脂肪酸は生体の恒常性維持のうえで必須の栄養素であり、細胞膜の構成や細胞活動のエネルギー基質として重要である。脂肪酸結合蛋白質(Fatty Acid Binding Protein:FABP)は、水に不溶な長鎖脂肪酸を可溶化する細胞内キャリアーであり、リガンドである長鎖脂肪酸の細胞内動態を制御することで、脂質代謝の恒常性維持やシグナル伝達に関与すると考えられている。食餌性脂肪酸摂取の質や量と、免疫系細胞の恒常性との関わりは以前から示唆されていたが、我々は現在、免疫系細胞の脂質恒常性維持におけるFABP分子の役割に着目し解析を加えている。この総説では、3種類のFABP分子(FABP4/脂肪細胞型FABP、FABP5/表皮型FABP、FABP7/脳型FABP)の免疫系細胞や免疫組織での発現局在と、遺伝子ノックアウトマウスなどの解析から得られた知見について示し、免疫系におけるFABP分子の機能について考察する。