近年,中国・韓国といった東アジアの中進国及び日本をはじめとした先進諸国で,経済的格差の拡大が大きな問題となっている。同時に,格差あるいは社会階層の固定化が進んでいるとの指摘もある。本稿では,これらの背景には人的資本獲得のための費用の上昇と不確実性の高まりがあるのではないかと考え,教育費用とその不確実性が世代間階層移動と所得格差に与える影響について分析する。その結果,不確実性の増大は所得階層の固定化を進めるとともに,所得格差も拡大させることが示される。また,所得に占める必要な教育費用のシェアが所得とともに上昇する場合,不確実性の増大が中期において階層の固定化と所得格差の拡大をより大きくすることも明らかにされる。