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遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:以下HAE)は、全身の様々な部位に突発性、一過性の浮腫を生じる稀な常染色体優性遺伝性疾患である。HAEは、C1 inhibitor(C1INH)をコードするserpin family G member 1(SERPING1)遺伝子の変異により生じるHAEI型およびII型、SERPING1遺伝子以外の遺伝子異常を認めるHAEIII型(HAE with normal C1INH)の3つに分類される。これまでに、SERPING1遺伝子においては多数の病的変異が同定されているが、各変異によるHAEの発症機構については未だ十分に解明されていないのが現状である。 本研究では、以前に我々が報告したHAE I型の患者に同定されたSERPING1遺伝子のミスセンス変異c.449C>T(p.S150F)に関して、詳細な発現・機能解析をin vitroレベルで行った。まず、p.S150F変異型C1INHは細胞内では安定して発現するが、細胞外には全く分泌されないことが示された。次に、変異型C1INHが野生型C1INHの分泌を強力に阻害することが明らかになった。さらなる解析で、野生型C1INHは変異型C1INHとの相互作用によって細胞質内に留め置かれてしまうだけでなく、分解も誘導されることが示唆された。本研究によって、p.S150F変異型C1INHは野生型C1INHに対してdominant-negative効果を発揮することが証明され、それが本遺伝子変異によるHAE I型の主要な発症メカニズムと考えられた。
Creators : 安野 秀一郎 Dissertation Number : 医博甲第1641号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
低汗性外胚葉形成不全症 (hypohidrotic ectodermal dysplasia: HED) は、低汗症、乏歯症乏毛症を特徴とする遺伝性疾患である。本疾患の家系のほとんどがX連鎖劣性 (X-linked recessive: XR) の遺伝形式を示すが、稀に常染色体優性 (autosomal dominant: AD) または常染色体劣性 (autosomal recessive: AR) の遺伝形式を示す家系も存在する。XRのHEDはEDA遺伝子の変異で発症し、AD/ARのHEDはEDARまたはEDARADD遺伝子のいずれかの変異で発症する。現在までに、EDAおよびEDARの変異に関してはHEDの発症機序が明らかにされてきたが、EDARADDの変異がどのようにHEDを引き起こすかについての情報は乏しかった。 本研究では、過去にHEDの家系に同定されたEDARADD遺伝子変異のうち、ADの遺伝形式を示すp.D120Y、p.L122R、p.D123Nと、ARの遺伝形式を示すp.E152Kに着目し、培養細胞レベルでさまざまな解析を行った。EDARADDは、シグナル伝達の主要分子であるTRAF6と結合し、最終的に下流のNF-κBを活性化させるが、ADの変異型EDARADDはNF-κBの活性化能を著しく喪失していた。一方で、ARの変異型EDARADDの同活性化能の低下は軽度だった。また、解析した全ての変異型EDARADDは、EDARおよび野生型EDARADDとの親和性を維持していたが、ADの変異型EDARADDは、EDARと野生型EDARADDとの相互作用をdominant negative効果によって阻害することを明らかにした。さらに、ADの変異型EDARADDはTRAF6との結合能を完全に失い、ARの変異EDARADDも野生型に比べてTRAF6との結合能が低下することを示した。 HEDにおける臨床型と遺伝子型の相関関係は未だ明らかではないが、本研究で得られた知見は、EDARADD遺伝子変異とHEDの発症メカニズムの関連性の一端を解明したといえる。
Creators : 浅野 伸幸 Dissertation Number : 医博甲第1640号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
