前報に,ある種の植物は地下部に生育阻害物質を含み特にヒガンバナ科のヒガンバナ及スイセンの球根中には極めて強力な此種の物質の存在することを報じた。今回は主としてこの物質の作用機構について考察を試みたい。ヒガンバナのもつ生長阻害物質はこの植物の何れの部分にも含まれているが,特に球根部に著しく,又その作用がイネ,ダイズ,ダイコン等供試作物のすべてに対してみられることは前報で既述した。更にこの阻害作用は幼芽と幼根の何れの生長に対してもみられるが,特に後者に対して劇しく宛もイネを酸素を除いた水中で発芽させた場合に観察される異常生育の状態に酷似した。上の状態から阻害の原因は呼吸障害にあるのではないかと考えたので次に述べる1,2の実験を試みた。実験I呼吸量に及ぼす浸出液の影響シャーレに濾紙を敷き前報に述べた濃度の浸出液をしみこませた区と,浸出液のかわりに同量の水を用いた対照区とを設け,小麦農林61号の精選粒を置床し,48時間後(白く芽を切った程度)各区15粒をとりJonesとBoysen-Jensenの両方法に依って呼出CO_2の量を比較した。その結果両試験ともほゞ同様の結果が観察され処理区は明らかに呼吸阻害がみられた。即ち処理区の呼出CO_2の量は対照区に対して概ね55~65%の値を示した。実験II酵素作用に対する阻害試験(1)カタラーゼ作用に対する阻害実験IIと同様に処理された材料10粒宛をとって供試した。試験は玉利,福士氏等の採用したHennichsの方法に準じた。即ち,供試粒を磨砕しM/15K_2HPO_4(P.H.7.2)25ccを混じて30℃に15分間放置した後,遠心分離した上澄液10ccを採って酵素液とした。これ