コンテンツメニュー
Id (<span class="translation_missing" title="translation missing: en.view.asc">Asc</span>)
Creators : 石口 絵梨 Dissertation Number : 医博甲第1657号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 萩原 康輔 Dissertation Number : 医博甲第1658号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : Lei Huijie Dissertation Number : 医博甲第1659号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
転写因子CCAAT/enhancer-bringing protein beta(C/EBPβ)は、IGF-binding protein-1(IGFBP-1)やprolactin(ERL)遺伝子のプロモーターおよびエンハンサー領域において、転写活性マーカーであるHistone-H3 lysine-27 アセチル化(H3K27ac)を誘導するパイオニア因子であり、ヒト子宮内膜間質細胞(ESC)の脱落膜化に貢献することを我々はこれまでに報告している。パイオニア因子の一部はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を有するコファクターと複合体を形成することで機能する。我々は、C/EBPβと共役するHATタンパクとしてp300を同定しているが、それ以外のコファクターについては不明である。Peroxisome proliferator-activated receptor gamma comma coactivator 1-α(PGC-1α)はH3K27acを制御することが知られている転写共役因子である。PGC-1αはESCでも発現しているが、脱落膜化におけるPGC-1αの機能は不明である。そこで、PGC-1αがC/EBPβの転写共役因子として働き、脱落膜化過程においてH3K27ac誘導に関与しているのではないかと考え検討した。脱落膜化を誘導するためにESCをcAMP存在上で培養した。cAMPによるIGFBP-1およびPRLの発現上昇はPGC-1αのノックダウンにより抑制された。また、cAMPはIGFBP-1およびPRLのプロモーターとエンハンサー領域に存在するC/EBPβ結合部位へのPGC-1αとp300のリクルートを増加させた。さらに、PGC-1αをノックダウンするとC/EBPβとp300に結合、およびH3K27acレベルが低下したことから、PGC-1αはこれらの領域でC/EBPβおよびp300とヒストン修飾複合体を形成することでH3K27ac誘導に関与していることが示された。さらにPGC-1αの発現制御機構を調べるために、C/EBPβを上流因子として着目した。PGC-1αのエンハンサー領域へのC/EBPβの結合はcAMPで増加した。また、これらのエンハンサーをゲノム編集により欠失させた細胞ではPGC-1αの発現が減少したことから、C/EBPβは我々が見出したエンハンサー領域に結合することでPGC-1αの発現を上昇させると考えられた。以上より、PGC-1αはC/EBPβの新規エンハンサーへの結合によって発現誘導されること、また、C/EBPβとp300と共にヒストン修飾複合体を形成して、IGFBP-1およびPRLのプロモーターとエンハンサーにエピゲノム変化を引き起こすことで脱落膜化に貢献していることがわかった。
Creators : 高木 遥香 Dissertation Number : 医博甲第1660号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:がん幹細胞 (CSC) は、発がん、再発、転移、治療抵抗性に重要な役割を果たすと考えられている。我々は、化学療法抵抗性と転移能を有するがん幹細胞様スフィア細胞 (CSLC) の誘導に成功した。CSLC に対する標的治療の開発を可能にするため、CSLC のこの表現型の原因となる遺伝子を同定した。 方法:ヒト肝がん細胞株SK-HEP-1 を用い、独自のスフィア誘導培地を用いてCSLCを誘導し、HuH-7 細胞を非スフィア形成細胞として同条件で使用した。RNA シーケンシングを行った後、定量的 RT-PCR とウェスタンブロッティングで検証した。ノックダウン (KD) 実験はCRISPR-Cas9 によるゲノム編集により行い、レスキュー実験は発現プラスミドベクターを用いて行った。細胞の化学療法抵抗性と肝転移は、MTS アッセイと細胞の重度免疫不全マウスへの脾臓注入後の解析で評価した。培地中のエクソソームの定量は、EL ISA 法を用いて行った。 結果: RAB3B は、RNA シーケンシングによりCSLC と予後不良の肝細胞がん (HCC)の両方で発現が増加している遺伝子として同定された。RAB3B-KD 細胞は、スフィア形成、化学療法抵抗性、転移能などのCSLC 表現型の変化を示し、これらはRAB3Bの相補化によって回復された。CSLC ではエクソソーム分泌の増加が観察されたが、RAB3B-KD 細胞では観察されなかった。また、RAB3B の発現は、ABCG2、APOE、LEPR、LXN、TSPAN13 の発現と相関していた。 結論:RAB3B のアップレギュレーションは、CSLC の化学療法抵抗性と転移能に重要な役割を担っている可能性がある。
Creators : 恒富 亮一 Dissertation Number : 医博乙第1105号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-02-08 Degree Grantors : Yamaguchi University
Pandemic influenza virus A(H1N1)pdm09 infection occurred in healthy children and young adults, but asthmatic patients presented more rapid progression of respiratory distress and plastic bronchitis. To investigate the pathogenesis of worsening respiratory symptoms after A(H1N1)pdm09 infection, we focused on matrix metalloproteinase‐9 (MMP‐9) and tissue inhibitor of metalloproteinases‐1 (TIMP‐1). MMP‐9 and TIMP‐1 levels in bronchoalveolar lavage fluid and serum from mice with and without asthma were evaluated after A(H1N1)pdm09 or seasonal A(H1N1) infection. MMP‐9 levels were more elevated in Asthma/A(H1N1)pdm09‐infected mice than in non‐Asthma/A(H1N1)pdm09‐infected mice on both 3 and 7 days post‐infection. Immunohistochemical findings in this pneumonia model showed that MMP‐9 and TIMP‐1 positive cells were observed in blood vessels and bronchus of lung tissue in severe pathological findings of pneumonia with asthma. Microscopically, shedding cells and secretions were conspicuous in the trachea on days 3 and 7 postinfection, in the A(H1N1)pdm09‐infected mice with asthma. Our results suggest that MMP‐9 and TIMP‐1 expressions are related to severe pneumonia in the A(H1N1)pdm09 infection with asthma, leading to cause epithelial cell shedding.
