Journal of East Asian studies Volume 22
published_at 2024-03-01
生活ゴミ分別制度を進めるには、市民個々の行動が鍵となり、その行動を促す要因を理解しなければならない。分別行動の規定因に関する研究の多くは態度─行動意図─行動という心理的プロセスの観点と経済学に基づく観点から行われてきたが、本研究では分別行動を態度や行動意図などの内的要因の影響が弱い行動と捉え、規範喚起理論、広瀬モデル、「態度-行動-文脈」理論に基づいて、分別行動の規定因に関する仮説モデルを構築した。このモデルを検証するために、上海市の市民へのオンラインアンケート調査を実施し、この結果得た1000人分の回答をもとに分析を行った。なお、このアンケート調査の事前に行った現地調査と5人の市民へのインタビューにより、調査票の内容と妥当性を確認した。
分析には因子分析、共分散構造分析、カイニ乗検定を用い、分別行動に影響を与える規定因を特定した。その結果、「個人規範」(ゴミを分別すべきとの個人の態度)、「分別行動に伴うコスト評価」(分別にかかる手間やコストに対する評価)が分別行動に最も影響を与えていることが分かった。そして、「個人規範」はごみ問題に関するリスク認知や責任帰属認知、そしてごみ分別の有効性認知によって形成されることを明らかにした。さらに、外的要因とした「政策執行評価」(分別政策執行の厳格性)は「生活ゴミ問題の認知」、「個人規範」、分別行動を取るために必要な知識や技能などの有無についての「実行可能性評価」、そして「分別行動」に対して有意な影響を持つことが示された。最後に、人口統計学的要因として、年齢、収入、学歴、居住年数、居住地域といった個人属性が分別行動へ影響することが確認された。
また、こうした結果に基づいて、分別への参加率を高めるために、オンラインショッピングサイトと連携してゴミ問題に関する知識の情報を提供する等、具体的な提案を行った。
Creator Keywords
都市生活ゴミ
分別行動の規定因
因子分析
共分散構造分析