【方法】 Wister/STラットに左肺全摘を行うことで気管支断端モデルを作製した。口腔粘膜組織から線維芽細胞を単離し、24wellプレートに5.0×10^5個/wellを播種して72時間培養することで積層線維芽細胞シートを作製した。積層線維芽細胞シートの移植による気管支断端の補強効果を検討するため、術後7、14、28日目に標本を摘出し、細胞シート移植の有無による2群間での気管支断端の変化を肉眼的、組織学的、力学的に比較した。 また、細胞シートによる組織修復のメカニズムを検証するために、創傷治癒に関わる成長因子、サイトカインを細胞シート作製時の培養液上清を用いたEnzyme-linked immunosorbent assay (ELIZA)法でin vitroに測定した。更に、Green fluorescent protein (GFP)遺伝子を導入した線維芽細胞で作製した細胞シートを移植し、移植した細胞の残存性を検証した。 【結果】 作製した積層線維芽細胞シートは直径6mmであった。線維芽細胞が4-5層に積層し、コラーゲン線維を含む細胞外マトリックスを保持した状態で回収された。 非移植群では、術後7、14、28日目のいずれのタイミングでも、気管支断端の閉鎖に用いた縫合糸が露出していた。一方で、移植群の気管支断端は新生組織で広く被覆されていた。なお、細胞シートの移植の有無に関わらず、標本摘出までの期間に気管支断端瘻が生じた個体はなかった。摘出した標本を組織学的に観察すると、非移植群の気管支断端周囲にはごく僅かな結合組織が形成されたのみであったが、移植群では気管支断端周囲に多量の結合組織が形成されていた。また、移植群に生じた気管支断端周囲の結合組織が徐々に成熟すること(Azan染色)、その組織に多くの血管構造が含まれていること(抗CD31抗体による免疫染色)が観察された。新生組織を含む気管支壁の厚み、それに含まれる血管構造を定量化したところ、いずれのタイミングでも移植群の気管支壁が有意に厚く、より多くの血管構造を含んでいた。また、気管支断端の補強効果を力学的に検証するために、気管支断端の耐圧能を評価したところ、非移植群では全ての標本で気管支断端からエアリークが生じた。一方、移植群では300mmHgまでの加圧によってエアリークが生じた標本はなく、その耐圧値は移植群で有意に高かった。 細胞シート作製時の培養液上清を用いたELIZA法では、VEGF、Hepatocyte growth factor (HGF)、C-X-C motif chemokine ligand 1 (CXCL1)、Angiopoietine-2、Monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)、Transforming growth factor beta 1 (TGF-β)が細胞シートから分泌されていることが示された。 GFP遺伝子導入積層線維芽細胞シートを移植したところ、術後3日目の時点ではGFP遺伝子導入線維芽細胞が気管支断端に残存していることが確認されたが、7、14 日目にはGFP遺伝子が発現した細胞は確認されなかった。 【考察】 気管支断端は僅かに新生された結合組織でのみ覆われることが報告されており、本研究においても、非移植群の気管支断端の周囲には僅かな結合組織が形成されたのみであった。一方、積層線維芽細胞シートを移植することにより、気管支断端の周囲に多くの血管構造を含んだ結合組織が形成され、力学的にも気管支断端の強度が増していることが示された。気管支断端瘻は、術後1週間から3ヶ月、特に10日目前後に多く発生するとされていることから、細胞シートの移植後7日目の時点で、気管支壁がより厚く、血管構造に富み、優れた耐圧性を獲得していることは、気管支断端瘻の予防にとって十分に効果的な可能性がある。 積層線維芽細胞シートにより気管支断端が補強される機序を解明するため、細胞シートが分泌する成長因子やサイトカインの測定、GFP遺伝子導入細胞シートを用いた検証を行ったが、移植したGFP遺伝子導入細胞は術後3日目には残存していたが、7日目の時点では確認できなかった。このことは、移植した線維芽細胞が生存、増殖して結合組織を形成するのではなく、細胞シートの移植が宿主の組織治癒を促進させている可能性を示している。VEGF、HGFやTGF-βなどの成長因子、サイトカインが細胞シートから分泌され、これらに宿主に働きかけることで、気管支断端周囲での組織形成や血管新生が促進されたと推察される。 積層線維芽細胞シートの移植後7日目の時点で、気管支断端周囲に血管新生を伴った結合組織が形成され、力学的な補強効果があることが示された。積層線維芽細胞シートの移植は、局所の血流低下による組織治癒遅延が原因とされる気管支断端瘻に対して有効な予防法となる可能性がある。 【結語】 積層線維芽細胞シートの移植による気管支断端の補強効果が示された。本法は、気管支断端瘻の有効な予防法となる可能性がある。
