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Creators : 宮本 いずみ Updated At : 2023-06-05 16:36:37
間葉系幹細胞(MSC)は、再生医療において有用な細胞である。MSCの培養工程の初期に、組織から抽出した単核球を培養容器に播種し、MSCの単離を行う。単離工程において、単核球の播種密度を最適化することで、単離後のMSCの収量や分化能が向上することが報告されている。しかし、単核球の播種密度がMSCの品質に影響する機構は明らかになっていない。 我々はその機構を明らかにする為、ヒト骨髄単核球を様々な播種密度(4.0×104、1.25×105、2.5×105、6.3×105、1.25×106cells/cm2)で培養し、単核球の播種密度とMSCのコロニー形成過程との関係を解析した。播種密度が高い条件(6.3×105、1.25×106cells/cm2)では、培養容器に接着したMSC同士の距離が小さく、互いの増殖スペースが制限される為、早期に高密度に達した。一方、低い播種密度(4.0×104、1.25×105 cells/cm2)では、MSCは単一細胞由来のコロニーを形成し、コロニーの直径や密度は様々な形態を示した。コロニーを継時観察したところ、高い増殖能力を持つMSCは、培養時間の経過に伴い、全体におけるその割合が増加した。それに対して、増殖能力が低いMSCは肥大化し、老化が進行した。老化細胞は剥離処理の時間を調整することで除去できることを見出した。単核球の播種密度が低い条件で、上記機構により、増殖能が高いMSCの純度が向上することが明らかになった。この機構をもとに単離工程のパラメータを最適化し、得られたMSCの増殖能と分化能を評価した。単核球の播種密度が高い条件(1.25×106cells/cm2)と比較し、最適化した条件(播種密度:1.25×105cells/cm2)から得られたMSCは、高い増殖能を示し、骨以外の脂肪や軟骨への分化能が有意に上昇した。 本研究により、高品質なMSCの純度を向上させる方法として、(1)単一細胞由来のコロニーを形成させる為に単核球の播種密度を最適化すること、(2)高い増殖能を持つMSCの割合を増やす為に培養期間を調整すること、(3)老化細胞を除去できる剥離処理の時間を設定することを提案する。
Creators : 永井 寛之 Updated At : 2023-06-05 16:03:18
方法: 本研究は圧縮センシングを用いた自由呼吸下での多相ダイナミックEOB-MRIを撮像された96人の患者を対象とした。多相ダイナミック撮像として自由呼吸下で11秒毎に1相を5分間、脂肪抑制T1強調画像を撮像し、単純1相と造影28相を撮像した。造影剤投与後20分後に肝細胞相を撮像し、30相目とした。ROI: region of intensityを肝右葉に2つ、左葉に1つを脈管を避けながら可能な限り大きく設定した。3つのROIの信号強度の平均値をそれぞれの時相の信号強度とした。 以下の増強効果のパラメータについて評価した。 CER (contrast enhancement ratio) CERy-x: (SIy -SIx)/SIx (x相目からy相目)とし、 CER4-pre:動脈相 CER7-5:門脈相から動脈相にかけて CER7-pre:門脈相 CER28-pre:5分早期肝細胞相 CER28-7:門脈相から5分早期肝細胞相 CERHBP-pre:20分肝細胞相 GRL (gradient of regression line):回帰曲線の傾き GRLy-x: x相目からy相目とし、 GRL4-2:動脈相での傾き GRL7-4 :門脈相での傾き GRL 7-2 :動脈相、門脈相にかけての傾き GRL 28-7:門脈相から早期肝細胞相での傾き 先行研究によると、肝実質の線維化の重症度(F0-F2 vs F3-F4)に基づいてCERHBP-preでcut off値を0.703として肝細胞相での増強効果がinsufficient HBP enhancement groupとsufficient HBP enhancement groupに分けれるとしている。CERHBP-pre<0.703またはCERHBP-pre>0.703により患者を2群に分け、CERy-x、GRLy-xについて検討した。 上記に加えて年齢、性別、総ビリルビン、プロトロンビン時間、アルブミン、eGFRについても、この2群間で比較した(ウィルコクソンの順位和検定)。 肝細胞相の増強効果に対する影響の大きさを調べるためにノンパラメトリック検定も用いられた(スピアマンの順位相関係数)。 結果: 動脈相(CER4-pre、GRL4-2)に関する結果として、これらはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupの間に有意差を認めなかった。 動脈門脈相(1相目~7相目)に関する結果としては、CER7-preはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.55 vs 0.44, p<0.001)。CER4-pre、GRL4-2、Gradient7-4、Gradient7-2では2群間に有意差は見られなかった。 5分後の早期肝細胞相(1相目~28相目)に関する結果としては、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7においてsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.64 vs 0.47, 0.10 vs 0.03, 1.27 vs 0.27、すべてp<0.001)。 血液データ(総ビリルビン、プロトロビン時間、アルブミン、eGFR)においても2群間で有意差が認められた(p=0.004-0.049)。CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。 CER28-preが最も相関係数が高かった(0.838)。 考察: 動脈相では2群間(sufficient HBP enhancement groupとinsufficient HBP enhancement group)に有意差を認めず、門脈相のパラメータでは有意差が見られた。機序としては推測になってしまうが、肝の線維化の進行に伴い門脈血流は低下しやすいが、動脈血流は比較的保たれることが原因であろうか。 また、肝細胞相の信号強度は、血液データなどによって得られた肝機能を示す数値と相関することはこれまでにも報告されてきた。肝機能が良好であるほど、肝細胞がEOBを取り込みやすいためとされる。 