錦鯉は観賞魚として産業的な価値が次第に高まり,近年は我国の国魚として世界に広く輸出されているのが現状である。又最近は米作減反の一方向として稲田養鯉が盛んになり,錦鯉に関する研究熟は日増に高く,品積改良,池の構造,餌料などについては若干の研究が進められている。他方水質が錦鯉の生理に及ぼす影響についての親告は少ない。錦鯉の池中飼育は自然水域と異なり,限られた面積に過飽和に近い尾数を飼育し,それに種々の濾過装置を付し,水質調整のため薬品等の投入をし,それに加え魚の排泄によるアンモニア汚染,又地域により原水として使用する水質にも可成りの差異があり,非常に巾広い水質の変化が予想される。これ等の諸条件が錦鯉の生理に及ぼす影響は大きいと考えられる。筆者はこれ等の水質が錦鯉の生理に及ぼす影響を究明するため,県下197点の養魚池を選び昭和46年12月5日より翌年1月30日の間にわたり,冬季飼育水の調査を行う機会を得,その概略を知り得たので報告する。本文に入るに先だち御懇切な御指導と,本稿の御高閲を賜わった本学教授神谷精吾博士ならびに,分析及び試薬調整に当り御助言戴いた本学教授渡辺敬博士ならびに同助教授徳富正義氏に深甚の謝意を表すと共に,採水分析等について御協力戴いた本学々生内藤順一,吉岡信恵の両君に対し感謝の意を表する。