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Result 1259 Items
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方法: 2010年10月から2019年9月までに山口大学医学部附属病院および川崎医科大学附属病院で画像検査を受けられた患者を後ろ向きに検討した。炭酸ガス拡張を用いたCTC直後にDCE-CTを実施した82例をCE-CTC群とした。CE-CTC群と同様のDCE-CTプロトコールで撮像されたCTC非併用のDCE-CTの症例のうち、年齢や性別をマッチさせた77例を対照群とした。CE-CTC群は男性48名、女性34名で年齢は21~85歳(平均60歳)、対照群は男性46名、女性31名で年齢は20~84歳(平均60歳)であった。 CTは多列検出器CT装置(Optima CT660 ProまたはLightSpeed Ultra 16、ともにGE社製)を用いて行った。CE-CTC群では、大腸の拡張は自動低圧炭酸ガス送出装置(HP-2®;堀井薬品工業社製)を用いて行った。 胃、肝臓(右葉、左葉)、膵尾部、門脈(PV)、脾静脈(SpV)、上腸間膜静脈(SMV)、下腸間膜静脈(IMV)のCT値を、それぞれ非造影CTと早期CTで測定した。造影CT値として、非造影CT画像とDCE-CT早期相画像のCT値(Hounsfeld unit値)の差を算出した。これらの測定は、2名の放射線科医がワークステーション(EV InsiteS;PSP社製)で各々行い、各臓器、血管の画像上に円形または楕円形の関心領域(ROI)を設定し、2人の測定した造影CT値の平均を算出した。また、肝偽病変の有無を共同で記録した。肝偽病変は、DCE-CT早期相で、肝左葉内側区の後縁または胆嚢窩の周囲にある高または低吸収領域として定義した。 Mann-Whitney U検定を用いて各臓器と血管ごとの造影CT値を比較した。また、カイ二乗検定を用いてCE-CTC群と対照群の間で肝病変の発症頻度を比較した。 結果: CE-CTC群と対照群の各臓器・血管における造影CT値の平均値の比較は表1のとおりで、CECTC群の肝実質(図1)、PV、SMV・IMV(図2)の造影CT値は、対照群に比べて有意に高かった。一方で、CE-CTC群の胃(図3)、膵尾部、SpVの造影CT値は、対照群に比べて有意に低かった。 肝偽病変は、CE-CTC群の6例(7%)において、肝左葉内側区の後縁(n=5)または胆嚢窩周囲(n=1)に低吸収領域として認められた(図4)が、対照群では認められなかった(p=0.016)。表2は、CE-CTC患者で肝偽病変がある場合とない場合の肝臓の造影CT値を比較した結果で、肝偽病変のあるCE-CTC患者の肝の造影CT値は、肝偽病変のないCE-CTC患者の造影CT値よりも有意に高かった。
Creators : 伊原 研一郎
塩化ベンザルコニウム(BAC)は点眼防腐剤として広く用いられている。しかしながら、BACを含む点眼薬の長期使用は結膜下組織の線維化を誘発し、緑内障濾過手術後の濾過胞維持を困難にさせる。また、濾過胞を構成するテノン嚢線維芽細胞と角膜上皮細胞は涙液を介して互いに影響しているが、BAC曝露時のこの細胞間の反応については明らかにされていない。本研究で我々は、共培養システムを用いて、BACにより誘導されたヒトテノン線維芽細胞(HTF)の筋線維芽細胞転化に対するヒト角膜上皮(HCE)細胞の影響について、免疫蛍光染色ならびにウェスタンブロットで評価した。HTFのα-smooth muscle actin(αSMA)発現は、BAC添加により亢進し、HCE細胞との共培養により抑制された。HTFの培養上清中のIL-10濃度は、BACにより減少し、HCE細胞との共培養により増加した。また、BACによるHTFのαSMA発現亢進およびmyocardin-related transcription factor–A(MRTF-A)の核内移行は、IL-10添加によって抑制された。これらのことから、角膜上皮細胞は涙液中のIL-10濃度を維持し、HTFのMRTF-Aの核移行の抑制を介して、BACによる濾過胞線維化を軽減させる可能性が示唆された。