本研究では腎機能と肝細胞相の信号強度とにも相関が見られたが、腎機能が低い症例の方がより肝排泄の割合が増えるからと思われた。 本研究のように、ダイナミック撮像中に得られるパラメータが肝細胞相における肝実質の信号強度と相関することを報告した研究はこれまでになかった。 CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは、いずれも血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。 本研究のようにダイナミック撮像中に得られたパラメータを用いれば、血液データよりも高い精度で肝実質の信号強度を予測することができる。 これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。 結語: 圧縮センシングを用いた自由呼吸下でのEOB-MRIのダイナミック撮像おいて、肝実質の信号強度の変化を連続データとして捉えることにより得られたパラメータは、肝細胞相での肝実質の信号強度と強い相関を示す。これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
Creators : 田邊 雅也 Updated At : 2023-06-05 14:22:51
背景:糖尿病患者における聴覚障害の有病率は有意に高く、その予防法の開発が望まれている。 目的:本研究では、糖尿病マウスに対するエイコサペンタエン酸(EPA)投与による早期難聴の予防効果を検討した。 方法:糖尿病モデルとしてTSOD(Tsumura, Suzuki, Obese Diabetes)マウスを、コントロールとしてTSNO(Tsumura, Suzuki, Non Obesity)マウスを使用した。TSNO群とTSOD(EPA-)群(ひまわり油投与)、TSOD(EPA+)群(EPA投与)の3 群に分けた。聴性脳幹反応(ABR)を測定し、蝸牛を組織学的に評価した。 結果:TSOD(EPA+)群はTSOD(EPA-)群に比べ、閾値の上昇が小さい傾向を認めた。TSOD(EPA+)群では、生後11 ヶ月から14 ヶ月にかけて、4kHzでのABR 閾値がTSOD(EPA-)群よりも有意に低かった。TSOD(EPA-)群では、血管条の毛細血管内腔の狭小化と蝸牛軸における血管壁の肥厚が観察された。 結論:TSOD マウスに対するEPA 投与による蝸牛血管の動脈硬化の抑制は、加齢に伴う早期難聴を抑制することが示唆された。
Creators : 松浦 貴文 Updated At : 2023-06-05 13:49:14
角膜の剛性を表す生体力学的指標の一つとして角膜ヒステリシス(CH)があり,CHは眼圧(IOP)や中心角膜厚(CCT)などの影響を受け,眼球全体の剛性も反映することから,CH低下が緑内障の進行リスクとして注目される。一方で,硝子体は眼球を外力から保護する緩衝材としての作用があり,眼球の剛性に影響するが,硝子体とCHとの関連は明らかになっていない。本研究では硝子体切除がCHに与える影響を評価することを目的に,白内障単独手術と白内障手術併施硝子体切除術の術後早期のCHを比較した。白内障手術(PEA+IOL)を施行した18例20眼(PEA+IOL群),黄斑上膜あるいは黄斑円孔に対してPEA+IOL併施の経毛様体扁平部硝子体切除術(PPV)を施行した27例28眼(PPV triple群)を対象とした。術前,術後2週,術後3か月のCH,IOP,CCTおよびCHとCCTの相関関係について後ろ向きに検討した。CHは術前,術後2週,術後3か月で,PEA+IOL群において11.1±1.1mmHg,10.4±1.1 mmHg,11.0±1.0 mmHgであり,PPV triple群において11.0±1.4mmHg,9.8±1.4 mmHg,10.6±1.6 mmHgであった。CHはPEA+IOL群で術前後に有意差は認めなかったが,PPV triple群の術後2週で有意に低下していた。IOPおよびCCTは両群とも術前後に有意な変化は認めなかった。PEA+IOL群の全時点とPPV triple群の術前にはCHとCCTの正の相関関係を認めたが,PPV triple群の術後には相関関係を認めなかった。以上より,PPV triple手術ではIOPやCCT以外による要因で術後にCHが低下することが示され,硝子体切除が眼球の剛性変化をもたらしCH低下に寄与した可能性が考えられた。CHの低下は,外力や眼圧の影響を受けやすい眼球構造であると言えることから,PPV 術後のCH評価は眼圧管理の指標や緑内障の発症,進行リスクを反映する可能性がある。
Creators : 太田 真実 Updated At : 2023-06-05 11:29:03
本研究では、特定の遺伝子型と表現型との関連を明らかにするために、EDAR遺伝子の潜性(劣性)変異に着目し、その特徴を詳細に検討した。具体的には、過去にEDARのDD内に同定された潜性(劣性)遺伝形式を示す4 種類のミスセンス変異(p.R358Q、p.G382S、p.I388T、p.T403M)について、培養細胞での過剰発現系で一連の解析を実施した。これらの変異の中で、p.R358QはEDARADDとの結合能を失い、下流のNF-κB活性を低下させることが知られており、機能喪失の陽性対照として用いた。 まず、細胞溶解液を用いたwestern blot法では、p.R358Qおよびp.T403M変異型EDAR蛋白は野生型EDAR蛋白よりも発現量が減衰し、より大きい分子量を示した。一方で、p.G382Sおよびp.I388T変異型EDAR蛋白は野生型EDAR蛋白と同様の発現パターンを示した。また、各EDAR蛋白の細胞内での局在を解析するために実施した蛍光免疫染色法では、野生型EDAR蛋白と同様にp.G382Sおよびp.I388T変異型EDAR蛋白は細胞質内に局在が認められたが、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白は細胞膜に発現していた。これらの結果から、変異型蛋白間で発現パターンが異なることが示された。続いて行ったNF-κBレポーターアッセイでは、すべての変異型EDAR蛋白がNF-κBの活性化を抑制したが、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白に比べ、p.G382Sとp.I388T変異型EDAR蛋白による抑制効果は軽微であった。EDARとEDARADDの結合を検討した共免疫沈降法では、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白はEDARADDとの結合能を完全に喪失していたが、p.G382Sとp.I388T変異型EDAR蛋白は、ある程度結合能を維持した。