Creators : 木村 献 Dissertation Number : 医博乙第1106号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-08 Degree Grantors : Yamaguchi University
小胞体ストレスの増加は、動脈硬化において血管平滑筋培養細胞(VSMCs)の形質転換(分化→脱分化)と強く関連している。小胞体のCa2+貯蔵量減少は、VSMCs における小胞体ストレスの増加の主要な原因の一つである。リアノジン受容体(RyR)は筋小胞体膜上に存在する主要なCa2+放出チャネルである。正常細胞の安静状態ではカルモジュリン(CaM)はRyR と結合し、RyR を閉鎖した状態で安定化させている。CaM とRyR の結合が減弱すると、RyR から異常なCa2+漏出が起こり、Ca2+貯蔵量が減少し、小胞体ストレスが増加する原因となり得る。そこで我々は、マウスのVSMCs を用いてRyR に結合しているCa(CaM-RyR)が小胞体ストレスにより引き起こされるVSMCs の形質転換に重要な役割を果たしているか否か、また、CaM-RyR の結合親和性を高める作用を有するダントロレン(DAN)がVSMCs の形質転換に影響を与えるか否かを評価した。 小胞体ストレスによりCaM がRyR から解離し、核内へ移行することにより、MEF2 とKLF5 の核内での発現量が増加し、このMEF2-KLF5 のシグナル伝達経路が活性化することでVSMCs が形質転換(分化→脱分化)し、増殖能や遊走能を有するようになり動脈硬化巣の形成や不安定化につながるという新たな知見を得ることができた。さらにCaM-RyR の結合親和性を高めるDAN は、RyR チャネルを安定化させ、異常なCa2+漏出を抑制し、小胞体内のCa2+貯蔵量を保持することで小胞体ストレスの増加を抑制し、さらにCaM の核内への移行を制御することで、MEF2-KLF5 経路の活性化を抑制し、その結果としてVSMCs の形質転換を抑制することが示され、動脈硬化巣の進展化、不安定化に対する全く新しい治療戦略となり得る可能性があることが示唆された。
Creators : 内田 智之 Dissertation Number : 医博甲第1661号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
ミエリン関連糖蛋白 (myelin-associated glycoprotein: MAG) は,神経組織の髄鞘に局在する膜貫通糖蛋白であり,MAGに対するIgM型自己抗体 (MAG抗体) を有する患者では脱髄性末梢神経障害をきたす.末梢神経には血液神経関門 (blood-nerve barrier: BNB) があるために,通常は免疫グロブリンなどの大きな分子が神経内に侵入することはできない.しかし,MAGニューロパチー患者から採取した腓腹神経内有髄神経線維の髄鞘にはMAG抗体が沈着しており,MAG抗体はBNBを通過していることが想定される.MAG抗体のBNB通過機序を明らかにすることを目的に,MAGニューロパチー患者血清,ヒトBNB構成内皮細胞株と周皮細胞株,MAGニューロパチー患者から採取した腓腹神経検体を用いて解析を行った.MAGニューロパチー患者血清を作用させた内皮細胞に対して,全RNAトランスクリプトーム解析と免疫染色を用いたハイコンテントイメージング解析を行い,NF-κBの活性化とTNF-αの発現増加を確認した.次に内皮細胞と周皮細胞を共培養したBNB in vitroモデルで透過性を解析した. MAGニューロパチー患者血清を作用させた結果,10 kDaデキストランやIgGの透過性を変化させることなく,IgMやMAG抗体の透過性を亢進させ,TNF-αの中和抗体を添加することでIgMやMAG抗体の透過性は抑制された.電子顕微鏡による観察ではMAGニューロパチー患者の腓腹神経内でBNBを構成する微小血管の密着結合は保たれており,内皮細胞内に多数の小胞が確認された.MAGニューロパチー患者では,MAG抗体はBNB構成内皮細胞の自己分泌TNF-αの増加を介して内皮細胞質内をトランスサイトーシスの機序により通過していることが示唆された.TNF-α阻害薬は既存の薬剤であり,本研究結果から,TNF-α阻害薬によるMAGニューロパチー患者への新たな治療戦略が期待される.
Creators : 佐藤 亮太 Dissertation Number : 医博甲第1662号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
本研究の目的は、皮膚潰瘍モデルマウスにおいて、凍結保存した他家線維芽細胞シートの治療効果を検討することである。他家細胞シートの凍結保存が可能であれば、様々な疾患への応用が可能であり、大幅なコストダウンによる再生医療の普及に貢献できると考えられる。本研究では、3Dフリーザーを用いて線維芽細胞シートの凍結を行った。凍結融解した線維芽細胞シートは、非凍結線維芽細胞シートと比較して、細胞生存率は約80であり、vascularendothelial growth factor VEGF )、hepatocyte growth factor HGF)、stromalderived factor 1α SDF1αの培養上清中の濃度が50%以上で、transforminggrowth factor β1 TGFβ1の分泌能は同等であった。皮膚潰瘍モデルマウスにおいて、非凍結線維芽細胞シート群と凍結融解した線維芽細胞シート群の間で、自家細胞、他家細胞のどちらも創傷治癒率に差はなかった。また、血管新生の程度も同等であった。治癒組織におけるCD3陽性細胞数は、自家線維芽細胞シート群と比較して他家線維芽細胞シート群で多く見られた。しかし、病理組織学的には、凍結融解した他家線維芽細胞シート群の線維化、新生血管密度、創傷治癒速度は、非凍結他家線維芽細胞シート群に比べて凍結融解した自家線維芽細胞シート群に類似していた。これらの結果から、凍結融解した他家線維芽細胞シートが難治性皮膚潰瘍に対する有望な治療オプションとなる可能性が示唆された。
Creators : 池 創一 Dissertation Number : 医博甲第1663号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
細胞シート移植治療の普及には利便性の高い細胞シートの保存方法の開発が不可欠である。細胞シートから分泌される成長因子によって創傷治癒は促進されると考えられてきたため、その保存には細胞生存率が重要視されてきた。そのため、積層線維芽細胞シートの乾燥保存に関する検討はこれまでにない。本研究では、乾燥保存した積層線維芽細胞シート(Dryシート)を開発し、糖尿病マウス全層皮膚欠損モデルでの創傷治癒促進効果を検証した。 マウスの尾から単離した線維芽細胞を用いて、積層線維芽細胞シート(Livingシート)を作製した。Livingシートを風乾させ、Dryシートとした。Livingシートに凍結解凍操作を繰り返してFreeze-thaw(FT)シートとした。各シートを培地に浸漬して溶出液とし、各溶出液中の成長因子を測定した。Vascular endothelial growth factor(VEGF)とhepatocyte growth factor(HGF)はDryシートとLivingシートで検出したのに対し、fibroblast growth factor-2(FGF-2)とhigh mobility group box 1(HMGB1)はDryシートのみで検出した。FTシートではこれらの成長因子をほとんど検出しなかった。細胞シートの溶出液を添加して線維芽細胞を培養し、溶出液の生理活性を線維芽細胞増殖試験で検討した。DryシートはLivingシートと比べ、細胞増殖と成長因子産生量を有意に促進し、FGF-2中和抗体で阻害すると、この細胞増殖反応は抑制された。糖尿病マウス全層皮膚欠損モデル(C57BL/6N)において、自家及び他家(C3H/He)の線維芽細胞から作製したDryシート貼付群は無治療群に比べ、創の閉鎖を有意に促進した。Dryシートは常温(23℃)よりも冷蔵(4℃)での保存安定性に優れ、少なくとも4週間の冷蔵保存ではDryシートのFGF-2の減少を認めなかった。 以上から、DryシートはFGF-2の放出という新たな作用機序で創傷治癒を促進することが明らかになった。他家細胞から作製されたDryシートは、創傷治癒を促す再生医療において新たな扱いやすい被覆材であることが示唆された。