Creators : 吉峯 宗大 Dissertation Number : 医博甲第1639号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
術後膵液瘻は膵臓手術後の重篤な合併症である。これまで多くの予防法が検討されたが、充分な効果は得られておらず、発症率は減少していない。我々の研究室では長年、難治性皮膚潰瘍に対する細胞シート移植を研究し、有効な創傷治癒効果を報告してきた。細胞シート移植は他臓器の創傷治癒にも有効である可能性が予想され、膵液瘻に対する予防法になりうると着想した。本研究では動物の術後膵液瘻モデルを用いて、積層繊維芽シートの自家移植による膵液瘻の予防を検証した。 ラットを全身麻酔下に開腹し、膵管とその周囲の膵組織を切開してラット膵液瘻モデルを作製した。ラット尾より線維芽細胞を単離し、培養して積層繊維芽シートを作製した。自家積層線維芽細胞シートを膵管とその周囲の膵組織切開部に移植し、細胞シート移植による膵液瘻の予防効果を経時的な腹水及び血清中膵酵素値の測定、膵組織の免疫組織化学、定量的PCR法を用いて評価した。 ラット膵液瘻モデルでは術後に腹水中膵酵素値が上昇し、病理組織学的には広範囲の膵組織に炎症と壊死所見を認めた。膵液瘻の発症と膵組織の損傷が示唆された。積層線維芽細胞シートの自家移植により腹水中膵酵素の上昇と膵組織の炎症性変化は有意に抑制され、正常な構造を保つ膵組織が広範囲に温存された。対照群である細胞活性を持たないシートを移植した群と比較して、細胞シート移植群では切開部周辺に線維化と血管新生が惹起されていた。特に切開部付近の膵管はコラーゲン線維で充填、被覆されており、膵液の漏出を抑制する上で重要な機序であったと示唆された。これら線維化と血管新生を介して膵臓への障害が抑制されたと考えられた。 以上から、動物モデルにおいて積層線維芽細胞シートの自家移植は膵液瘻を充分に予防し、膵組織を保護することが示された。上記細胞シートの自家移植は術後膵液瘻を予防する有効な方法となり得ることが示唆された。
Creators : 岩本 圭亮 Dissertation Number : 医博甲第1638号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
脳由来神経栄養因子Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)は, 中枢神経内での恒常性や神経発達に重要な役割を果たしており, 神経変性疾患や神経免疫疾患の治療薬への応用が期待されている. しかし, BDNF自体は分子量が大きく, 末梢に投与したBDNFは血液脳関門Blood-brain barrier (BBB)を通過して中枢神経内に作用することができない. 一方で脂溶性化合物はBBBを通過しやすいとされている. そこで, BBBを超えてアストロサイトに作用し, アストロサイトからBDNF分泌を促進する脂溶性化合物の同定を試みた. 温度条件不死化ヒト脳血管内皮細胞 (EC), ペリサイト (PCT), アストロサイト (AST)のBBB in vitroモデルに20種類の脂溶性化合物を反応させ, 48時間後にBDNFの分泌量をELISAで測定した. 脂溶性化合物をEC/AST co-cultureに72時間反応させながら電気抵抗値を測定した. その結果, prostaglandin E2 receptor 4 agonist (EP4) とsphingosinesphingosine-1-phosphate receptor 5 agonist (S1P5)がEC, PCTの有無にかかわらずASTからのBDNFを有意に促進させ, 電気抵抗値の低下は伴わなかった. このことからEP4とS1P5はBBBへ影響を与えずにASTからのBDNF分泌を促進したと考えられた. S1P5は進行型多発性硬化症治療薬であるシポニモドの標的の1つである. シポニモドの神経保護作用はS1P5を介したASTからのBDNFが関与している可能性が考えられた. ASTでのEP4の機能は未だ不明な点が多いが, BDNF分泌を促進することで神経保護に関与する可能性がある. いずれの化合物も治療薬への発展が期待される.