これらの解析で、p.G382S変異型EDARの機能喪失の程度は最も軽度と考えられた。 過去の研究で、野生型EDARはTRAF6とは直接結合しないことが報告されており、本研究で実施した野生型EDARとTRAF6間の共免疫沈降法でも同様の結果が得られた。しかしながら、驚くべきことに、本研究で解析した全ての変異型EDAR蛋白はTRAF6と直接結合する性質を示した。 培養細胞での過剰発現系においては、機序は不明だがEDAR蛋白を含む種々のTNF受容体が細胞質内に発現する傾向を示すことが知られていたことから、p.R358Qおよびp.T403M変異型EDAR蛋白の細胞膜への局在は異常な発現パターンと考えられる。NF-κBレポーターアッセイおよび共免疫沈降法の結果から、各変異型EDAR蛋白とEDARADDの親和性はNF-κB活性低下の程度と強く相関することが示唆された。今回解析した4 種類のミスセンス変異は、いずれもEDARの機能や構造に重大な影響を与えると複数のデータベースで推測されていたが、各データベースのスコアは4つの変異の間で非常に類似していた。すなわち、現在の予測ツールの解析能力には限界があり、本研究のように実際に発現・機能解析を行う重要性がハイライトされたといえる。 4種類の変異型EDAR蛋白に共通する唯一の現象は、野生型EDAR蛋白がEDARADDを介して間接的にTRAF6と相互作用するのに対し、TRAF6と直接結合することである。これは、変異型EDAR蛋白がEDAR、DARADD、TRAF6からなる正しい蛋白複合体を形成できないことを示唆しており、EDAR遺伝子変異に起因するHEDの鍵となっている可能性があるが、本現象の病的意義を解明するためには今後のさらなる検討を要する。 本研究で得られた結果に基づき、各変異を機能喪失の度合いで評価した。R358QとT403Mを「重度」、p.I388Tを「中等度」、p.G382Sを「軽度」とした。各変異を報告した文献に提示されていた表現型と比較検討した結果、EDAR遺伝子変異の機能喪失の程度がHEDの重症度と相関している可能性が示唆された。
Creators : 八木 献 Updated At : 2023-06-02 15:42:35
自動車事故に際しシートベルトに沿って生じる帯状の皮下出血斑はシートベルト兆候(seat belt sign:SBS)と呼ばれている。特に腹部SBS が上前腸骨棘(anterior superior iliac spine:ASIS)よりも上方に位置する場合、腹部臓器損傷の危険性が高い。本研究の目的は、腹部SBS 位置に関連するシートベルト腹部部分(ラップベルト)の位置に影響を与える因子について解析することである。本研究は、健康な成人100名(男性50名、女性50名)の身体所見と、カーシート座位時のラップベルト位置との関係を前向きに検討したものである。身体所見は、年齢、身長、Body Mass Index(BMI)、腹囲を測定した。それぞれ平均年齢37.9歳、平均身長164.9cm、平均BMI 23.9kg/m2、平均腹囲83.4cmであった。X線学的所見は、腰椎前弯(lumbar lordosis:LL)、仙骨傾斜(sacral slope:SS)を測定し、ラップベルト位置は運転席側のラップベルトの中央とASIS相当の位置に鉛テープでマーキングすることで計測した。側面X線撮影を行い、ASISから中央マーカーまでの水平距離(X値)、垂直距離(Z値)を計測した。ラップベルト角度は、2つのマーカーの上端を結ぶ直線と水平線とのなす角度を計測することで求めた。これらの身体所見とX線学的所見との関係を統計学的に解析した。X値とZ値は体重(X値r = 0.73、Z値r = 0.56)、BMI(X値r = 0.77、Z値r = 0.56)、腹囲(X値r = 0.74、Z値r = 0.52)と正の相関があり、ラップベルト角度は体重(r = -0.33)、BMI(r = -0.35)、腹囲(r = -0.37)と負の相関があった。これらの結果からは、BMIの高い乗員ではラップベルトがASISより高い位置にあるため、シートベルト損傷を引き起こす可能性が高い。この解析は、より安全なシートベルトの開発に役立つと思われる。
Creators : 山縣 大樹 Updated At : 2023-05-30 17:11:43
人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty, 以下THA)においてカップ設置角度、カップ設置位置は脱臼の予防、外転筋レバーアームの再建、腸腰筋インピンジメント予防などの点で重要性はますます高くなっている。これまで後方アプローチでのComputed Tomography(CT)-based navigation使用によるcup 設置の正確性に関する報告は多数あるが、仰臥位前方アプローチ(Direct anterior approach、以下DAA)での報告は少なく、また術中イメージを使用した設置精度との比較をした報告はない。今回DAAでのTHAにおけるCT-based navigationを使用したカップ設置精度を検討した。DAAによるTHAを施行した156例171股における、カップ設置精度について、術中mechanical cup alignment guide使用群(MG群63股)、術中fluoroscopy使用群(FS群58股)、CT-based navigation使用群(CTN群50股)の3群について比較した。検討項目は、Lewinneckのsafe zone内のカップ設置割合(%)、カップ外転角(radiographic inclination、以下RI)、カップ前捻角(radiographic anteversion、以下RA)、カップの骨頭中心位置(上下、前後、内外)に関して、術前計画と術後設置角度、位置を比較し、その絶対値誤差をそれぞれ3群にて検討した。術後2週で全例CT検査を実施し、三次元解析ソフトにて誤差を抽出した。Lewinneckのsafe zone内の設置割合は、MG群80.9%(55/63)、FS群81%(47/58)、CTN 群100%(50/50)で、CTN群はMG群(p=0.005)、FS群(p=0.005)よりも有意に高かった。RIはMG群4.4±3.2°、FS群3.6±3.1°、CTN群2.8±2.5°であり、CTN群はMG群(p=0.01)よりも有意に誤差が小さかった。RAはMG群5.8±4.7°、FS群4.8±4.1°、CTN群2.8±1.9°で、CTN群はMG群(p=0.0001)、FS群(p=0.02)より有意に誤差が小さかった。RI、RAに対して絶対値誤差3°以上をoutlierとし各群間で比較した。RI についてMG群63.5%(40/63)、FS群43.1%(25/58)、CTN群36%(18/50)で、CTN群はMG群(p=0.03)より有意にoutlierが少なかった。