Creators : 松野 祐太朗 Dissertation Number : 医博甲第1664号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:UGT1A1*28および*6遺伝子多型は、イリノテカンに関連する毒性の危険因子として知られている。しかし、UGT1A1*28および*6に遺伝子変異を持たない患者においても、イリノテカンによる重篤な副作用が認められている。我々は、UGT1A以外のイリノテカン毒性の有用なバイオマーカーを同定するために、全エクソームにおける遺伝子多型を調査した。 方法:FOLFIRI療法、FOLFOX療法、FOLFOXIRI療法を投与された転移性大腸癌(mCRC)患者178例とmodified FOLFIRINOX療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法を投与された膵臓癌患者87例を対象とした。ゲノムワイドスクリーニングは全エクソームシーケンス(WES)を用いて行い、バリデーション解析は加水分解プローブを用いたqPCRを用いて実施した。 結果:FOLFIRI療法症例のWES(n = 15)により、7つの一塩基多型(SNP)がイリノテカン関連毒性である好中球減少のバイオマーカー候補として同定された。7つのSNPのうち、R3H domain and coiled-coil containing 1(R3HCC1; c.919G>A, rs2272761)のSNPは、検証サンプル症例のグレード3以上の好中球減少と有意な関連性を示した。mCRC患者に対するFOLFOXIRI療法(n = 23)または膵臓癌に対するmodified FOLFIRINOX療法(n = 40)といったイリノテカン含有の3剤併用化学療法患者でも、R3HCC1多型と好中球減少との間に有意な線形傾向がみられた(それぞれP = 0.017 および0.046 )。一方で、イリノテカンを含まないレジメン(mCRC患者に対するFOLFOX療法(n = 66)、膵臓癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法(n = 47))患者では、有意な関連は認められなかった。 結論:R3HCC1多型は、mCRCと膵臓癌に対するイリノテカンを含む化学療法の毒性に関する有用なバイオマーカーとなる可能性がある。
Creators : 兼定 航 Dissertation Number : 医博甲第1665号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:肝癌は肝内転移を生じやすく、その予後は不良である。がん幹細胞様細胞(CSLCs)とは、幹細胞性、腫瘍形成能、治療抵抗性に加え、転移能亢進といった特徴を有している。近年では、がんの転移形成や制御において、宿主の免疫機構が重要な働きを担っていると考えられており、今回、肝癌細胞株から誘導したCSLCsの免疫逃避能について検討を行った。 方法:Sphere誘導培地を用いて、Sphere細胞の形態で肝癌細胞株からCSLCsを誘導した。免疫逃避に関わる遺伝子およびタンパク発現を、RNAシーケンス、フローサイトメトリー、ELISA法を用いて解析し、親株とSphere細胞とで比較した。親株とSphere細胞それぞれの、NK細胞に対する感受性について、クロム放出試験を用いて比較検討した。BALB/cヌードマウスを用いた異種移植実験にて、親株とSphereの腫瘍形成能を比較した。 結果:肝癌細胞株SK-HEP-1から誘導したSphere細胞(SK-sphere)では、親株と比較し、細胞膜上のPD-L1、PD-L2、CEACAM1の発現が亢進し、ULBP1、MICA/MICBの発現は低下していた。また、SK-sphereの培地中では、可溶型MICAの濃度が上昇していた。SK-sphereにおけるHLA class I発現低下は見られなかった。肝癌細胞株SK-HEP-1およびHLEから誘導したSphere細胞を用いて、NK細胞に対する感受性をそれぞれの親株と比較したところ、どちらのSphere細胞においてもNK細胞による細胞障害性がより低下していた。NK細胞を保持するヌードマウスにおいて、親株の移植と比較してSK-sphereを移植した際により大きな腫瘍を形成した。 結論:肝癌細胞株から誘導したCSLCsはNK細胞を介した免疫系からの逃避能が亢進している事が示唆された。
Creators : 木村 祐太 Dissertation Number : 医博甲第1666号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景・目的:大腸癌(CRC)は、世界的に癌関連死亡の第2位の原因となっており、転移を伴う大腸癌(mCRC)患者の予後不良は緊急の課題である。以前、我々はSOMAscanアッセイを用いて、予後を予測する10種類のバイオマーカー候補を得ることができた。本研究の目的は、得られた候補タンパクの一つであるC-C motif chemokine ligand 7(CCL7)について、mCRC患者における治療前の血清CCL7濃度の予後予測性能を明らかにすることであった。 材料と方法:mCRC患者の血清(n=110)および手術標本(n=85)について、それぞれCCL7のタンパク濃度をELISA法および免疫組織化学法で検討した。また、Cox回帰分析、受信者動作特性曲線(ROC)分析、Kaplan-Meier法を用いて、タンパクの濃度と予後との関係を検討した。結果:血清CCL7濃度が高い患者の全生存期間(OS)は、低い患者と比較し、有意に不良であった。間質中のCCL7発現レベルが高い患者は、低い患者に比べ、有意に予後不良であった。 Carcino embryonic antigen(CEA)および糖鎖抗原19-9(CA19-9)の濃度は、CCL7低値群に比べ、高CCL7群で有意に高値であった。単変量解析および多変量解析により、血清CCL7濃度はmCRCの有意な予後因子であることが明らかになった。また、血清CCL濃度とCEA濃度の組み合わせにおいて、血清CCL7濃度、CEAの両方が高値である患者は、両方が低値である群と比較し、有意に予後不良であった。 結論:治療前の血清CCL7濃度および血清CCL7濃度とCEAとの組み合わせは、mCRCの予後を予測する有用なバイオマーカーである。
Creators : 千々松 日香里 Dissertation Number : 医博甲第1667号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:The Union for International Cancer Control(UICC)の tumour、node、metastasis(TNM)分類によって大腸がんの治癒あるいは再発の可能性を予測出来るため、治療方針の決定に役立っている。しかしこの分類法単独による予後の予測は不十分である。そのため予後予測因子として新たなバイオマーカーの同定が望まれている。過去に我々は、根治切除を行ったステージI、II、およびIIIの結腸直腸がん(CRC)患者において免疫組織化学によって同定されたCD4およびforkhead box P3(FOXP3)陽性T細胞密度の組み合わせの無再発生存期間(RFS)・全生存期間に対する有用性を報告した。本研究は、統計的パターン認識の手法である離散ベイズ識別則を応用することにより、T3/T4a ステージIIのCRC患者の再発を予測するマーカーの最適な組み合わせを抽出した。 方法:T3/T4aステージII患者の137症例の切除標本を用いて、12の臨床病理学的および免疫的因子を再発の予後予測因子の候補として解析を行った。 結果:比較的に予後良好とされている T3/T4aステージ II 症例で、CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度に最も強い影響があることが示唆された。CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度が低い症例群のRFSが明らかに不良であった。 結論:CD4とFOXP3陽性T細胞を組み合わせた腫瘍浸潤度がCRCの予後予測因子となり得ることが示唆され、従来のステージ分類では不十分な患者の層別化も可能になるという新規の知見が明らかになった。補助化学療法は、CD4・FOXP3陽性T細胞両方の腫瘍浸潤度が低い患者に対して考慮されるべきであることが示唆された。
Creators : 中上 裕有樹 Dissertation Number : 医博甲第1668号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty, 以下THA)においてカップ設置角度、カップ設置位置は脱臼の予防、外転筋レバーアームの再建、腸腰筋インピンジメント予防などの点で重要性はますます高くなっている。これまで後方アプローチでのComputed Tomography(CT)-based navigation使用によるcup 設置の正確性に関する報告は多数あるが、仰臥位前方アプローチ(Direct anterior approach、以下DAA)での報告は少なく、また術中イメージを使用した設置精度との比較をした報告はない。今回DAAでのTHAにおけるCT-based navigationを使用したカップ設置精度を検討した。DAAによるTHAを施行した156例171股における、カップ設置精度について、術中mechanical cup alignment guide使用群(MG群63股)、術中fluoroscopy使用群(FS群58股)、CT-based navigation使用群(CTN群50股)の3群について比較した。