Psychological Analyses on a Case of Aphasia
山口医学 Volume 7 Issue 3
Page 342-346
published_at 1958-06
Title
失語症の症例分析
Psychological Analyses on a Case of Aphasia
Creators
Harada Tadaaki
Source Identifiers
本症例の失語症状を要約すると、声音言語では、特に自発言語が強く障碍され、言語模倣も損なわれているが、理解は殆ど健全に保たれている。書字言語では、自発書字、書き取り書字、読書ともに障碍され、錯書、錯読が認められるが、模倣書字は十分可能である。また認識及び行為の障碍は極めて軽度であった。これ等症状の成因については、臨床症状から憶測するの域を出ないが、本人が右利きであるので、言語中枢は左半球にある。同時に一過性の右手の附随を伴ったこと及び初診時右側の腱反射等が上・下肢共に昂進している点から考えて、左側中脳動脈の灌流区域の一定部位に栓塞を来したということが、最も大きい可能性で考えられる。その際の栓子が、本患者の梅毒性心疾患に起因するものではないかということは、充分に疑われるが、断定するのは避けたい。失語症理論は、Wernicke及びLichtheimの言語模式に出発する古典的な記述より始まり、或いはその理論を支持するもの、或いはそれに強く対立した批判的な見解がある。本稿の冒頭に於いて、失語症の症状を「単に言語的見地のみでなく」と述べたが、単に心理的概念と解剖学的表現との機械的結合による理論を避け、Headで代表される純臨床的な分類や、Krollの中枢局在を成程度否定する見解等等数多くの諸理論をを綜合して考えるときわれわれが遭遇する失語症の多様性からすると、それの何れを採択すべきかに迷わされる。しかし、絶対的な分類はないにしても、分類することにより現在の症状を簡単に範疇化することが出来る。完全なる失語症理論の確立していない現在、諸説に類型化することで満足する他はない。本症例は、Wernicke及びLichtheimの皮質性運動性失語症、またはBroca氏失語症に殆ど完全に類型化し得る。またHeadの発語性失語症、Krollの前頭葉性失語症等に類型し得るものと考える。
Languages
jpn
Resource Type
journal article
Publishers
山口県立医科大学医学会
Date Issued
1958-06
File Version
Not Applicable (or Unknown)
Access Rights
metadata only access
Relations
[ISSN]0513-1731
[NCID]AN00243156
Schools
山口県立医科大学