Creators : 山城 知恵美
活性化転写因子1(ATF1)は、CREB/ATFファミリーの転写因子に属し、精巣で高発現している。しかし、精子形成におけるATF1の役割は未だ確立されていない。本研究では、精子形成におけるATF1の影響を解明することを目的として、マウスにおけるATF1の発現パターンとマウス精巣におけるATF1ノックダウンの影響を調べた。その結果、ATF1はさまざまな臓器で発現しており、精巣では非常に高いレベルで発現していることがわかった。免疫染色により、ATF1はspermatogoniaの核に局在し、増殖細胞核抗原(PCNA)と共局在することがわかった。ATF1欠損マウスでは、精巣の精細管にはすべての発生段階の細胞が存在していたが、spermatocyte以降の分化段階の細胞数は減少していた。同様にPCNAの発現が低下していた。一方で、精細管におけるアポトーシス細胞はほとんど見られなかった。これらの結果は、ATF1が男性生殖細胞の増殖と精子の生成に関与していることを示している。また、男性不妊症における乏精子症、無精子症の発症機序解明の可能性を示唆した。
Creators : 田原 正則
前立腺癌細胞と骨芽細胞の相互作用は、前立腺癌骨転移の発生に不可欠である。近年、新規のアンドロゲン受容体標的薬(ARAT)が、転移性去勢未治療前立腺癌(mCNPC)や非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)に対して承認されているが、これらの薬剤と骨微小環境や腫瘍との関係を調べることは極めて重要である。今回、我々は去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の骨微小環境を模倣した新規のin vitro 3次元微小環境モデルを確立し、アンドロゲン受容体標的薬の薬剤感受性と、アビラテロンとデュタステリドの併用療法の有効性を評価した。キトサンナノ繊維で表面をコートした細胞培養基材を用いて、GFPを導入したC4-2細胞(CRPC細胞株)とRFPを導入したヒト骨髄由来間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞を共培養し、去勢抵抗性前立腺癌の骨微小環境を模倣した。骨芽細胞とC4-2細胞の増殖はCell3 iMager duos(SCREEN)を用いて生細胞のまま解析し、骨芽細胞を維持したまま、最大30日間C4-2細胞の持続的な増殖を観察できた。また、骨芽細胞と共培養したC4-2細胞では、TGF-βの発現が増加し、上皮間葉転換(EMT)が促進されたことから、アンドロゲン受容体標的薬に対する抵抗性が示された。このモデルを用いて、各薬剤のIC50と、アビラテロンとデュタステリドの併用効果を評価した。アビラテロンとデュタステリドの併用療法は、それぞれの単剤投与と比較して、C4-2細胞の増殖を相乗的に抑制し、これは、ARアゴニストである3-keto-5α-abirateroneの減少によるものと考えられた。我々の新規骨微小環境モデルは、前立腺癌の薬剤感受性の評価に有用であり、今後このモデルは、前立腺癌の微小な骨転移から臨床的な骨転移に至るまでの未知のメカニズムの解析に役立つ可能性がある。
Creators : 佐本 征弘
遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:以下HAE)は、全身の様々な部位に突発性、一過性の浮腫を生じる稀な常染色体優性遺伝性疾患である。HAEは、C1 inhibitor(C1INH)をコードするserpin family G member 1(SERPING1)遺伝子の変異により生じるHAEI型およびII型、SERPING1遺伝子以外の遺伝子異常を認めるHAEIII型(HAE with normal C1INH)の3つに分類される。これまでに、SERPING1遺伝子においては多数の病的変異が同定されているが、各変異によるHAEの発症機構については未だ十分に解明されていないのが現状である。 本研究では、以前に我々が報告したHAE I型の患者に同定されたSERPING1遺伝子のミスセンス変異c.449C>T(p.S150F)に関して、詳細な発現・機能解析をin vitroレベルで行った。まず、p.S150F変異型C1INHは細胞内では安定して発現するが、細胞外には全く分泌されないことが示された。次に、変異型C1INHが野生型C1INHの分泌を強力に阻害することが明らかになった。さらなる解析で、野生型C1INHは変異型C1INHとの相互作用によって細胞質内に留め置かれてしまうだけでなく、分解も誘導されることが示唆された。本研究によって、p.S150F変異型C1INHは野生型C1INHに対してdominant-negative効果を発揮することが証明され、それが本遺伝子変異によるHAE I型の主要な発症メカニズムと考えられた。
Creators : 安野 秀一郎
低汗性外胚葉形成不全症 (hypohidrotic ectodermal dysplasia: HED) は、低汗症、乏歯症乏毛症を特徴とする遺伝性疾患である。本疾患の家系のほとんどがX連鎖劣性 (X-linked recessive: XR) の遺伝形式を示すが、稀に常染色体優性 (autosomal dominant: AD) または常染色体劣性 (autosomal recessive: AR) の遺伝形式を示す家系も存在する。XRのHEDはEDA遺伝子の変異で発症し、AD/ARのHEDはEDARまたはEDARADD遺伝子のいずれかの変異で発症する。現在までに、EDAおよびEDARの変異に関してはHEDの発症機序が明らかにされてきたが、EDARADDの変異がどのようにHEDを引き起こすかについての情報は乏しかった。 本研究では、過去にHEDの家系に同定されたEDARADD遺伝子変異のうち、ADの遺伝形式を示すp.D120Y、p.L122R、p.D123Nと、ARの遺伝形式を示すp.E152Kに着目し、培養細胞レベルでさまざまな解析を行った。EDARADDは、シグナル伝達の主要分子であるTRAF6と結合し、最終的に下流のNF-κBを活性化させるが、ADの変異型EDARADDはNF-κBの活性化能を著しく喪失していた。一方で、ARの変異型EDARADDの同活性化能の低下は軽度だった。また、解析した全ての変異型EDARADDは、EDARおよび野生型EDARADDとの親和性を維持していたが、ADの変異型EDARADDは、EDARと野生型EDARADDとの相互作用をdominant negative効果によって阻害することを明らかにした。さらに、ADの変異型EDARADDはTRAF6との結合能を完全に失い、ARの変異EDARADDも野生型に比べてTRAF6との結合能が低下することを示した。 HEDにおける臨床型と遺伝子型の相関関係は未だ明らかではないが、本研究で得られた知見は、EDARADD遺伝子変異とHEDの発症メカニズムの関連性の一端を解明したといえる。
Creators : 浅野 伸幸
【方法】 Wister/STラットに左肺全摘を行うことで気管支断端モデルを作製した。口腔粘膜組織から線維芽細胞を単離し、24wellプレートに5.0×10^5個/wellを播種して72時間培養することで積層線維芽細胞シートを作製した。積層線維芽細胞シートの移植による気管支断端の補強効果を検討するため、術後7、14、28日目に標本を摘出し、細胞シート移植の有無による2群間での気管支断端の変化を肉眼的、組織学的、力学的に比較した。 また、細胞シートによる組織修復のメカニズムを検証するために、創傷治癒に関わる成長因子、サイトカインを細胞シート作製時の培養液上清を用いたEnzyme-linked immunosorbent assay (ELIZA)法でin vitroに測定した。