検討項目は、Lewinneckのsafe zone内のカップ設置割合(%)、カップ外転角(radiographic inclination、以下RI)、カップ前捻角(radiographic anteversion、以下RA)、カップの骨頭中心位置(上下、前後、内外)に関して、術前計画と術後設置角度、位置を比較し、その絶対値誤差をそれぞれ3群にて検討した。術後2週で全例CT検査を実施し、三次元解析ソフトにて誤差を抽出した。Lewinneckのsafe zone内の設置割合は、MG群80.9%(55/63)、FS群81%(47/58)、CTN 群100%(50/50)で、CTN群はMG群(p=0.005)、FS群(p=0.005)よりも有意に高かった。RIはMG群4.4±3.2°、FS群3.6±3.1°、CTN群2.8±2.5°であり、CTN群はMG群(p=0.01)よりも有意に誤差が小さかった。RAはMG群5.8±4.7°、FS群4.8±4.1°、CTN群2.8±1.9°で、CTN群はMG群(p=0.0001)、FS群(p=0.02)より有意に誤差が小さかった。RI、RAに対して絶対値誤差3°以上をoutlierとし各群間で比較した。RI についてMG群63.5%(40/63)、FS群43.1%(25/58)、CTN群36%(18/50)で、CTN群はMG群(p=0.03)より有意にoutlierが少なかった。RAについて、MG群66.7%(42/63)、FS群58.6%(34/58)、CTN群48%(24/50)でCTN群はMG群(p=0.04)よりも有意にoutlierが少なかった。カップの骨頭中心座標(内外:X軸、前後:Y軸、上下:Z軸)については、X軸、Y軸では3群とも有意差は認めなかった。しかしZ軸ではMG群3.3±3.2mm、FS群3.2±3.0mm、CTN群1.8±1.4mmで、CTN群がMG群(p=0.02)、FS群(p=0.007)に対して有意に誤差が少なかった。絶対値誤差より2mm以上をoutlierとし各群間で比較を行った。X軸、Y軸において有意差は認められなかった。一方Z軸に関してはCTN群がMG群(p=0.03)、FS群(p=0.04)よりも有意にoutlierが少なかった。今回の結果から、DAAでのTHAにおいて、CT-basedNavigation使用することでmechanical cup alignment guide使用や、fluoroscopyを使用するよりもカップ設置精度が向上し、有用であることが確認された。
Creators : 松木 佑太 Dissertation Number : 医博甲第1669号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
自動車事故に際しシートベルトに沿って生じる帯状の皮下出血斑はシートベルト兆候(seat belt sign:SBS)と呼ばれている。特に腹部SBS が上前腸骨棘(anterior superior iliac spine:ASIS)よりも上方に位置する場合、腹部臓器損傷の危険性が高い。本研究の目的は、腹部SBS 位置に関連するシートベルト腹部部分(ラップベルト)の位置に影響を与える因子について解析することである。本研究は、健康な成人100名(男性50名、女性50名)の身体所見と、カーシート座位時のラップベルト位置との関係を前向きに検討したものである。身体所見は、年齢、身長、Body Mass Index(BMI)、腹囲を測定した。それぞれ平均年齢37.9歳、平均身長164.9cm、平均BMI 23.9kg/m2、平均腹囲83.4cmであった。X線学的所見は、腰椎前弯(lumbar lordosis:LL)、仙骨傾斜(sacral slope:SS)を測定し、ラップベルト位置は運転席側のラップベルトの中央とASIS相当の位置に鉛テープでマーキングすることで計測した。側面X線撮影を行い、ASISから中央マーカーまでの水平距離(X値)、垂直距離(Z値)を計測した。ラップベルト角度は、2つのマーカーの上端を結ぶ直線と水平線とのなす角度を計測することで求めた。これらの身体所見とX線学的所見との関係を統計学的に解析した。X値とZ値は体重(X値r = 0.73、Z値r = 0.56)、BMI(X値r = 0.77、Z値r = 0.56)、腹囲(X値r = 0.74、Z値r = 0.52)と正の相関があり、ラップベルト角度は体重(r = -0.33)、BMI(r = -0.35)、腹囲(r = -0.37)と負の相関があった。これらの結果からは、BMIの高い乗員ではラップベルトがASISより高い位置にあるため、シートベルト損傷を引き起こす可能性が高い。この解析は、より安全なシートベルトの開発に役立つと思われる。
Creators : 山縣 大樹 Dissertation Number : 医博甲第1670号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
本研究では、特定の遺伝子型と表現型との関連を明らかにするために、EDAR遺伝子の潜性(劣性)変異に着目し、その特徴を詳細に検討した。具体的には、過去にEDARのDD内に同定された潜性(劣性)遺伝形式を示す4 種類のミスセンス変異(p.R358Q、p.G382S、p.I388T、p.T403M)について、培養細胞での過剰発現系で一連の解析を実施した。これらの変異の中で、p.R358QはEDARADDとの結合能を失い、下流のNF-κB活性を低下させることが知られており、機能喪失の陽性対照として用いた。 まず、細胞溶解液を用いたwestern blot法では、p.R358Qおよびp.T403M変異型EDAR蛋白は野生型EDAR蛋白よりも発現量が減衰し、より大きい分子量を示した。一方で、p.G382Sおよびp.I388T変異型EDAR蛋白は野生型EDAR蛋白と同様の発現パターンを示した。また、各EDAR蛋白の細胞内での局在を解析するために実施した蛍光免疫染色法では、野生型EDAR蛋白と同様にp.G382Sおよびp.I388T変異型EDAR蛋白は細胞質内に局在が認められたが、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白は細胞膜に発現していた。これらの結果から、変異型蛋白間で発現パターンが異なることが示された。続いて行ったNF-κBレポーターアッセイでは、すべての変異型EDAR蛋白がNF-κBの活性化を抑制したが、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白に比べ、p.G382Sとp.I388T変異型EDAR蛋白による抑制効果は軽微であった。EDARとEDARADDの結合を検討した共免疫沈降法では、p.R358Qとp.T403M変異型EDAR蛋白はEDARADDとの結合能を完全に喪失していたが、p.G382Sとp.I388T変異型EDAR蛋白は、ある程度結合能を維持した。これらの解析で、p.G382S変異型EDARの機能喪失の程度は最も軽度と考えられた。 過去の研究で、野生型EDARはTRAF6とは直接結合しないことが報告されており、本研究で実施した野生型EDARとTRAF6間の共免疫沈降法でも同様の結果が得られた。しかしながら、驚くべきことに、本研究で解析した全ての変異型EDAR蛋白はTRAF6と直接結合する性質を示した。 培養細胞での過剰発現系においては、機序は不明だがEDAR蛋白を含む種々のTNF受容体が細胞質内に発現する傾向を示すことが知られていたことから、p.R358Qおよびp.T403M変異型EDAR蛋白の細胞膜への局在は異常な発現パターンと考えられる。NF-κBレポーターアッセイおよび共免疫沈降法の結果から、各変異型EDAR蛋白とEDARADDの親和性はNF-κB活性低下の程度と強く相関することが示唆された。今回解析した4 種類のミスセンス変異は、いずれもEDARの機能や構造に重大な影響を与えると複数のデータベースで推測されていたが、各データベースのスコアは4つの変異の間で非常に類似していた。すなわち、現在の予測ツールの解析能力には限界があり、本研究のように実際に発現・機能解析を行う重要性がハイライトされたといえる。 4種類の変異型EDAR蛋白に共通する唯一の現象は、野生型EDAR蛋白がEDARADDを介して間接的にTRAF6と相互作用するのに対し、TRAF6と直接結合することである。これは、変異型EDAR蛋白がEDAR、DARADD、TRAF6からなる正しい蛋白複合体を形成できないことを示唆しており、EDAR遺伝子変異に起因するHEDの鍵となっている可能性があるが、本現象の病的意義を解明するためには今後のさらなる検討を要する。 本研究で得られた結果に基づき、各変異を機能喪失の度合いで評価した。R358QとT403Mを「重度」、p.I388Tを「中等度」、p.G382Sを「軽度」とした。各変異を報告した文献に提示されていた表現型と比較検討した結果、EDAR遺伝子変異の機能喪失の程度がHEDの重症度と相関している可能性が示唆された。
Creators : 八木 献 Dissertation Number : 医博甲第1671号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
