Fault geometry and the geotectonic evolution of the median tectonic line in Shikoku, southwest Japan
Title
四国北西部における中央構造線の地質構造と断層発達史
Fault geometry and the geotectonic evolution of the median tectonic line in Shikoku, southwest Japan
Degree
博士(理学)
Dissertation Number
創科博甲第98号
(2022-09-27)
Degree Grantors
Yamaguchi University
[kakenhi]15501
grid.268397.1
Abstract
中央構造線(MTL; Median Tectonic Line)は、西南日本を東西に横断する延長約1000kmの断層である。愛媛県西条市付近には、MTLは三波川変成帯と和泉層群を境する構造線としての低角度な断層帯(MTLTB; MTL inactive terrane boundary)と、この断層の北側に並走する活断層としての高角度な断層帯(MTLAFZ; MTL active fault zone)がある。地表でのMTLAFZの傾斜角度を明らかにするために、川上断層を横断する延長約10m、深さ約2mのトレンチ調査を行った。また、地表部で約10mの間隔で並走する両断層の地下での接合関係と断層面の傾斜角度を明らかにするために、断層を横断する80-330mの6本のボーリング掘削を実施した。更に、より広範囲の断層構造や地盤の物性を把握するために延長1200mの反射法地震探査と延長500mの高密度電気探査を実施した。採取した断層試料を用いて断層岩の化学分析、変形構造記載、カルサイトの双晶密度の測定、断層の変形フェーズの解析を行い、低角度横ずれ断層のメカニズムや断層活動史を明らかにした。
トレンチ調査、ボーリング調査、高密度電気探査により、地表部で北方へ約70゜の角度で傾斜する川上断層が、地下で北方へ30゜の角度で傾斜するMTLTBに収れんすることが示唆され、地下のMTLTBは活断層であることが分かった。MTLTBの上盤に分布する小断層の卓越した和泉層群の比抵抗値は、主破砕帯の割れ目の少ない安山岩ブロックと推定される高比抵抗部を除き、断層下盤に分布する堅硬な三波川変成岩類の比抵抗値よりも低い値を示した。また、断層に沿って深部流体が上昇していると推定される低比抵抗帯が確認された。反射法地震探査では、MTLTBに相当する北方へ約30゜の角度で傾斜する明瞭な反射面が確認され、より深部まで断層が延長することが分かった。主破砕帯を構成する蛇紋岩中の鉱物のEPMA分析結果によると、マントル起源のマグネシオクロマイトを含むことが分かった。既往の深部地震探査の結果は、MTLの深部延長が下部地殻まで達しいることを示しているが、これにより、MTLTBの延長がマントルまで達し、蛇紋岩が断層変位とダイアピルによって表層部まで上昇してきたことが示唆された。MTLTBは断層面の傾斜角度が低角度であり、本来は横ずれ断層として動きにくいと考えられる。MTLTBの断層ガウジや主破砕帯に大量の層状珪酸塩鉱物が存在することや断層沿いの深部流体の存在は、断層のせん断強度を低下させる要因となり、低角度の断層でも横ずれ運動が可能になったと考えられる。カルサイトの双晶密度から求めたMTLTBを横断する歪み分布は断層から直線的で緩やかに低下する傾向を示し、断層のせん断強度が低下していることを示唆する。
変形フェーズの解析では、MTLTBとMTLAFZの幾何学的な特徴やそれぞれの断層と地層との接合関係、断層の変位センス等の構造地質学的特徴、古応力場の解析等に基づいて変形フェーズを古いほうからD1~D4の4つに定義した。D1フェーズはNNE-SSW圧縮の応力場の変形であり始新世中期(47 -46 Ma) 頃に断層の上盤が西方へ変位した左横ずれセンスの運動、D2フェーズはE-W伸張の応力場の変形であり中新世中期(15 -14 Ma) 頃に断層の上盤が北方へ変位した正断層センスの運動、D3フェーズはNNW-SSE圧縮の応力場の変形であり中新世中期から鮮新世後期(14-3Ma) 頃に断層上盤が南方へ変位した逆断層運動、D4フェーズはWNW-ESE圧縮の応力場の変形であり鮮新世後期から更新世前期(3-1 Ma) 以降に断層上盤が東方へ変位した右横ずれ運動である。