更に、Green fluorescent protein (GFP)遺伝子を導入した線維芽細胞で作製した細胞シートを移植し、移植した細胞の残存性を検証した。 【結果】 作製した積層線維芽細胞シートは直径6mmであった。線維芽細胞が4-5層に積層し、コラーゲン線維を含む細胞外マトリックスを保持した状態で回収された。 非移植群では、術後7、14、28日目のいずれのタイミングでも、気管支断端の閉鎖に用いた縫合糸が露出していた。一方で、移植群の気管支断端は新生組織で広く被覆されていた。なお、細胞シートの移植の有無に関わらず、標本摘出までの期間に気管支断端瘻が生じた個体はなかった。摘出した標本を組織学的に観察すると、非移植群の気管支断端周囲にはごく僅かな結合組織が形成されたのみであったが、移植群では気管支断端周囲に多量の結合組織が形成されていた。また、移植群に生じた気管支断端周囲の結合組織が徐々に成熟すること(Azan染色)、その組織に多くの血管構造が含まれていること(抗CD31抗体による免疫染色)が観察された。新生組織を含む気管支壁の厚み、それに含まれる血管構造を定量化したところ、いずれのタイミングでも移植群の気管支壁が有意に厚く、より多くの血管構造を含んでいた。また、気管支断端の補強効果を力学的に検証するために、気管支断端の耐圧能を評価したところ、非移植群では全ての標本で気管支断端からエアリークが生じた。一方、移植群では300mmHgまでの加圧によってエアリークが生じた標本はなく、その耐圧値は移植群で有意に高かった。 細胞シート作製時の培養液上清を用いたELIZA法では、VEGF、Hepatocyte growth factor (HGF)、C-X-C motif chemokine ligand 1 (CXCL1)、Angiopoietine-2、Monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)、Transforming growth factor beta 1 (TGF-β)が細胞シートから分泌されていることが示された。 GFP遺伝子導入積層線維芽細胞シートを移植したところ、術後3日目の時点ではGFP遺伝子導入線維芽細胞が気管支断端に残存していることが確認されたが、7、14 日目にはGFP遺伝子が発現した細胞は確認されなかった。 【考察】 気管支断端は僅かに新生された結合組織でのみ覆われることが報告されており、本研究においても、非移植群の気管支断端の周囲には僅かな結合組織が形成されたのみであった。一方、積層線維芽細胞シートを移植することにより、気管支断端の周囲に多くの血管構造を含んだ結合組織が形成され、力学的にも気管支断端の強度が増していることが示された。気管支断端瘻は、術後1週間から3ヶ月、特に10日目前後に多く発生するとされていることから、細胞シートの移植後7日目の時点で、気管支壁がより厚く、血管構造に富み、優れた耐圧性を獲得していることは、気管支断端瘻の予防にとって十分に効果的な可能性がある。 積層線維芽細胞シートにより気管支断端が補強される機序を解明するため、細胞シートが分泌する成長因子やサイトカインの測定、GFP遺伝子導入細胞シートを用いた検証を行ったが、移植したGFP遺伝子導入細胞は術後3日目には残存していたが、7日目の時点では確認できなかった。このことは、移植した線維芽細胞が生存、増殖して結合組織を形成するのではなく、細胞シートの移植が宿主の組織治癒を促進させている可能性を示している。VEGF、HGFやTGF-βなどの成長因子、サイトカインが細胞シートから分泌され、これらに宿主に働きかけることで、気管支断端周囲での組織形成や血管新生が促進されたと推察される。 積層線維芽細胞シートの移植後7日目の時点で、気管支断端周囲に血管新生を伴った結合組織が形成され、力学的な補強効果があることが示された。積層線維芽細胞シートの移植は、局所の血流低下による組織治癒遅延が原因とされる気管支断端瘻に対して有効な予防法となる可能性がある。 【結語】 積層線維芽細胞シートの移植による気管支断端の補強効果が示された。本法は、気管支断端瘻の有効な予防法となる可能性がある。