RAについて、MG群66.7%(42/63)、FS群58.6%(34/58)、CTN群48%(24/50)でCTN群はMG群(p=0.04)よりも有意にoutlierが少なかった。カップの骨頭中心座標(内外:X軸、前後:Y軸、上下:Z軸)については、X軸、Y軸では3群とも有意差は認めなかった。しかしZ軸ではMG群3.3±3.2mm、FS群3.2±3.0mm、CTN群1.8±1.4mmで、CTN群がMG群(p=0.02)、FS群(p=0.007)に対して有意に誤差が少なかった。絶対値誤差より2mm以上をoutlierとし各群間で比較を行った。X軸、Y軸において有意差は認められなかった。一方Z軸に関してはCTN群がMG群(p=0.03)、FS群(p=0.04)よりも有意にoutlierが少なかった。今回の結果から、DAAでのTHAにおいて、CT-basedNavigation使用することでmechanical cup alignment guide使用や、fluoroscopyを使用するよりもカップ設置精度が向上し、有用であることが確認された。
Creators : 松木 佑太 Updated At : 2023-05-26 17:05:07
背景:The Union for International Cancer Control(UICC)の tumour、node、metastasis(TNM)分類によって大腸がんの治癒あるいは再発の可能性を予測出来るため、治療方針の決定に役立っている。しかしこの分類法単独による予後の予測は不十分である。そのため予後予測因子として新たなバイオマーカーの同定が望まれている。過去に我々は、根治切除を行ったステージI、II、およびIIIの結腸直腸がん(CRC)患者において免疫組織化学によって同定されたCD4およびforkhead box P3(FOXP3)陽性T細胞密度の組み合わせの無再発生存期間(RFS)・全生存期間に対する有用性を報告した。本研究は、統計的パターン認識の手法である離散ベイズ識別則を応用することにより、T3/T4a ステージIIのCRC患者の再発を予測するマーカーの最適な組み合わせを抽出した。 方法:T3/T4aステージII患者の137症例の切除標本を用いて、12の臨床病理学的および免疫的因子を再発の予後予測因子の候補として解析を行った。 結果:比較的に予後良好とされている T3/T4aステージ II 症例で、CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度に最も強い影響があることが示唆された。CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度が低い症例群のRFSが明らかに不良であった。 結論:CD4とFOXP3陽性T細胞を組み合わせた腫瘍浸潤度がCRCの予後予測因子となり得ることが示唆され、従来のステージ分類では不十分な患者の層別化も可能になるという新規の知見が明らかになった。補助化学療法は、CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度が低い患者に対して考慮されるべきであることが示唆された。
Creators : 中上 裕有樹 Updated At : 2023-05-25 16:54:00
背景・目的:大腸癌(CRC)は、世界的に癌関連死亡の第2位の原因となっており、転移を伴う大腸癌(mCRC)患者の予後不良は緊急の課題である。以前、我々はSOMAscanアッセイを用いて、予後を予測する10種類のバイオマーカー候補を得ることができた。本研究の目的は、得られた候補タンパクの一つであるC-C motif chemokine ligand 7(CCL7)について、mCRC患者における治療前の血清CCL7濃度の予後予測性能を明らかにすることであった。 材料と方法:mCRC患者の血清(n=110)および手術標本(n=85)について、それぞれCCL7のタンパク濃度をELISA法および免疫組織化学法で検討した。また、Cox回帰分析、受信者動作特性曲線(ROC)分析、Kaplan-Meier法を用いて、タンパクの濃度と予後との関係を検討した。結果:血清CCL7濃度が高い患者の全生存期間(OS)は、低い患者と比較し、有意に不良であった。間質中のCCL7発現レベルが高い患者は、低い患者に比べ、有意に予後不良であった。 Carcino embryonic antigen(CEA)および糖鎖抗原19-9(CA19-9)の濃度は、CCL7低値群に比べ、高CCL7群で有意に高値であった。単変量解析および多変量解析により、血清CCL7濃度はmCRCの有意な予後因子であることが明らかになった。また、血清CCL濃度とCEA濃度の組み合わせにおいて、血清CCL7濃度、CEAの両方が高値である患者は、両方が低値である群と比較し、有意に予後不良であった。 結論:治療前の血清CCL7濃度および血清CCL7濃度とCEAとの組み合わせは、mCRCの予後を予測する有用なバイオマーカーである。
Creators : 千々松 日香里 Updated At : 2023-05-25 15:25:42
背景:肝癌は肝内転移を生じやすく、その予後は不良である。がん幹細胞様細胞(CSLCs)とは、幹細胞性、腫瘍形成能、治療抵抗性に加え、転移能亢進といった特徴を有している。近年では、がんの転移形成や制御において、宿主の免疫機構が重要な働きを担っていると考えられており、今回、肝癌細胞株から誘導したCSLCsの免疫逃避能について検討を行った。 方法:Sphere誘導培地を用いて、Sphere細胞の形態で肝癌細胞株からCSLCsを誘導した。免疫逃避に関わる遺伝子およびタンパク発現を、RNAシーケンス、フローサイトメトリー、ELISA法を用いて解析し、親株とSphere細胞とで比較した。親株とSphere細胞それぞれの、NK細胞に対する感受性について、クロム放出試験を用いて比較検討した。BALB/cヌードマウスを用いた異種移植実験にて、親株とSphereの腫瘍形成能を比較した。 結果:肝癌細胞株SK-HEP-1から誘導したSphere細胞(SK-sphere)では、親株と比較し、細胞膜上のPD-L1、PD-L2、CEACAM1の発現が亢進し、ULBP1、MICA/MICBの発現は低下していた。また、SK-sphereの培地中では、可溶型MICAの濃度が上昇していた。SK-sphereにおけるHLA class I発現低下は見られなかった。肝癌細胞株SK-HEP-1およびHLEから誘導したSphere細胞を用いて、NK細胞に対する感受性をそれぞれの親株と比較したところ、どちらのSphere細胞においてもNK細胞による細胞障害性がより低下していた。NK細胞を保持するヌードマウスにおいて、親株の移植と比較してSK-sphereを移植した際により大きな腫瘍を形成した。 結論:肝癌細胞株から誘導したCSLCsはNK細胞を介した免疫系からの逃避能が亢進している事が示唆された。