西南日本を横断する中央構造線沿いには多くの都市が分布しており、MTLの傾斜角度等の幾何学的な情報は、地震災害分布や地震の規模等を予測する上で重要パラメータになると考えられる。また、MTLAFZは地下数km以内の浅い深度でMTLTBに収れんすると考えられ、従来、非活動的な地質断層として考えられていたMTLTBが、将来、活断層として変位する可能性があることを示唆している。
トレンチ調査、ボーリング調査、高密度電気探査により、地表部で北方へ約70゜の角度で傾斜する川上断層が、地下で北方へ30゜の角度で傾斜するMTLTBに収れんすることが示唆され、地下のMTLTBは活断層であることが分かった。MTLTBの上盤に分布する小断層の卓越した和泉層群の比抵抗値は、主破砕帯の割れ目の少ない安山岩ブロックと推定される高比抵抗部を除き、断層下盤に分布する堅硬な三波川変成岩類の比抵抗値よりも低い値を示した。また、断層に沿って深部流体が上昇していると推定される低比抵抗帯が確認された。反射法地震探査では、MTLTBに相当する北方へ約30゜の角度で傾斜する明瞭な反射面が確認され、より深部まで断層が延長することが分かった。主破砕帯を構成する蛇紋岩中の鉱物のEPMA分析結果によると、マントル起源のマグネシオクロマイトを含むことが分かった。既往の深部地震探査の結果は、MTLの深部延長が下部地殻まで達しいることを示しているが、これにより、MTLTBの延長がマントルまで達し、蛇紋岩が断層変位とダイアピルによって表層部まで上昇してきたことが示唆された。MTLTBは断層面の傾斜角度が低角度であり、本来は横ずれ断層として動きにくいと考えられる。MTLTBの断層ガウジや主破砕帯に大量の層状珪酸塩鉱物が存在することや断層沿いの深部流体の存在は、断層のせん断強度を低下させる要因となり、低角度の断層でも横ずれ運動が可能になったと考えられる。カルサイトの双晶密度から求めたMTLTBを横断する歪み分布は断層から直線的で緩やかに低下する傾向を示し、断層のせん断強度が低下していることを示唆する。
変形フェーズの解析では、MTLTBとMTLAFZの幾何学的な特徴やそれぞれの断層と地層との接合関係、断層の変位センス等の構造地質学的特徴、古応力場の解析等に基づいて変形フェーズを古いほうからD1~D4の4つに定義した。D1フェーズはNNE-SSW圧縮の応力場の変形であり始新世中期(47 -46 Ma) 頃に断層の上盤が西方へ変位した左横ずれセンスの運動、D2フェーズはE-W伸張の応力場の変形であり中新世中期(15 -14 Ma) 頃に断層の上盤が北方へ変位した正断層センスの運動、D3フェーズはNNW-SSE圧縮の応力場の変形であり中新世中期から鮮新世後期(14-3Ma) 頃に断層上盤が南方へ変位した逆断層運動、D4フェーズはWNW-ESE圧縮の応力場の変形であり鮮新世後期から更新世前期(3-1 Ma) 以降に断層上盤が東方へ変位した右横ずれ運動である。
西南日本を横断する中央構造線沿いには多くの都市が分布しており、MTLの傾斜角度等の幾何学的な情報は、地震災害分布や地震の規模等を予測する上で重要パラメータになると考えられる。また、MTLAFZは地下数km以内の浅い深度でMTLTBに収れんすると考えられ、従来、非活動的な地質断層として考えられていたMTLTBが、将来、活断層として変位する可能性があることを示唆している。
Creators
Miyawaki Masahiro
Languages
jpn
Resource Type
doctoral thesis
File Version
Version of Record
Access Rights
open access