Creators : 吉峯 宗大
Creators : 鹿 安冉
術後膵液瘻は膵臓手術後の重篤な合併症である。これまで多くの予防法が検討されたが、充分な効果は得られておらず、発症率は減少していない。我々の研究室では長年、難治性皮膚潰瘍に対する細胞シート移植を研究し、有効な創傷治癒効果を報告してきた。細胞シート移植は他臓器の創傷治癒にも有効である可能性が予想され、膵液瘻に対する予防法になりうると着想した。本研究では動物の術後膵液瘻モデルを用いて、積層繊維芽シートの自家移植による膵液瘻の予防を検証した。 ラットを全身麻酔下に開腹し、膵管とその周囲の膵組織を切開してラット膵液瘻モデルを作製した。ラット尾より線維芽細胞を単離し、培養して積層繊維芽シートを作製した。自家積層線維芽細胞シートを膵管とその周囲の膵組織切開部に移植し、細胞シート移植による膵液瘻の予防効果を経時的な腹水及び血清中膵酵素値の測定、膵組織の免疫組織化学、定量的PCR法を用いて評価した。 ラット膵液瘻モデルでは術後に腹水中膵酵素値が上昇し、病理組織学的には広範囲の膵組織に炎症と壊死所見を認めた。膵液瘻の発症と膵組織の損傷が示唆された。積層線維芽細胞シートの自家移植により腹水中膵酵素の上昇と膵組織の炎症性変化は有意に抑制され、正常な構造を保つ膵組織が広範囲に温存された。対照群である細胞活性を持たないシートを移植した群と比較して、細胞シート移植群では切開部周辺に線維化と血管新生が惹起されていた。特に切開部付近の膵管はコラーゲン線維で充填、被覆されており、膵液の漏出を抑制する上で重要な機序であったと示唆された。これら線維化と血管新生を介して膵臓への障害が抑制されたと考えられた。 以上から、動物モデルにおいて積層線維芽細胞シートの自家移植は膵液瘻を充分に予防し、膵組織を保護することが示された。上記細胞シートの自家移植は術後膵液瘻を予防する有効な方法となり得ることが示唆された。
Creators : 岩本 圭亮
脳由来神経栄養因子Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)は, 中枢神経内での恒常性や神経発達に重要な役割を果たしており, 神経変性疾患や神経免疫疾患の治療薬への応用が期待されている. しかし, BDNF自体は分子量が大きく, 末梢に投与したBDNFは血液脳関門Blood-brain barrier (BBB)を通過して中枢神経内に作用することができない. 一方で脂溶性化合物はBBBを通過しやすいとされている. そこで, BBBを超えてアストロサイトに作用し, アストロサイトからBDNF分泌を促進する脂溶性化合物の同定を試みた. 温度条件不死化ヒト脳血管内皮細胞 (EC), ペリサイト (PCT), アストロサイト (AST)のBBB in vitroモデルに20種類の脂溶性化合物を反応させ, 48時間後にBDNFの分泌量をELISAで測定した. 脂溶性化合物をEC/AST co-cultureに72時間反応させながら電気抵抗値を測定した. その結果, prostaglandin E2 receptor 4 agonist (EP4) とsphingosinesphingosine-1-phosphate receptor 5 agonist (S1P5)がEC, PCTの有無にかかわらずASTからのBDNFを有意に促進させ, 電気抵抗値の低下は伴わなかった. このことからEP4とS1P5はBBBへ影響を与えずにASTからのBDNF分泌を促進したと考えられた. S1P5は進行型多発性硬化症治療薬であるシポニモドの標的の1つである. シポニモドの神経保護作用はS1P5を介したASTからのBDNFが関与している可能性が考えられた. ASTでのEP4の機能は未だ不明な点が多いが, BDNF分泌を促進することで神経保護に関与する可能性がある. いずれの化合物も治療薬への発展が期待される.
