切るまでには、ツールから得たイメージをもとにさらに実践し、子どもの姿が変わったという手応えを得る機会を積み重ねていく必要があるであろう。このことを踏まえ、授業づくり支援ツールの日常的活用や教員研修活用への可能性を吟味し直し、教師の授業力向上に寄与できる研究を推進したい。