角膜の剛性を表す生体力学的指標の一つとして角膜ヒステリシス(CH)があり,CHは眼圧(IOP)や中心角膜厚(CCT)などの影響を受け,眼球全体の剛性も反映することから,CH低下が緑内障の進行リスクとして注目される。一方で,硝子体は眼球を外力から保護する緩衝材としての作用があり,眼球の剛性に影響するが,硝子体とCHとの関連は明らかになっていない。本研究では硝子体切除がCHに与える影響を評価することを目的に,白内障単独手術と白内障手術併施硝子体切除術の術後早期のCHを比較した。白内障手術(PEA+IOL)を施行した18例20眼(PEA+IOL群),黄斑上膜あるいは黄斑円孔に対してPEA+IOL併施の経毛様体扁平部硝子体切除術(PPV)を施行した27例28眼(PPV triple群)を対象とした。術前,術後2週,術後3か月のCH,IOP,CCTおよびCHとCCTの相関関係について後ろ向きに検討した。CHは術前,術後2週,術後3か月で,PEA+IOL群において11.1±1.1mmHg,10.4±1.1 mmHg,11.0±1.0 mmHgであり,PPV triple群において11.0±1.4mmHg,9.8±1.4 mmHg,10.6±1.6 mmHgであった。CHはPEA+IOL群で術前後に有意差は認めなかったが,PPV triple群の術後2週で有意に低下していた。IOPおよびCCTは両群とも術前後に有意な変化は認めなかった。PEA+IOL群の全時点とPPV triple群の術前にはCHとCCTの正の相関関係を認めたが,PPV triple群の術後には相関関係を認めなかった。以上より,PPV triple手術ではIOPやCCT以外による要因で術後にCHが低下することが示され,硝子体切除が眼球の剛性変化をもたらしCH低下に寄与した可能性が考えられた。CHの低下は,外力や眼圧の影響を受けやすい眼球構造であると言えることから,PPV 術後のCH評価は眼圧管理の指標や緑内障の発症,進行リスクを反映する可能性がある。
Creators : 太田 真実 Dissertation Number : 医博甲第1672号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:糖尿病患者における聴覚障害の有病率は有意に高く、その予防法の開発が望まれている。 目的:本研究では、糖尿病マウスに対するエイコサペンタエン酸(EPA)投与による早期難聴の予防効果を検討した。 方法:糖尿病モデルとしてTSOD(Tsumura, Suzuki, Obese Diabetes)マウスを、コントロールとしてTSNO(Tsumura, Suzuki, Non Obesity)マウスを使用した。TSNO群とTSOD(EPA-)群(ひまわり油投与)、TSOD(EPA+)群(EPA投与)の3 群に分けた。聴性脳幹反応(ABR)を測定し、蝸牛を組織学的に評価した。 結果:TSOD(EPA+)群はTSOD(EPA-)群に比べ、閾値の上昇が小さい傾向を認めた。TSOD(EPA+)群では、生後11 ヶ月から14 ヶ月にかけて、4kHzでのABR 閾値がTSOD(EPA-)群よりも有意に低かった。TSOD(EPA-)群では、血管条の毛細血管内腔の狭小化と蝸牛軸における血管壁の肥厚が観察された。 結論:TSOD マウスに対するEPA 投与による蝸牛血管の動脈硬化の抑制は、加齢に伴う早期難聴を抑制することが示唆された。
Creators : 松浦 貴文 Dissertation Number : 医博甲第1673号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
方法: 本研究は圧縮センシングを用いた自由呼吸下での多相ダイナミックEOB-MRIを撮像された96人の患者を対象とした。多相ダイナミック撮像として自由呼吸下で11秒毎に1相を5分間、脂肪抑制T1強調画像を撮像し、単純1相と造影28相を撮像した。造影剤投与後20分後に肝細胞相を撮像し、30相目とした。ROI: region of intensityを肝右葉に2つ、左葉に1つを脈管を避けながら可能な限り大きく設定した。3つのROIの信号強度の平均値をそれぞれの時相の信号強度とした。 以下の増強効果のパラメータについて評価した。 CER (contrast enhancement ratio) CERy-x: (SIy -SIx)/SIx (x相目からy相目)とし、 CER4-pre:動脈相 CER7-5:門脈相から動脈相にかけて CER7-pre:門脈相 CER28-pre:5分早期肝細胞相 CER28-7:門脈相から5分早期肝細胞相 CERHBP-pre:20分肝細胞相 GRL (gradient of regression line):回帰曲線の傾き GRLy-x: x相目からy相目とし、 GRL4-2:動脈相での傾き GRL7-4 :門脈相での傾き GRL 7-2 :動脈相、門脈相にかけての傾き GRL 28-7:門脈相から早期肝細胞相での傾き 先行研究によると、肝実質の線維化の重症度(F0-F2 vs F3-F4)に基づいてCERHBP-preでcut off値を0.703として肝細胞相での増強効果がinsufficient HBP enhancement groupとsufficient HBP enhancement groupに分けれるとしている。CERHBP-pre<0.703またはCERHBP-pre>0.703により患者を2群に分け、CERy-x、GRLy-xについて検討した。 上記に加えて年齢、性別、総ビリルビン、プロトロンビン時間、アルブミン、eGFRについても、この2群間で比較した(ウィルコクソンの順位和検定)。 肝細胞相の増強効果に対する影響の大きさを調べるためにノンパラメトリック検定も用いられた(スピアマンの順位相関係数)。 結果: 動脈相(CER4-pre、GRL4-2)に関する結果として、これらはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupの間に有意差を認めなかった。 動脈門脈相(1相目~7相目)に関する結果としては、CER7-preはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.55 vs 0.44, p<0.001)。CER4-pre、GRL4-2、Gradient7-4、Gradient7-2では2群間に有意差は見られなかった。 5分後の早期肝細胞相(1相目~28相目)に関する結果としては、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7においてsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.64 vs 0.47, 0.10 vs 0.03, 1.27 vs 0.27、すべてp<0.001)。 血液データ(総ビリルビン、プロトロビン時間、アルブミン、eGFR)においても2群間で有意差が認められた(p=0.004-0.049)。CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。 CER28-preが最も相関係数が高かった(0.838)。 考察: 動脈相では2群間(sufficient HBP enhancement groupとinsufficient HBP enhancement group)に有意差を認めず、門脈相のパラメータでは有意差が見られた。機序としては推測になってしまうが、肝の線維化の進行に伴い門脈血流は低下しやすいが、動脈血流は比較的保たれることが原因であろうか。 また、肝細胞相の信号強度は、血液データなどによって得られた肝機能を示す数値と相関することはこれまでにも報告されてきた。肝機能が良好であるほど、肝細胞がEOBを取り込みやすいためとされる。 本研究では腎機能と肝細胞相の信号強度とにも相関が見られたが、腎機能が低い症例の方がより肝排泄の割合が増えるからと思われた。 本研究のように、ダイナミック撮像中に得られるパラメータが肝細胞相における肝実質の信号強度と相関することを報告した研究はこれまでになかった。 CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは、いずれも血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。 本研究のようにダイナミック撮像中に得られたパラメータを用いれば、血液データよりも高い精度で肝実質の信号強度を予測することができる。 これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。 結語: 圧縮センシングを用いた自由呼吸下でのEOB-MRIのダイナミック撮像おいて、肝実質の信号強度の変化を連続データとして捉えることにより得られたパラメータは、肝細胞相での肝実質の信号強度と強い相関を示す。これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
Creators : 田邊 雅也 Dissertation Number : 医博甲第1674号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