Creators : 藤澤 美和子 Dissertation Number : 医博甲第1637号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景と目的:同種造血幹細胞移植ではgraft-versus-leukemia (GVL) 効果と呼ばれる抗腫瘍免疫を適切に誘導することが成績向上の鍵となる。しかしGVL効果の増強は移植片対宿主病の重症化にも繋がるため、 同種免疫応答の指標となるバイオマーカーの開発が望まれる。我々は以前、移植処置の前と好中球生着時の血清可溶性インターロイキン-2受容体の比である「sIL-2R index」を定義し、骨髄移植における移植片対宿主病の発症予測マーカーとして有用であることを示した。しかし、骨髄移植とは異なる免疫特性を有する臍帯血移植ではsIL-2R indexも異なる挙動を示す可能性があり、臍帯血移植におけるsIL-2R indexの有用性を検討した。 対象と方法:当院で初回同種造血幹細胞移植として臍帯血を施行した31症例を対象とした。sIL-2R indexを算出し、患者背景や移植成績との関連を後方視的に解析した。 結果:移植後3年の再発率は、sIL-2R index 3.7以上の群で有意に低下した(12.8% vs 50.0%; p = 0.04)。それに伴い移植後3年の全生存率はsIL-2R index 3.7以上の群で有意に良好であった(79.8% vs 20.0%; p < 0.01)。sIL-2R indexには移植後1日目から好中球生着日までの累積ステロイド投与量が影響しており、ステロイドの使用理由は生着前免疫反応に対する治療であった。なお骨髄移植とは異なり、臍帯血移植ではsIL-2R indexと急性移植片対宿主病の発症率との有意な関連性は認めなかった。 結語:sIL-2R indexは臍帯血移植後の予後予測マーカーになり得る。sIL-2R indexはGVL効果を反映する可能性があるが、更なる検証が必要である。
Creators : 梶邑 泰子 Dissertation Number : 医博甲第1636号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
心臓突然死(sudden cardiac death: SCD)は心サルコイドーシス患者における主要な死亡原因であり、SCDの大部分は心室性不整脈が原因である。これまでのところ、心サルコイドーシス患者の致死的不整脈とSCDを予測するバイオマーカーは報告されていない。本研究では心サルコイドーシス患者における持続性心室頻拍(sustained ventricular tachycardia: sVT)およびSCDを予測する因子は何であるかを調査した。連続89症例において心サルコイドーシス患者の炎症活動性を反映する酸化的DNA損傷のマーカーである尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(尿中8-OHdG)、他のバイオマーカー、心機能の指標、腎機能を測定した。追跡期間中、15人の患者はsVT(N = 12)またはSCD(N= 3)を示した。COX比例ハザードモデルを用いた多変量解析では、尿中8-OHdG濃度および心室瘤(ventricular aneurysm: VA)の存在がsVT/SCDの独立した予測因子であることが示された。尿中8-OHdGおよびVAの存在は、心サルコイドーシス患者の初回のsVT/SCDの強力な予測因子であり、心臓イベントのリスクの層別化に有用である。さらに、これらはVT基質についてのさらなる情報を与えるものであることが示唆された。
Creators : 吉冨 亮介 Dissertation Number : 医博甲第1635号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
中等度の冠動脈狭窄病変において、血行再建治療を延期(defer)し薬物療法を行った場合、薬物療法中に心血管イベント発症抑制効果を評価する代用評価法があれば有用である。冠動脈イメージングでプラーク退縮と安定化を調べることで薬物治療効果を評価するのと同様に、定量的冠血流比(QFR)の経時的変化は、deferした中等度狭窄に対する薬物治療効果を評価する代用評価法として有用な可能性がある。本研究では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に未治療血管に冠動脈中等度残存狭窄を有し二次予防として薬物治療を受けた患者で、deferした中等度残存狭窄のQFRの経時的変化を調査した。山口大学医学部附属病院と萩市民病院でPCIを施行され、PCI(ベースライン[BL])時に未治療血管に中程度狭窄を有し、6~18ヶ月後にフォローアップ(FU)の冠動脈造影が施行された患者を対象とした。52人の患者でBLとFUの両方で未治療血管の中程度狭窄のQFRの解析が可能であった。BL時にQFRの中央値は0.83(IQR, 0.69, 0.89)、FU時にQFRの中央値は0.80(IQR, 0.70, 0.86)であった。QFRの増加した患者(QFR増加群)は21人で、QFRの減少した患者(QFR減少群)は31人であった。経時的なQFR変化の中央値はQFR増加群で0.05(IQR, 0.03, 0.09)、QFR減少群で-0.05(IQR, -0.07, -0.03)であった。単変量および多変量解析でQFRの増加に影響する因子を解析したところ、FU時のLDLコレステロール値と相関を認めた(OR 0.95, 95% CI [0.91, 0.98], p=0.001)。QFRの経時的変化の評価は、deferした中程度狭窄を有する患者に対する薬物治療効果を判定する代用評価法として有用性が示唆された。
Creators : 竹中 仁 Dissertation Number : 医博甲第1634号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