Creators : 木村 祐太 Updated At : 2023-05-25 15:05:45
背景:UGT1A1*28および*6遺伝子多型は、イリノテカンに関連する毒性の危険因子として知られている。しかし、UGT1A1*28および*6に遺伝子変異を持たない患者においても、イリノテカンによる重篤な副作用が認められている。我々は、UGT1A以外のイリノテカン毒性の有用なバイオマーカーを同定するために、全エクソームにおける遺伝子多型を調査した。 方法:FOLFIRI療法、FOLFOX療法、FOLFOXIRI療法を投与された転移性大腸癌(mCRC)患者178例とmodified FOLFIRINOX療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法を投与された膵臓癌患者87例を対象とした。ゲノムワイドスクリーニングは全エクソームシーケンス(WES)を用いて行い、バリデーション解析は加水分解プローブを用いたqPCRを用いて実施した。 結果:FOLFIRI療法症例のWES(n = 15)により、7つの一塩基多型(SNP)がイリノテカン関連毒性である好中球減少のバイオマーカー候補として同定された。7つのSNPのうち、R3H domain and coiled-coil containing 1(R3HCC1; c.919G>A, rs2272761)のSNPは、検証サンプル症例のグレード3以上の好中球減少と有意な関連性を示した。mCRC患者に対するFOLFOXIRI療法(n = 23)または膵臓癌に対するmodified FOLFIRINOX療法(n = 40)といったイリノテカン含有の3剤併用化学療法患者でも、R3HCC1多型と好中球減少との間に有意な線形傾向がみられた(それぞれP = 0.017 および0.046 )。一方で、イリノテカンを含まないレジメン(mCRC患者に対するFOLFOX療法(n = 66)、膵臓癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法(n = 47))患者では、有意な関連は認められなかった。 結論:R3HCC1多型は、mCRCと膵臓癌に対するイリノテカンを含む化学療法の毒性に関する有用なバイオマーカーとなる可能性がある。
Creators : 兼定 航 Updated At : 2023-05-25 14:55:01
細胞シート移植治療の普及には利便性の高い細胞シートの保存方法の開発が不可欠である。細胞シートから分泌される成長因子によって創傷治癒は促進されると考えられてきたため、その保存には細胞生存率が重要視されてきた。そのため、積層線維芽細胞シートの乾燥保存に関する検討はこれまでにない。本研究では、乾燥保存した積層線維芽細胞シート(Dryシート)を開発し、糖尿病マウス全層皮膚欠損モデルでの創傷治癒促進効果を検証した。 マウスの尾から単離した線維芽細胞を用いて、積層線維芽細胞シート(Livingシート)を作製した。Livingシートを風乾させ、Dryシートとした。Livingシートに凍結解凍操作を繰り返してFreeze-thaw(FT)シートとした。各シートを培地に浸漬して溶出液とし、各溶出液中の成長因子を測定した。Vascular endothelial growth factor(VEGF)とhepatocyte growth factor(HGF)はDryシートとLivingシートで検出したのに対し、fibroblast growth factor-2(FGF-2)とhigh mobility group box 1(HMGB1)はDryシートのみで検出した。FTシートではこれらの成長因子をほとんど検出しなかった。細胞シートの溶出液を添加して線維芽細胞を培養し、溶出液の生理活性を線維芽細胞増殖試験で検討した。DryシートはLivingシートと比べ、細胞増殖と成長因子産生量を有意に促進し、FGF-2中和抗体で阻害すると、この細胞増殖反応は抑制された。糖尿病マウス全層皮膚欠損モデル(C57BL/6N)において、自家及び他家(C3H/He)の線維芽細胞から作製したDryシート貼付群は無治療群に比べ、創の閉鎖を有意に促進した。Dryシートは常温(23℃)よりも冷蔵(4℃)での保存安定性に優れ、少なくとも4週間の冷蔵保存ではDryシートのFGF-2の減少を認めなかった。 以上から、DryシートはFGF-2の放出という新たな作用機序で創傷治癒を促進することが明らかになった。他家細胞から作製されたDryシートは、創傷治癒を促す再生医療において新たな扱いやすい被覆材であることが示唆された。
Creators : 松野 祐太朗 Updated At : 2023-05-24 16:26:24
本研究の目的は、皮膚潰瘍モデルマウスにおいて、凍結保存した他家線維芽細胞シートの治療効果を検討することである。他家細胞シートの凍結保存が可能であれば、様々な疾患への応用が可能であり、大幅なコストダウンによる再生医療の普及に貢献できると考えられる。本研究では、3Dフリーザーを用いて線維芽細胞シートの凍結を行った。凍結融解した線維芽細胞シートは、非凍結線維芽細胞シートと比較して、細胞生存率は約80であり、vascularendothelial growth factor VEGF )、hepatocyte growth factor HGF)、stromalderived factor 1α SDF1αの培養上清中の濃度が50%以上で、transforminggrowth factor β1 TGFβ1の分泌能は同等であった。皮膚潰瘍モデルマウスにおいて、非凍結線維芽細胞シート群と凍結融解した線維芽細胞シート群の間で、自家細胞、他家細胞のどちらも創傷治癒率に差はなかった。また、血管新生の程度も同等であった。治癒組織におけるCD3陽性細胞数は、自家線維芽細胞シート群と比較して他家線維芽細胞シート群で多く見られた。しかし、病理組織学的には、凍結融解した他家線維芽細胞シート群の線維化、新生血管密度、創傷治癒速度は、非凍結他家線維芽細胞シート群に比べて凍結融解した自家線維芽細胞シート群に類似していた。これらの結果から、凍結融解した他家線維芽細胞シートが難治性皮膚潰瘍に対する有望な治療オプションとなる可能性が示唆された。
Creators : 池 創一 Updated At : 2023-05-24 14:52:02