Creators : 藤澤 美和子
背景と目的:同種造血幹細胞移植ではgraft-versus-leukemia (GVL) 効果と呼ばれる抗腫瘍免疫を適切に誘導することが成績向上の鍵となる。しかしGVL効果の増強は移植片対宿主病の重症化にも繋がるため、 同種免疫応答の指標となるバイオマーカーの開発が望まれる。我々は以前、移植処置の前と好中球生着時の血清可溶性インターロイキン-2受容体の比である「sIL-2R index」を定義し、骨髄移植における移植片対宿主病の発症予測マーカーとして有用であることを示した。しかし、骨髄移植とは異なる免疫特性を有する臍帯血移植ではsIL-2R indexも異なる挙動を示す可能性があり、臍帯血移植におけるsIL-2R indexの有用性を検討した。 対象と方法:当院で初回同種造血幹細胞移植として臍帯血を施行した31症例を対象とした。sIL-2R indexを算出し、患者背景や移植成績との関連を後方視的に解析した。 結果:移植後3年の再発率は、sIL-2R index 3.7以上の群で有意に低下した(12.8% vs 50.0%; p = 0.04)。それに伴い移植後3年の全生存率はsIL-2R index 3.7以上の群で有意に良好であった(79.8% vs 20.0%; p < 0.01)。sIL-2R indexには移植後1日目から好中球生着日までの累積ステロイド投与量が影響しており、ステロイドの使用理由は生着前免疫反応に対する治療であった。なお骨髄移植とは異なり、臍帯血移植ではsIL-2R indexと急性移植片対宿主病の発症率との有意な関連性は認めなかった。 結語:sIL-2R indexは臍帯血移植後の予後予測マーカーになり得る。sIL-2R indexはGVL効果を反映する可能性があるが、更なる検証が必要である。
Creators : 梶邑 泰子
心臓突然死(sudden cardiac death: SCD)は心サルコイドーシス患者における主要な死亡原因であり、SCDの大部分は心室性不整脈が原因である。これまでのところ、心サルコイドーシス患者の致死的不整脈とSCDを予測するバイオマーカーは報告されていない。本研究では心サルコイドーシス患者における持続性心室頻拍(sustained ventricular tachycardia: sVT)およびSCDを予測する因子は何であるかを調査した。連続89症例において心サルコイドーシス患者の炎症活動性を反映する酸化的DNA損傷のマーカーである尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(尿中8-OHdG)、他のバイオマーカー、心機能の指標、腎機能を測定した。追跡期間中、15人の患者はsVT(N = 12)またはSCD(N= 3)を示した。COX比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、尿中8-OHdG濃度および心室瘤(ventricular aneurysm: VA)の存在がsVT/SCDの独立した予測因子であることが示された。尿中8-OHdGおよびVAの存在は、心サルコイドーシス患者の初回のsVT/SCDの強力な予測因子であり、心臓イベントのリスクの層別化に有用である。さらに、これらはVT基質についてのさらなる情報を与えるものであることが示唆された。
Creators : 吉冨 亮介
中等度の冠動脈狭窄病変において、血行再建治療を延期(defer)し薬物療法を行った場合、薬物療法中に心血管イベント発症抑制効果を評価する代用評価法があれば有用である。冠動脈イメージングでプラーク退縮と安定化を調べることで薬物治療効果を評価するのと同様に、定量的冠血流比(QFR)の経時的変化は、deferした中等度狭窄に対する薬物治療効果を評価する代用評価法として有用な可能性がある。本研究では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に未治療血管に冠動脈中等度残存狭窄を有し二次予防として薬物治療を受けた患者で、deferした中等度残存狭窄のQFRの経時的変化を調査した。山口大学医学部附属病院と萩市民病院でPCIを施行され、PCI(ベースライン[BL])時に未治療血管に中程度狭窄を有し、6~18ヶ月後にフォローアップ(FU)の冠動脈造影が施行された患者を対象とした。