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Epidemiological Studies of the Possible Relationship Between Soil and Mortalities from Kidney Disease : Part 2. Relationship Between Geotectonic Division and Mortalities from Kidney Disease in Japan

山口医学 Volume 7 Issue 3 Page 224-235
published_at 1958-06
Title
腎疾患死亡率と土壌との関連性に就ての疫学的研究 : 第2篇 本邦腎疾患死亡率の地域的差異と地体区分との関係
Epidemiological Studies of the Possible Relationship Between Soil and Mortalities from Kidney Disease : Part 2. Relationship Between Geotectonic Division and Mortalities from Kidney Disease in Japan
Creators Nishigauchi Hajime
Source Identifiers
本邦腎疾患訂正死亡率(昭和22~25)の地域的差異と生活環境との関係を、医学的生態学的な立場から総合的に考察し、以下述べるが如き知見を認めた。(A)本症死亡率の地域差は大勢に於いて、本邦の「地体構造区分」と相一致し、東北日本の内帯最も死亡率高く、同外帯これに次ぎ、西南日本の外帯はこれより低く同内帯最も低率である(第1図、第1表参照)。(B)而して、本邦の地体構造区分は気候、地形、地質等の物理的環境と農業生産諸条件を中心とした生物学乃至社会的環境要因の綜合たる事実に着目し、夫々の環境要因との関係を検討するに次の如き事項が認められる。①本邦死亡率の地域差と気候要素との関係は、(a)一般に各気候要素とも地体構造区分上、東北日本と西南日本の諸県に大別されて、相関傾向や相関度が異なり、特に土壌の生成と植生の育成に重大な関係のある年間雨量温度係数乃至N-S係数に於いて、斯る傾向が顕著である。(b)而して、年平均気温14±1℃、年気温較差32±1℃、有霜日数210±10日の範囲にあって、相対的に降水量や降水日数が少なく、日照時数が長く、湿度の低い近畿、中国、四国地方の瀬戸内海沿岸諸県は特に死亡率が低率であることを特徴とする。(c)このことは、本症死亡率と気候要素との関係は、気候の直接的な意義よりも、気候が土壌の生成や植生の育成と重大な関係があって、そのことが二次的に本症死亡率と関係するというが如き間接的な意義がより大なることを示唆するものの如く解される(第2図、第2表参照)。②尚又、本症死亡率の地域差と地質、地形及び土壌との間にも夫々密接な関係があって、(a)地質年代の概して新しい第4紀層(火山灰洪積層乃至沖積層)、(九州並に関東諸県)や火山岩系の第3紀層地域(東北諸県)に死亡率高く、地質年代の古い古生層乃至中生層、特に深成岩地域(近畿、中国、四国諸県)に死亡率低き傾向が看取される。この場合、当該地域を灌漑する河川水系の上流の受水地域の地質との関係をあわせ考察した場合、或はまた、地質のみならず土性との関係を併せ参照した場合に、上述の死亡率と地質との関係は一層明瞭となる傾向がある。(b)更に又、本症死亡率の地域差と土壌反応並に腐植含有量との間にも夫々密接な関係があり、一般に酸性土壌面積比率(Y_1≧1)が大で、尚且、腐植含有量5%以上の水田面積比率の大なる地域は、死亡率が特に高く、水田酸性土壌面積比率が少なく、尚且、腐植含有量少なき地域は、一般に死亡率が低く、森林褐色土壌地域は、水田酸性土壌面積比率は少ないが、特に腐植含有量が甚多量で本症死亡率も概して高率である(第3~4図、第3表参照)。③而して、本症死亡率の地域差と農業生産諸条件を中心とした生物学的乃至社会的要因との間にも、夫々密接な関係があって(a)全国的に見れば、経済的文化的条件に恵まれざる地域ほど死亡率高き傾向が看取される。而して、これを農業生産条件より見れば専業農業者が相対的に多く、農家一戸当の耕地面積が広く、人口1人当の米麦の生産量、特に米反当収量は多くとも、蔬菜栽培が少なく、漁獲量も少ない地域程死亡率が高い傾向が認められる(第5図、第4表)。(b)然し乍ら、農業生産や経済的条件との間接的関係のみでなく、如何なる農産物がどの程度に生産されるが如き土地条件下にあるかという土壌を中心とした物理的環境の如何と、直接的な関係も少なくないものの如く解される。④更に又、この場合特に注目すべき点は、本症死亡率と水稲反当収量との関係であって、(a)全国的に見た本症死亡率の年次的推移と逐年の水稲反当収量との関係は、有機質肥料時代(明冶大正時代)には順相関、無機質肥料時代(昭和時代)では逆相関。(b)更に又、都道府県別に見た相対的本症死亡率の時代的変動と、水稲反当収量増加率との関係も亦有機質肥料時代は順相関。無機質肥料時代では逆相関関係にあって、肥料年代区分に従って両者の相関傾向が相反している(第7~9図参照)。⑤更に又、本症死亡率と施肥料との間にも密接な関係があって、(a)全国的に見た本症死亡率の年次的推移と有機質肥料の逐年の施肥料とは順、無機質肥料の逐年の施肥料とは逆相関。(b)また、都道府県別に見た相対的本症死亡率の時代的変動と有機質肥料との関係は、資料無きため詳でないが、無機質肥料の施肥料とは逆相関関係にあって、本症死亡率と米反当収量との相関関係と全くその軌を同じくしている(第8図、第10図参照)。⑥本症死亡率の地域的差異と脳卒中死亡率とは順相関関係にあり、気候要素並に農業生産条件を中心とした、生物学的社会的要因との相関関係も亦両疾患は、大勢に於いて全く同様の関係にある(第2表、第4表参照)。⑦要之、本症死亡率の地理的現象並に時間的現象に認められる諸種の特性と生活環境諸要因との関係は、結局「土地」を農業生産要素と見做した場合、腎疾患、特に慢性腎疾患の発症と死亡とが直接間接土壌と密接な関連性のあることを意味するものと解されよう。
Subjects
医学 ( Other)
Languages jpn
Resource Type journal article
Publishers 山口県立医科大学医学会
Date Issued 1958-06
File Version Not Applicable (or Unknown)
Access Rights metadata only access
Relations
[ISSN]0513-1731
[NCID]AN00243156
Schools 山口県立医科大学