ミエリン関連糖蛋白 (myelin-associated glycoprotein: MAG) は,神経組織の髄鞘に局在する膜貫通糖蛋白であり,MAGに対するIgM型自己抗体 (MAG抗体) を有する患者では脱髄性末梢神経障害をきたす.末梢神経には血液神経関門 (blood-nerve barrier: BNB) があるために,通常は免疫グロブリンなどの大きな分子が神経内に侵入することはできない.しかし,MAGニューロパチー患者から採取した腓腹神経内有髄神経線維の髄鞘にはMAG抗体が沈着しており,MAG抗体はBNBを通過していることが想定される.MAG抗体のBNB通過機序を明らかにすることを目的に,MAGニューロパチー患者血清,ヒトBNB構成内皮細胞株と周皮細胞株,MAGニューロパチー患者から採取した腓腹神経検体を用いて解析を行った.MAGニューロパチー患者血清を作用させた内皮細胞に対して,全RNAトランスクリプトーム解析と免疫染色を用いたハイコンテントイメージング解析を行い,NF-κBの活性化とTNF-αの発現増加を確認した.次に内皮細胞と周皮細胞を共培養したBNB in vitroモデルで透過性を解析した. MAGニューロパチー患者血清を作用させた結果,10 kDaデキストランやIgGの透過性を変化させることなく,IgMやMAG抗体の透過性を亢進させ,TNF-αの中和抗体を添加することでIgMやMAG抗体の透過性は抑制された.電子顕微鏡による観察ではMAGニューロパチー患者の腓腹神経内でBNBを構成する微小血管の密着結合は保たれており,内皮細胞内に多数の小胞が確認された.MAGニューロパチー患者では,MAG抗体はBNB構成内皮細胞の自己分泌TNF-αの増加を介して内皮細胞質内をトランスサイトーシスの機序により通過していることが示唆された.TNF-α阻害薬は既存の薬剤であり,本研究結果から,TNF-α阻害薬によるMAGニューロパチー患者への新たな治療戦略が期待される.
Creators : 佐藤 亮太 Updated At : 2023-05-24 14:10:24
小胞体ストレスの増加は、動脈硬化において血管平滑筋培養細胞(VSMCs)の形質転換(分化→脱分化)と強く関連している。小胞体のCa2+貯蔵量減少は、VSMCs における小胞体ストレスの増加の主要な原因の一つである。リアノジン受容体(RyR)は筋小胞体膜上に存在する主要なCa2+放出チャネルである。正常細胞の安静状態ではカルモジュリン(CaM)はRyR と結合し、RyR を閉鎖した状態で安定化させている。CaM とRyR の結合が減弱すると、RyR から異常なCa2+漏出が起こり、Ca2+貯蔵量が減少し、小胞体ストレスが増加する原因となり得る。そこで我々は、マウスのVSMCs を用いてRyR に結合しているCa(CaM-RyR)が小胞体ストレスにより引き起こされるVSMCs の形質転換に重要な役割を果たしているか否か、また、CaM-RyR の結合親和性を高める作用を有するダントロレン(DAN)がVSMCs の形質転換に影響を与えるか否かを評価した。 小胞体ストレスによりCaM がRyR から解離し、核内へ移行することにより、MEF2 とKLF5 の核内での発現量が増加し、このMEF2-KLF5 のシグナル伝達経路が活性化することでVSMCs が形質転換(分化→脱分化)し、増殖能や遊走能を有するようになり動脈硬化巣の形成や不安定化につながるという新たな知見を得ることができた。さらにCaM-RyR の結合親和性を高めるDAN は、RyR チャネルを安定化させ、異常なCa2+漏出を抑制し、小胞体内のCa2+貯蔵量を保持することで小胞体ストレスの増加を抑制し、さらにCaM の核内への移行を制御することで、MEF2-KLF5 経路の活性化を抑制し、その結果としてVSMCs の形質転換を抑制することが示され、動脈硬化巣の進展化、不安定化に対する全く新しい治療戦略となり得る可能性があることが示唆された。
Creators : 内田 智之 Updated At : 2023-05-24 14:03:54
Pandemic influenza virus A(H1N1)pdm09 infection occurred in healthy children and young adults, but asthmatic patients presented more rapid progression of respiratory distress and plastic bronchitis. To investigate the pathogenesis of worsening respiratory symptoms after A(H1N1)pdm09 infection, we focused on matrix metalloproteinase‐9 (MMP‐9) and tissue inhibitor of metalloproteinases‐1 (TIMP‐1). MMP‐9 and TIMP‐1 levels in bronchoalveolar lavage fluid and serum from mice with and without asthma were evaluated after A(H1N1)pdm09 or seasonal A(H1N1) infection. MMP‐9 levels were more elevated in Asthma/A(H1N1)pdm09‐infected mice than in non‐Asthma/A(H1N1)pdm09‐infected mice on both 3 and 7 days post‐infection. Immunohistochemical findings in this pneumonia model showed that MMP‐9 and TIMP‐1 positive cells were observed in blood vessels and bronchus of lung tissue in severe pathological findings of pneumonia with asthma. Microscopically, shedding cells and secretions were conspicuous in the trachea on days 3 and 7 postinfection, in the A(H1N1)pdm09‐infected mice with asthma. Our results suggest that MMP‐9 and TIMP‐1 expressions are related to severe pneumonia in the A(H1N1)pdm09 infection with asthma, leading to cause epithelial cell shedding.