目的:アルコール使用障害(Alcohol use disorder: AUD)は治療後も再発率が高く再発を予測する患者の要因は確立されていない。AUDでは衝動制御障害、実行機能障害および意思決定障害が報告されているため、本研究ではそれらを用いてAUDの予後予測因子を前方視的に明らかにすることを目的とした。 方法:20歳から70歳までの入院中のAUD患者41名を対象とした。入院中に、①情動顔go/no-go課題(衝動制御課題)および言語流暢性課題(実行機能課題)中の脳血流活性化の指標である酸素化ヘモグロビン積分値を機能的近赤外分光法(functional nearinfrared spectroscopy: fNIRS)を用いて測定し、さらに②不確実な状況下でのリスク選好課題(意思決定)を行った。退院後6ヶ月の再発の有無を主要アウトカムとした。 結果:退院後、24名(58.5%)が断酒を継続し、17名(41.5%)が再飲酒した。断酒群に比べて再飲酒群では、①情動顔go/no go課題における右前頭側頭領域の活性化が有意に低下し、②意思決定課題では有意にリスク追及的であった。断酒群でのみ、右前頭側頭領域の活性と渇望尺度の間に負の相関が観察された。さらに、退院後6ヶ月の飲酒の有無を従属変数とし、年齢、AUD重症度、発症年齢、右前頭葉領域の酸素化ヘモグロビン積分値及び意思決定課題でのリスク選好の5つの独立変数を用いた2項ロジスティック回帰分析を行い、各独立因子の再発への影響を検討した結果、右前頭側頭領域の酸素化ヘモグロビン積分値が小さいほど(オッズ比=0.161、p=0.013)、またリスク追及傾向が強いほど(オッズ比=7.04、p=0.033)再発リスクが増加することが示された。 結論:右前頭側頭領域の情動刺激に対する脳血流活性化の低下と、リスク追及傾向が、AUDにおける退院6か月後の再発を予測し得る可能性が示された。
Creators : 佐々木 順 Dissertation Number : 医博乙第1107号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-05-17 Degree Grantors : Yamaguchi University
膵β細胞量の進行性の減少が糖尿病の発症・進展に関与する。糖尿病病態では、インスリン作用不足による高血糖に対する代償的なインスリン産生の増加や脂質異常のためにβ細胞において小胞体ストレスが亢進する。一方、セリン・スレオニンキナーゼGsk-3 はPI3/Akt により抑制され、Gsk-3 の活性制御障害がβ細胞不全と小胞体ストレス関連β細胞死に関連する。しかし、Gsk-3 を介した細胞障害の分子機構は十分に解明されていない。本研究では、Gsk-3 を介する小胞体ストレス応答調節と膵β細胞アポトーシス誘導の関連について検討を行った。方法:マウス単離膵ランゲルハンス氏島(ラ氏島)およびマウス膵β細胞株で薬理学的に小胞体ストレスを誘導した。Ins2 遺伝子に変異を持ち、変異インスリンの蓄積により小胞体ストレスが亢進しβ細胞死を来すAkita mouse 由来の膵β細胞株を遺伝的小胞体ストレスのモデルとして用いた。低分子化合物、あるいは酵素不活性型Gsk-3βの導入によりGsk-3 活性を阻害した。結果:小胞体ストレス下ではGsk-3 を抑制するAkt の活性が減弱しGsk-3 が活性化した。Gsk-3 はATF4 のSer214 リン酸化を介してATF4 とSCF-βTrCP の結合とそれに続くATF4 のユビキチン化、蛋白分解を促進する。したがって、Gsk-3 の抑制によりATF4 の分解速度が低下し、ATF4 蛋白質量が増加することが明らかになった。このとき、β細胞のアポトーシスが減弱することを確認した。この抗アポトーシス効果はdominant negative-ATF4 導入あるいはATF4 ノックダウンにより有意に減弱した。Gsk-3 抑制によるアポトーシス抑制のメカニズムについて、ATF4 の転写標的であるGADD34 および4E-BP1 の発現増強を介した全般的な蛋白翻訳の動態との関連が考えられた。さらに、Akita mouse 由来の膵β細胞株でもGsk-3 活性阻害によるアポトーシス抑制が確認され、これにはATF4 の発現増強と全般的な蛋白翻訳抑制が関連した。以上の結果より、インスリンシグナルとストレス応答のクロストークが明らかになり、Gsk-3/ATF4 経路が糖尿病におけるβ細胞保護の治療標的となる可能性が示唆された。
Creators : 永尾 優子 Dissertation Number : 医博乙第1108号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-07-05 Degree Grantors : Yamaguchi University
細胞は熱ストレスなどのタンパク質毒性ストレスにさらされると、熱ショックタンパク質群(HSPs)を誘導することで適応する。この適応機構は熱ショック応答と呼ばれ、熱ショック転写因子HSF1によって主に転写レベルで制御される。活性化されたHSF1はHSP遺伝子プロモーターに存在する熱ショック応答配列(HSE)に結合し、メディエーターを含む転写開始前複合体を集積させることで転写を促進する。一般に、転写因子及びその調節因子は液―液相分離によってプロモーター上に凝縮体を形成すると考えられている。しかし、HSP遺伝子プロモーター上でも同様かどうかについては、凝縮体が微小であるために十分な解析ができていない。本研究では、ヒトHSP72プロモーター由来のHSEを多数連結したレポーター遺伝子をマウス細胞に導入した。このHSEレポーター遺伝子を持つ細胞に蛍光タンパク質mEGFPを融合したHSF1を発現させることで、熱ストレス条件下でHSF1凝縮体を可視化することに成功した。この人工的なHSF1凝縮体は部分的に液体様の性質を持つ、すなわち液―液相分離により形成されていた。また、大腸菌から精製したタンパク質を用いた実験から、HSF1の天然変性領域IDR)が相分離に寄与することも分かった。さらにこの実験系を用いて、HSF1凝縮体の形成が転写調節因子によって制御されるかを調べた。特に、熱ショック応答を促進するメディエーターの一つであるMED12に着目して解析したところ、MED12のIDRはHSF1凝縮体に集積すること、そしてMED12の発現抑制はHSF1の凝縮体形成を著しく抑制することが明らかとなった。本研究は、HSP72プロモーター上のHSF1凝縮体を解析する実験系を提示するとともに、それが転写調節因子によって制御されることを示唆する。
Creators : 岡田 真理子 Dissertation Number : 医博甲第1677号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
現在の日本は少子高齢化・医療高度化を背景に、要介護者数の増加、医療費増加、人材不足、医療格差などの医療課題に直面している。近年、人工知能(ArtificialintelligenceAI)技術やシステム医学に基づいたデータ駆動型医療の登場によって、これら課題を解決できる可能性が広がった。筆者自身は呼吸器診療に携わる立場でもあることから、呼吸器診療を支援する以下3つの医療AI技術を開発した。1つ目の技術では、副作用ビッグデータ(JapaneseAdverseDrugEventReportJADER)に基づきベイズ推定を行うことで、AUC0.93の精度で副作用の原因薬を推定できた。呼吸器領域では薬剤性肺障害など重篤な副作用があるが、本技術の臨床応用によって、副作用による健康被害の最小化と副作用管理の効率化が期待できる。2つ目の技術では、喘息患者の臨床データ(年齢、BMI、血中好酸球数、呼気NO値、増悪回数)をもとに教師あり機械学習を行うことで、喘息患者の気流閉塞の急速進行1秒量低下)をAUC0.85の精度で予測できた。実用化によって、早期の治療介入が必要な喘息患者を同定でき、重症化を防ぐための先制治療につながる。3つ目の技術では、喘息質問票(AsthmaControlQuestionnaire-5:ACQ-5)のデータを用いて教師なし機械学習を行うことで、症状から喘息病態である気流閉塞、2型気道炎症、増悪リスクを推定できた。従来、治療選択のため病態評価には専門的検査が必要だが、本技術ではACQ-5に含まれる喘息症状の評価のみから、個々の喘息の病態に応じた治療選択(個別化治療)につなげることができる。本技術は、発展途上国、過疎地域、プライマリケアの現場など、医療環境が不十分な地域で、適切な喘息治療薬の選択を支援できる。ひいては、医療格差の是正につながる可能性が期待できる。本研究で開発したAI技術の実用化によって、臨床現場における副作用管理、先制医療、個別化治療を支援する。これによって、健康寿命の延伸、医療費抑制を目指す。同時に、開発したAI技術によって専門医療の一部を補完することで、医療従事者の業務負担軽減と、医療格差の是正均てん化につながることが期待できる。
Creators : 濱田 和希 Dissertation Number : 医博甲第1678号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