背景:顕微鏡的多発血管炎 (MPA) は全身臓器が障害される疾患である。しかしながら、MPA患者における心臓超音波検査(心エコー図検査)における指標の特徴については不明な点が多い。 目的:本研究は、単施設後ろ向き研究で、ステロイド療法の新規導入または再導入後2週間以内に心エコーを行ったMPA患者15名を対象とし、その心エコー所見の特徴について検討することを研究の目的とした。30人の年齢・性別をマッチさせた心疾患のないコントロール群と比較検討した。 方法と結果:左室径、左室駆出率、拡張早期僧帽弁輪最大移動速度 (e’) に2群間で有意差は認めなかった。一方、MPA群では左房径、左房容積係数が有意に高く、左室流入血流速波形 (TMF) の早期拡張期充満速度(E波)と肺静脈流入拡張期血流速度 (D波) の高さ、三尖弁における収縮期右室-右房最大圧較差も有意に高く、TMFのE波の減速時間 (DCT) は短縮していた。血清CRPはTMFのE波高、E/A比およびDCTと相関が見られた。今回の研究では、MPA患者におけるe’の有意な低下がみられなかったことから、左室弛緩能の低下よりはむしろ左室スティフネスの上昇によって左室拡張機能低下が生じ、結果として左房拡大が生じている可能性が示唆された。 結語:急性期MPA患者では左室拡張機能低下によると考えられる左房拡大を生じていた。MPA患者、特に強い炎症反応を伴う患者では、心機能評価を行うことが重要であることが示唆された。
Creators : 木下 奈津 Dissertation Number : 医博甲第1633号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】全層性治癒(Transmural healing healing; TH)は、クローン病の新たな治療標的として注目されているが、日本ではTHに関する臨床データはほとんどない。我々は、クローン病のモニタリング法として低被曝線量CTエンテログラフィ(CTE)を導入し、CTEによるTHの評価をレトロスペクティブに検討した。【方法】2009年 1月から2021年3月までに当院で低被曝線量CTEを施行したクローン病患者のうち、2週間以内に大腸内視鏡検査またはバルーン内視鏡検査を施行した122例を対象とした。放射線検査と内視鏡検査の結果は、それぞれ放射線科医と消化器内視鏡医が独立して検討した。CTEと内視鏡検査の診断の一致率を算出した。【結果】26名(21.3%)のクローン病患者がTHを達成し、カッパ係数は0.743と2人の放射線科医の間でかなりの一致が見られた。TH群と非TH群の比較では、クローン病活動指数(Crohn’s Disease Activity Index ; CDAI )(P値 = 0.02)、内視鏡的治癒率(P値 < 0.001)、血清アルブミン(P値 = 0.043)、血清C反応性蛋白(P値 = 0.018)に有意差が認められた。122名の患者のうち、69名(56.5%)はCTEの診断と内視鏡検査が一致し、22名(18.0%)はTHと内視鏡の両方の治癒を達成した。【結論】本研究は、日本における低被曝線量CTEによるクローン病のリアルワードデータを示すものである。本研究で用いたTHの基準はカッパ係数が高く、多くの施設で再現性を持って用いることができると考えられる。
Creators : 藤村 寛之 Dissertation Number : 医博甲第1632号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】近年、歯周炎や歯肉炎に関連する嫌気性グラム桿菌であるFusobacterium nucleatum (F. nucleatum) は大腸がんの発生や進行に関与することが報告されている。この菌の制御が大腸がんの予防につながる可能性があると考え、深紫外線発光ダイオード (DUV-LED) によるF. nucleatumの殺菌効果を検討した。【方法】DUV-LEDのF. nucleatumに対する殺菌効果を定性的、定量的に評価した。ピーク波長が265nmと280nmの2種類のDUV-LEDを使用した。F. nucleatumのDNAに対するダメージは、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)とピリミジンピリミドン光生成物 (6-4PP) の生成で評価した。【結果】DUV-LEDでの265nmまたは280nmの波長を3分間照射したところ、コロニーの成長は観察されなかった。265nmのDUV-LED光照射下におけるF. nucleatumの生存率は10秒照射で0.0014%、20秒照射で0%に低下した。同様に、280nmのDUV-LED光照射では,10秒照射で0.00044%、20秒照射で0%に低下した。DUV-LEDから35mmの距離での放射照度は、265nmのLEDで0.265mW/cm^2、280nmのLEDでは0.415mW/cm^2であった。従って、致死量を示す放射エネルギーは265nm LEDは5.3mJ/cm^2、280nm LEDは8.3mJ/cm^2であった。265nmと280nmのDUV-LED光をF. nucleatumに照射した際のCPDと6-4PPの量はそれぞれ6.548ng/μg、1.333ng/μgであった。【結論】DUV-LED光は、F. nucleatumに対して、ピリミジン二量体を形成することにより殺菌効果を発揮した。
Creators : 伊藤 駿介 Dissertation Number : 医博甲第1631号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
前身に投与された治療薬が脳組織実質に到達するには、神経組織の血管により形成される血液脳関門を通過する必要がある。そのため、組織への損傷を最小限に抑えて血液脳関門を開くことができれば、難治性神経疾患の治療法開発に大きな進展をもたらすことが期待される。本研究では、血液脳関門を形成する血管内皮細胞に発現するBasiginに着目し、その内因性リガンドであるCyclophilin A (CypA) を用いて、血液脳関門機能を人為的に制御することを目的とした。マウス脳血管内皮細胞株を用いたin vivo解析により、CypAの投与がBasiginを介して血液脳関門機能を低下させること、それにより脳実質へ効率的に薬物を送達できることを示した。単層培養された血管内皮細胞において、CypAはタイト結合構成分子の一つであるClaudin-5を一過性かつ可逆的に細胞膜から消失させて、バリアー機能を低下させることを見出した。また、マウスへのCypAの単回静脈内投与では血液脳関門が一定期間開いた後、自発的に元の状態へ回復することが示され、そしてその限定された機関において、全身投与された水溶性薬物Doxorubicinが脳組織実質へ送達されることが明らかとなった。本研究の結果は、CypAの静脈内投与によって、脳実質への薬物送達を自在にコントロールできることを示しており、難治性神経疾患に対する治療法確立に向けた重要な成果であると考えられる。
Creators : 本田 成美 Dissertation Number : 医博甲第1630号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
