山口医学

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山口医学 Volume 58 Issue 2
published_at 2009-04-30

A case of small bowel obstruction caused by food in plastic wrap

食品用ラップフィルムに包まれた食物による食餌性イレウスの1例
Eto Ryuichi
Shimizu Ryoichi
Ozasa Hiroaki
Kondo Hiroshi
Tanaka Hiroko
Kitase Akira
fulltext
981 KB
B030058000202.pdf
Descriptions
食品用ラップフィルムに包まれた米飯による食餌性イレウスの1例を経験した.症例は72歳女性,腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診しイレウスの診断で入院となった.入院時のCTで小腸内に食物と思われる陰影があり,イレウス管挿入にて保存的加療を行っていたが第10病日外科紹介となり,翌日手術を行った.開腹時小腸内に円筒形の内容物がみられ,小腸に切開を加え内容を取り出したところ,粥状のものがラップフィルムに包まれたものであった.食餌性イレウスの病因としては(1)精神疾患有病者などの患者自身に問題があるもの,(2)歯牙欠損,義歯や胃切後状態など消化機能に問題があるもの,(3)腸管狭窄,癒着などの腸管通過状況に問題があるもの,(4)摂取した食物に問題があるもの,などに分類されている.本症例には明らかな認知症はなく,また部分義歯があるものの咀嚼にも問題はなかったが,ラップフィルムに包まれた米飯を誤飲した際自覚がなく,本症は一時的な不注意が原因と考えられた.近年CTの精度が向上し術前から診断される食餌性イレウスの報告が増加している.特徴のある所見として気泡が均等に集簇する食物塊が描出され,本症例も術前診断にCTは有用であった.食餌性イレウスに対する手術の方法としては開腹し腸管内の食物を用手的に大腸内に送りこむ方法が行われるが,本症例の様にそれができないときは,浮腫や損傷のない部位まで食物を腸管内で移動させ,腸管に切開を加え摘出する必要がある.術前診断が確定していれば,手術は低侵襲で行うことができ,イレウスの術前検査として病態のみならず原因検索にもCTは有用で,手術を低侵襲で行うことにも寄与した.
Creator Keywords
食餌性イレウス
腹部CT検査
minimally invasive surgery
食品用ラップフィルム