ダントロレン(DAN)はRyR2のN末端ドメインLeu601-Cys620に直接結合し、RyR2の4量体構造を安定化させることにより、RyR2からの拡張期Ca2+漏出を防ぐ。以前我々は、RyR2へのCaM高親和性KIマウス(V3599K)を用いて、横行大動脈縮窄(TAC)による圧過負荷誘発性心肥大マウスモデルにおいてRyR2からのCaM解離を抑制することで、Ca2+漏出を防ぎ、左室リモデリングを抑制することを報告した。そこで本研究では、横行大動脈縮窄(TAC)による圧負荷誘発性心肥大マウスモデルにおいてダントロレンの慢性投与がCaMとRyR2の結合親和性を遺伝的に強化した場合と同様の機序で左室リモデリングを抑制するかを調べた。横行大動脈縮窄(TAC)による圧負荷誘発性心肥大マウスモデルを作成した。野生型マウスを、Sham群、TAC群、TAC-DAN群(ダントロレン20mg/kg/day腹腔内投与)の3群に割り付けた。ShamまたはTAC手術から8週後の生存率、心機能および組織評価、単離心筋細胞を用いたCa2+ハンドリング、RyR2-CaM結合性の評価を行った。TAC-DAN群はTAC群と比較し、TAC手術から8週後の生存率は良好であった(TAC群 49% vs TAC-DAN群83%)。また、心エコーと心筋組織においては、TAC群で認めた左室リモデリングは、TAC-DAN群で抑制された。TAC手術から8週後の単離心筋細胞ではTAC群で拡張期Ca2+スパーク頻度の増加およびRyR2-CaM結合親和性の低下を認めたが、TAC-DAN群ではそれが抑制された。我々の研究はダントロレンの慢性投与によりRyR2を安定化させ、RyR2からのCaM解離を抑制することで、RyR2からの拡張期Ca2+漏出を防ぎ、左室リモデリングが抑制され、予後が改善することを示した。
Creators : 矢野 泰健 Dissertation Number : 医博甲第1679号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
To investigate whether dantrolene (DAN), cardiac ryanodine receptor (RyR2) stabilizer, improves impaired diastolic function in an early pressure-overloaded hypertrophied heart, pressure-overload hypertrophy was induced by transverse aortic constriction (TAC) in mice. Wild-type (WT) mice were divided into four groups: sham-operated mice (Sham), sham-operated mice treated with DAN (DAN+Sham), TAC mice (TAC), and TAC mice treated with DAN (DAN+TAC). The mice were then followed up for 2 weeks. Left ventricular (LV) hypertrophy was induced in TAC, but not DAN+TAC mice, 2 weeks after TAC. There were no differences in LV fractional shortening among the four groups. Catheter tip micromanometer showed that the time constant of LV pressure decay, an index of diastolic function, was significantly prolonged in TAC but not in DAN+TAC mice. Diastolic function was significantly impaired in TAC, but not in DAN+TAC mice as determined by cell shortening and Ca2+ transients. An increase in diastolic Ca2+ leakage and a decrease in calmodulin (CaM) binding affinity to RyR2 were observed in TAC mice, while diastolic Ca2+ leakage improved in DAN+TAC mice. Thus, DAN prevented the progression of hypertrophy and improved the impairment of LV relaxation by inhibiting diastolic Ca2+ leakage through RyR2 and the dissociation of CaM from RyR2.
Creators : CHANG YAOWEI Dissertation Number : 医博甲第1680号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は造血器腫瘍において優れた抗腫瘍効果を示している一方、固形がんにおいては臨床応用がまだなされていない。臨床応用におけるハードルとなっている理由の一つとして、固形がんでは適切なCAR ターゲットが欠如しているということにある。GM2 は糖鎖にシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質の一群であるガングリオシドの一つであり、様々なタイプの固形がんにおいて過剰発現している。本研究では、我々が以前に開発したインターロイキン7(IL-7)/ケモカインリガンド19(CCL19)産生型ヒトCAR-T細胞システムを用いて、GM2が固形腫瘍に対するCART細胞療法のターゲットとなりうるかという点についてヒト肺小細胞がん異種移植マウスモデルを用いて探究した。IL-7/CCL19 産生型抗GM2 CAR-T細胞治療を行ったところ、GM2 陽性腫瘍の完全な退縮が観察され、腫瘍内部への豊富なT 細胞浸潤や長期のメモリー応答形成も観察されたが、有害事象は認めなかった。加えて、臨床においてCAR-T 細胞使用時に問題となるサイトカイン放出症候群や神経毒性をコントロールする方法として、ガンシクロビル(GCV)投与によりアポトーシスが誘導される自殺システムである単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-TK)をCAR-T細胞に遺伝子導入した。HSV-TK発現IL-7/CCL19産生型抗GM2 CAR-T細胞は、in vivoにおいてGCV投与により効果的に除去された。以上より、我々の研究はIL-7/CCL19産生型ヒト抗GM2CAR-T細胞のGM2陽性固形がん治療への臨床応用における安全性を実証し、その有望な治療効果を明らかにした。
Creators : 佐々木 貴宏 Dissertation Number : 医博甲第1681号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】インターロイキン(IL)-33は, 宿主防御, 神経損傷, 炎症などに重要なIL-33/ST2シグナル経路を誘導する. 一方, IL-33のデコイ受容体である可溶性ST2(sST2)は, IL-33/ST2シグナル経路を抑制する. sST2は種々の神経疾患患者の血清中で増加するが, 低酸素性虚血性脳症(Hypoxic-ischemic encephalopathy; HIE)では知られていない. 【目的】本研究の目的は, HIEにおける血清中のIL-33, 及びsST2濃度を測定し, HIE重症度と神経学的予後との関連性を検討することである. 【対象と方法】2017年1月から2022年4月の期間に, 山口大学医学部附属病院総合周産期母子医療センターに入院した, 在胎期間36週以上, かつ出生体重1,800g以上の新生児を対象とし, HIE群23名, 対照群16名を本研究に登録した. HIEの重症度はSarnat分類により軽症, 中等症, 重症に分類し, 生後6時間以内, 及び1-2, 3, 7日目の血清IL-33及びsST2濃度を測定した. プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーによりHIE群の基底核におけるlactate/N-acetylaspartate(Lac/NAA)比を算出し, 退院後の神経学的後遺症の有無を追跡調査した. 【結果】血清中IL-33濃度は各群で差を認めなかった. 一方, 中等症及び重症HIE群の血清sST2濃度は, 対照群に比し著明に高値で, HIE重症度と相関して高値であった. 血清中sST2濃度はLac/NAA比と有意な正の相関を示し(相関係数=0.527, P=0.024), 神経学的後遺症を来したHIE児では予後良好の児に比し, sST2濃度及びLac/NAA比が有意に高かった(それぞれP=0.020, <0.001).【結論】血清sST2濃度はHIEの重症度および神経学的予後予測に有用である可能性が示唆された.