Creators : 木村 献 Updated At : 2023-05-24 13:39:59
Medical Science & Innovation Volume 70 Issue 1-2 pp. 7 - 17
published_at 2023-06
To investigate whether dantrolene (DAN), cardiac ryanodine receptor (RyR2) stabilizer, improves impaired diastolic function in an early pressure-overloaded hypertrophied heart, pressure-overload hypertrophy was induced by transverse aortic constriction (TAC) in mice. Wild-type (WT) mice were divided into four groups: sham-operated mice (Sham), sham-operated mice treated with DAN (DAN+Sham), TAC mice (TAC), and TAC mice treated with DAN (DAN+TAC). The mice were then followed up for 2 weeks. Left ventricular (LV) hypertrophy was induced in TAC, but not DAN+TAC mice, 2 weeks after TAC. There were no differences in LV fractional shortening among the four groups. Catheter tip micromanometer showed that the time constant of LV pressure decay, an index of diastolic function, was significantly prolonged in TAC but not in DAN+TAC mice. Diastolic function was significantly impaired in TAC, but not in DAN+TAC mice as determined by cell shortening and Ca^{2+} transients. An increase in diastolic Ca^{2+} leakage and a decrease in calmodulin (CaM) binding affinity to RyR2 were observed in TAC mice, while diastolic Ca^{2+} leakage improved in DAN+TAC mice. Thus, DAN prevented the progression of hypertrophy and improved the impairment of LV relaxation by inhibiting diastolic Ca^{2+} leakage through RyR2 and the dissociation of CaM from RyR2.
Creators : Chang Yaowei | Kobayashi Shigeki | Yano Yasutake | Uchida Tomoyuki | Nawata Junya | Fujii Shohei | Nakamura Yoshihide | Suetomi Takeshi | Uchinoumi Hitoshi | Oda Tetsuro | Yamamoto Takeshi | Yano Masafumi Publishers : Yamaguchi University School of Medicine Updated At : 2023-05-19 14:46:45
Medical Science & Innovation Volume 70 Issue 1-2 pp. 1 - 6
published_at 2023-06
Catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia (CPVT) is caused by a single point mutation in the cardiac type 2 ryanodine receptor (RyR2). Using knock-in mouse (KI) model (R2474S/+), we previously reported that a single point mutation within the RyR2 sensitized the channel to agonists, primarily mediated by defective inter-domain interaction within the RyR2 and subsequent dissociation of calmodulin (CaM) from the RyR2. Here, we examined whether CPVT can be genetically rescued by enhancing the binding affinity of CaM to the RyR2. We first determined whether there was a possible amino-acid substitution within the CaM-binding domain in the RyR2 (3584-3603) that can enhance its binding affinity to CaM, and found that V3599K substitution showed the highest binding affinity of CaM to CaM-binding domain. Hence, we generated a heterozygous KI mouse model (V3599K/+) with a single amino acid substitution in the CaM-binding domain of the RyR2, and crossbred it with the heterozygous CPVT –associated R2474S/+ KI mouse to obtain a double heterozygous R2474S/V3599K KI mouse model. The CPVT phenotypes, bidirectional or polymorphic ventricular tachycardia, were inhibited in the R2474S/V3599K mice. Thus, enhancement of the CaM binding affinity of the RyR2 is essential to prevent CPVT-associated arrhythmogenesis.
Creators : Nakamura Yoshihide | Yamamoto Takeshi | Kobayashi Shigeki | Yano Masafumi Publishers : Yamaguchi University School of Medicine Updated At : 2023-05-19 14:21:41
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 153 - 168
published_at 2023-03-01
1907年のイギリスのスタインをはじめ、列強各国の探検隊が次々と敦煌を訪れた。敦煌文物の発見・流出に伴い、「敦煌学」「西域熱」が誕生し、学界の関心を集めてきた。仏教出身の武田泰淳も長い間にわたってスタインの著作(Ruins of Desert Cathay、Serindiaなど)を含む敦煌資料を耽読し、その分野に進出してみた。本論は武田と敦煌との関係を切口として、日本近代文学館に所蔵されている「武田泰淳コレクション」の中の未発表資料を参考にして、武田文学における唯一の敦煌題材小説「流沙」の典拠資料を整理し武田の英語力を確認した上で、典拠と小説との比較を行い、「節ごと」、「人物ごと」、「全体」という三つの方面から武田泰淳の言う「換骨奪胎」の方法(典拠の利用法)を分析した。
Creators : Sun Sen Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-15 11:54:01
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 169 - 179
published_at 2023-03-01
Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-15 11:06:03
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 125 - 151
published_at 2023-03-01
人口減少社会の到来により,特に地方において,適正規模での学校運営が難しい過小規模や極小規模の学校が増加傾向にある.このような小規模校では,きめ細やかな指導等が行える一方で,人間関係が固定化しがちであったり,多様な意見や考え方に触れることが少なくなったり等,教育上の課題を抱えている.その解決策の1つとして,複数校の児童生徒が1つの学校に集まって合同授業が実施されているが,時間的・金銭的な問題などから実施回数が制限されるケースが多い.この合同授業を補う形で,日進月歩の勢いで進歩しているICT技術を活用した遠隔合同授業の取組みが期待され,教育実践が進められてきている.そこで本研究では,小規模校・少人数学級における遠隔合同授業を対象にして,学習者の学習活動と教員の教授活動を支援するための遠隔合同授業支援環境を研究開発する.具体的には,学校のネットワークの問題や,対面遠隔の学習者を見とりながら遠隔合同授業を進める教員の負荷を踏まえて,ビデオコミュニケーション機能や遠隔合同授業をシームレスに支援する授業支援機能を有した「つながる授業アプリ」をアジャイル型開発手法によって実装した.さらに,「つながる授業アプリ」の操作・機能評価を行って修正事項を整理して,改善を行った事項について報告する.