52人の患者でBLとFUの両方で未治療血管の中程度狭窄のQFRの解析が可能であった。BL時にQFRの中央値は0.83(IQR, 0.69, 0.89)、FU時にQFRの中央値は0.80(IQR, 0.70, 0.86)であった。QFRの増加した患者(QFR増加群)は21人で、QFRの減少した患者(QFR減少群)は31人であった。経時的なQFR変化の中央値はQFR増加群で0.05(IQR, 0.03, 0.09)、QFR減少群で-0.05(IQR, -0.07, -0.03)であった。単変量および多変量解析でQFRの増加に影響する因子を解析したところ、FU時のLDLコレステロール値と相関を認めた(OR 0.95, 95% CI [0.91, 0.98], p=0.001)。QFRの経時的変化の評価は、deferした中程度狭窄を有する患者に対する薬物治療効果を判定する代用評価法として有用性が示唆された。
Creators : 竹中 仁
背景:顕微鏡的多発血管炎 (MPA) は全身臓器が障害される疾患である。しかしながら、MPA患者における心臓超音波検査(心エコー図検査)における指標の特徴については不明な点が多い。 目的:本研究は、単施設後ろ向き研究で、ステロイド療法の新規導入または再導入後2週間以内に心エコーを行ったMPA患者15名を対象とし、その心エコー所見の特徴について検討することを研究の目的とした。30人の年齢・性別をマッチさせた心疾患のないコントロール群と比較検討した。 方法と結果:左室径、左室駆出率、拡張早期僧帽弁輪最大移動速度 (e’) に2群間で有意差は認めなかった。一方、MPA群では左房径、左房容積係数が有意に高く、左室流入血流速波形 (TMF) の早期拡張期充満速度(E波)と肺静脈流入拡張期血流速度 (D波) の高さ、三尖弁における収縮期右室-右房最大圧較差も有意に高く、TMFのE波の減速時間 (DCT) は短縮していた。血清CRPはTMFのE波高、E/A比およびDCTと相関が見られた。今回の研究では、MPA患者におけるe’の有意な低下がみられなかったことから、左室弛緩能の低下よりはむしろ左室スティフネスの上昇によって左室拡張機能低下が生じ、結果として左房拡大が生じている可能性が示唆された。 結語:急性期MPA患者では左室拡張機能低下によると考えられる左房拡大を生じていた。MPA患者、特に強い炎症反応を伴う患者では、心機能評価を行うことが重要であることが示唆された。
Creators : 木下 奈津
【背景】全層性治癒(Transmural healing healing; TH)は、クローン病の新たな治療標的として注目されているが、日本ではTHに関する臨床データはほとんどない。我々は、クローン病のモニタリング法として低被曝線量CTエンテログラフィ(CTE)を導入し、CTEによるTHの評価をレトロスペクティブに検討した。【方法】2009年 1月から2021年3月までに当院で低被曝線量CTEを施行したクローン病患者のうち、2週間以内に大腸内視鏡検査またはバルーン内視鏡検査を施行した122例を対象とした。放射線検査と内視鏡検査の結果は、それぞれ放射線科医と消化器内視鏡医が独立して検討した。CTEと内視鏡検査の診断の一致率を算出した。【結果】26名(21.3%)のクローン病患者がTHを達成し、カッパ係数は0.743と2人の放射線科医の間でかなりの一致が見られた。TH群と非TH群の比較では、クローン病活動指数(Crohn’s Disease Activity Index ; CDAI )(P値 = 0.02)、内視鏡的治癒率(P値 < 0.001)、血清アルブミン(P値 = 0.043)、血清C反応性蛋白(P値 = 0.018)に有意差が認められた。122名の患者のうち、69名(56.5%)はCTEの診断と内視鏡検査が一致し、22名(18.0%)はTHと内視鏡の両方の治癒を達成した。【結論】本研究は、日本における低被曝線量CTEによるクローン病のリアルワードデータを示すものである。本研究で用いたTHの基準はカッパ係数が高く、多くの施設で再現性を持って用いることができると考えられる。
Creators : 藤村 寛之
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