Creators : 濱野 弘樹 Dissertation Number : 医博甲第1682号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】結腸直腸癌(colorectal cancer:CRC)の予後については、腫瘍の特性だけでなく、宿主の免疫反応も重要な因子となる。我々は宿主の免疫反応として全身および腫瘍微小環境(tumor microenvironment: TME)の炎症性サイトカイン発現に注目し、これらを評価することにより、免疫抑制状態と患者の予後との関係を検討した。 【方法】 切除可能CRC患者209名において、術前に採取した血清サンプルを用いてサイトカイン濃度(IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)を電気化学発光法により測定し、予後との関連を検討した。また切除切片における腫瘍組織でのサイトカイン発現を腫瘍細胞、間質細胞に分けて免疫組織化学的に評価した。さらに、切除したCRC患者10例において、新鮮な切除切片から抽出した腫瘍浸潤細胞を用いたマスサイトメトリーによるシングルセル解析を行った。 【結果】 無再発生存期間において、血清IL-1β、IL-8、TNF-α濃度の高低では有意な関係を認めなかったが、血清IL-6高値群で有意に予後不良であった。また血中IL-6濃度上昇は腫瘍組織中の間質細胞におけるIL-6高発現と関連していた。シングルセル解析の結果、腫瘍浸潤免疫細胞のうちIL-6+細胞は主に骨髄球系細胞で構成され、リンパ球系細胞ではIL-6発現をほとんど認めなかった。またIL-6高発現群では、CD33+HLADR-骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell: MDSC)およびCD4+FOXP3highCD45RA-エフェクター型抑制性T細胞(effector regulatory T cell: eTregの割合がIL-6低発現群に比べ有意に高かった。さらに、MDSCにおけるIL-10+細胞の割合、eTregにおけるIL-10+細胞またはCTLA-4+細胞の割合は、IL-6高発現群で有意に高かった。 【結論】血清IL-6濃度の上昇は間質細胞のIL-6発現と関連し、予後不良であった。腫瘍浸潤免疫細胞におけるIL-6高発現は、TMEにおけるMDSCやeTreg等の免疫抑制性細胞の蓄積と関連し、その機能性マーカーの上昇も認めた。これらIL-6を介した抑制性免疫機構がCRC患者の予後不良の一因となっている可能性がある。
Creators : 山本 常則 Dissertation Number : 医博甲第1683号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
Objective: Anastomotic leakage is a common and severe complication of esophageal reconstruction. Accordingly, there is a clinical need for novel methods to prevent it. We developed multilayered, growth factor-secreting fibroblast sheets that promote wound healing and angiogenesis. The present study aimed to assess the utility of allogenic multilayered fibroblast sheets in preventing esophageal anastomotic leakage in a rat model of esophageal reconstruction. Methods: Allogenic multilayered fibroblast sheets prepared from oral mucosal tissues were implanted at esophageal anastomotic sites. Results: The allogenic multilayered fibroblast sheet group had significantly higher burst pressure and collagen deposition compared to a control group five days postoperatively. The expression levels of collagen type I and III mRNAs around esophageal suture sites were higher in the allogenic multilayered fibroblast sheet group compared to the control group on postoperative days 0, 3, and 5. There was a trend toward lower anastomotic leakage and lower abscess scores in the allogenic multilayered fibroblast sheet group compared to the control group; however, these differences did not reach statistical significance. Allogenic multilayered fibroblast sheets completely disappeared at ten days after implantation. Further, no inflammation was observed at suture sites with implanted allogenic multilayered fibroblast sheets at five days after surgery. Conclusion: Allogenic multilayered fibroblast sheets may represent a promising method of preventing esophageal anastomotic leakage.
Creators : 山本 直宗 Dissertation Number : 医博甲第1684号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
Generalized pustular psoriasis (GPP) is a rare form of psoriasis, which is characterized by sudden onset of repeated erythema and pustule formation with generalized inflammation. Recent advances in molecular genetics have led to the identification of several genes associated with GPP, including IL36RN, CARD14, AP1S3, SERPINA3, and MPO. Of these, only limited cases of GPP have been reported to carry mutations in the AP1S3, SERPINA3, or MPO to date. In the present study, we investigated a Japanese patient with GPP and found a bi-allelic missense mutation c.1769G>T (p.Arg590Leu) in the MPO gene. Structural analysis predicted that the mutant MPO protein would abolish its ability to bind with heme protein. In vitro studies using cultured cells revealed that the mutant MPO was stably expressed, but completely lost its myeloperoxidase activity. Immunohistochemistry (IHC) using an anti-MPO antibody showed markedly-reduced expression of MPO protein in the patient’s skin, suggesting that the mutation would lead to an instability of the MPO protein in vivo. Finally, IHC with an anti-citrullinated Histone H3 antibody demonstrated a sparse formation of neutrophil extracellular traps within a Kogoj's spongiform pustule of the patient’s skin. Collectively, we conclude that the c.1769G>T (p.Arg590Leu) in the MPO is a complete loss-of-function mutation associated with GPP in the patient. Our data further underscore critical roles of the MPO gene in the pathogenesis of GPP.
Creators : 鬼束 真美 Dissertation Number : 医博甲第1685号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
アミノグリコシド系抗菌薬は有害反応として聴覚障害をきたすことがあり、蝸牛基底回転の外有毛細胞が障害されやすいことが知られている。本研究では、ネオマイシンの有毛細胞障害に対するアスタキサンチンナノ製剤の保護効果を検討した。ネオマイシンを加えたCBA/Nマウスの卵形嚢培養に対し、培養液にアスタキサンチンナノ製剤を投与した群では有毛細胞の減少および酸化ストレスが有意に抑制された。さらに、アスタキサンチンナノ製剤の鼓室内投与を行い音響曝露前後の聴性脳幹反応(ABR)閾値の変化、有毛細胞減少率を評価した。アスタキサンチン投与群では音響曝露後のABR閾値変化、有毛細胞減少率が抑制される傾向が見られた。血液内耳関門の存在により、鼓室内投与に適した薬剤は限られるが、アスタキサンチンナノ製剤の形態は正円窓膜を浸透する可能性があり、内耳障害抑制の効果を有する可能性が示唆された。
Creators : 小林 由貴 Dissertation Number : 医博乙第1109号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-11-08 Degree Grantors : Yamaguchi University