耕作中誤って作物の茎葉や根を傷つけ,また除草剤使用に当って,これが作物に接触したり,地下滲透後作物根より吸収されなどして,作物に対して薬害を来す場合が屡々観察される。このことは,病害虫防除用薬剤についてもいえる事であって,その濃度,撒布時期,薬剤の種類によっては,矢張り,夫々の程度において薬害がみられるものである。勿論,上述した栄養体部の物理的損傷も,この程度如何によっては,反って作物体の若返りを招く場合もあり,また,2.4Dのようなホルモン系除草剤では,無効分〓の抑制や稈の強剛化などの利点を認める場合もあるが,一般には,何れも作物の生育に何等かの障害をもたらすものと考えて差支えない。次に雑草害は,空間及び根圏に於ける,作物と雑草との生育競合の姿として把握される。この場合,作物の絶対的優位性を確保するためには,雑草を抜き去ることが望ましいが,既に地下部錯綜し,止むを得ず地上部の刈取りに止めざるを得ない場合もあり,また集約度の低い対象作物については,単に畦間,株間の雑草を刈取る程度の除草作業も屡々おこなわれるのである。斯様な場合,雑草の地上部栄養体のみを除去した場合,地下部の養分吸収の場での競合力を,どの程度弱めうるものであるかを明らかにしておく必要がある。筆者は,上に述べた理由で主として,作物体が機械的損傷をうけた場合や,各種薬剤処理によって,薬害の徴候がみられるような場合に,作物の生理機能に如何なる変化がみられるか,さらに,これらの変化とその後の生育との関係を知ろうとして,一連の実験を実施している。今回は,これらの内,主として,物理的な傷害の部位,程度が直接養分吸収に如何なる影響をもたらすかを,NH_4Nを指標として行なった試験の一部を予報的に報告したい。試験は1959~1960に亘って,山口大学教育学部防府分校に於て実施されたが,ここでは主と