Creators : Yokoyama Makoto | Takaoka Ryo | Nakahara Akihiro | Yoshinaga Ryota Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-12 17:02:18
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 109 - 123
published_at 2023-03-01
本研究では、日中一時支援事業所において、クライアントの支援等について悩みを抱え、離職の意向をも示していたコンサルティに対して行動コンサルテーションを実施した。研究開始前のコンサルティは、自身の業務や支援に関して否定的な発言が多く見受けられ、支援に対する自信を失っている状態であった。特に帰宅準備行動に滞りの見られたクライアントへの支援に頭を悩ませていた。また、離職意向も示していたことから、支援遂行自体に嫌悪感を伴っているとも考えられ、少しでも不安や負担感を感じてしまった場合は、支援実施自体を忌避してしまう可能性があった。そこでコンサルタントは、面接回数を最小限としたり、クライアントの行動記録を敢えて実施しない等、コンサルティが負担感を抱かないよう配慮を行った。加えて、「傾聴」と「共感」、そして「肯定」を念頭に置いた言動を徹底して心掛けつつ、コンサルティとの面接を行い、①スケジュール表を作成し、実施した項目に「○」をする、②帰宅準備行動が出来たらほめる、以上の2点の支援を提案した。また、コンサルティとの小面接を4回実施し、コンサルティの支援実施に対して肯定的なフィードバックを積極的に行った。さらにコンサルティの上司に対しては、小報告会において、コンサルティの支援実施に対して肯定的なフィードバックをするよう依頼した。その結果、コンサルティはクライアントへの支援を実施、継続することができ、これに伴ってクライアントのスムーズな帰宅準備行動が生起するようになった。またコンサルティから自身の業務や支援に対して非常に肯定的な発言が連発するようになった。さらに、離職の意向を取り消すまでに至る等、行動コンサルテーションがクライアントの行動上の課題解決のみならず、コンサルティのバーンアウト傾向の軽減、離職防止にも効果がある可能性が示された。
Creators : Ueda Takahiro Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-12 16:01:10
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 75 - 108
published_at 2023-03-01
Structural transformation matters for economic growth and economic development of one country. Industrialization plays a crucial role as its engine. However, it is fact that some countries succeeded in it while others did not. When we compare the ratio of manufacturing value-added to GDP( MVA/GDP) between the successful and failed or stagnant countries, variations of those trajectories are observed. Even among the latter countries, their patters are not uniform. This paper is very keen to the pattern of failures and stagnation of industrialization such as India, Ghana, and Egypt, in which the ratio of MVA/GDP went down, followed by economic, social and political crisis and long stagnation was resulted from in the subsequent periods. It is hypothesized that that pattern has a close relationship with ambitious industrialization vision embarked on by the state leaders and policy makers in a manner which did not meet the reality of the manufacturing sector. Against that hypothesis, to what extent can the existing literatures give us persuasive interpretation? To examine it, this paper will review those one arguing the causes and mechanism of failed and stagnant industrialization and finally reach an argument of the industrialization vision as a possible candidate.
Creators : Amatsu Kuniaki Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-12 15:07:36
Journal of East Asian studies Volume 21 pp. 51 - 74
published_at 2023-03-01
日本語のスピーチレベルシフトについての研究は盛んに行われてきたといえるが、それらに用いられたデータは友人か初対面かのような親・疎関係の会話や教室における教師と学生の会話、あるいは、前もってセリフが書かれた脚本のものなど、特定の条件を設定した会話からのものが多い。また、接触場面の場合には、取り上げられた対象は留学生に止まり、技能実習生に関するものは管見の及ぶ限り見当たらない。そこで、本稿は技能実習生を対象とし、実習実施機関で生じた自然会話に注目した。具体的には、指示が多く、かつ危険性を伴う鉄骨工場をフィールドとし、技能実習生に向けられた日本人同僚の発話に注目した。 その結果、1)朝礼、会議、送別会は丁寧体を基調としているのに対し、作業現場の発話場面は普通体を基調としている。2)先行研究ではまだ言及されていないが、本研究では、丁寧体基調場面におけるダウンシフトとして、「強い口ぶりで、念を押す時」、「職業規則を明示する時」、普通体基調場面におけるアップシフトとして、「実例を挙げる時」、「相手に同意・共感を示す時」、「1つの作業が終了時の合図」、「説明を諦める時」にもスピーチレベルシフトが観察された。3)機能は、構造標識、談話標識、待遇標識と心的距離の伸縮の4つに分類できる。さらに、4)スピーチレベルシフトには一回性のものと連続性のものがあり、場面によって現れ方が異なっていることが判明した。
Creators : Zhang Xuepan Publishers : The graduate school of east asian studies, Yamaguchi university Updated At : 2023-05-12 14:27:06