The hippocampal dentate gyrus has been identified to play a critical role in maintaining contextual memory in many mammalian species. To evaluate learning-induced synaptic plasticity of granule cells, we subjected male rats to an inhibitory avoidance (IA) task and prepared acute hippocampal slices. In the presence of 0.5 µM tetrodotoxin, we recorded miniature EPSCs in male rats experiencing four groups: untrained, IA-trained, unpaired, and walk-through. Compared with the untrained, IA-trained, unpaired, and walk-through groups, the unpaired group significantly enhanced mean mEPSC amplitudes, suggesting the experience-induced plasticity at AMPA receptor-mediated excitatory synapses. For inhibitory synapses, both unpaired and walk-through groups significantly decreased mean mIPSC amplitudes, showing the experience-induced reduction of postsynaptic GABA_A receptor-mediated currents. Unlike the plasticity at CA1 synapses, it was difficult to explain the learning-specific plasticity at the synapses. However, overall multivariate analysis using four variables of mE(I)PSC responses revealed experience-specific changes in the diversity, suggesting that the diversity of excitatory/inhibitory synapses onto granule cells differs among the past experience of animals include the learning. In comparison with CA1 pyramidal neurons, granule cells consistently showed greater amplitude and frequency of mE(I)PSCs. Fluctuation analysis further revealed that granule cells provide more postsynaptic AMPA receptor channels and greater single-channel current of GABA_A receptors of than CA1 pyramidal neurons. These findings show functional differences between two types of principal cells in the hippocampus.
Creators : Han Thiri Zin Dissertation Number : 医博甲第1629号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
Cardiovascular diseases are the leading cause of mortality and disability worldwide. We have previously found that sphingosylphorsphorylcholine (SPC) is the key molecule leading to vasospasm. We have also identified the SPC/Src family protein tyrosine kinase Fyn/Rho-kinase (ROK) pathway as a novel signaling pathway for Ca^{2+}-sensitization of vascular smooth muscle (VSM) contraction. The present study aimed to investigate whether hesperetin can inhibit the SPC-induced contraction with little effect on 40 mM K^+-induced Ca^{2+}-dependent contraction and to elucidate the underlying mechanisms. Hesperetin significantly inhibited the SPC-induced contraction of porcine coronary artery smooth muscle strips with little effect on 40 mM K^+-induced contraction. Hesperetin blocked the SPC-induced translocation of Fyn and ROK from the cytosol to the membrane in human coronary artery smooth muscle cells (HCASMCs). SPC decreased the phosphorylation level of Fyn at Y531 in both VSMs and HCASMCs and increased the phosphorylation levels of Fyn at Y420, myosin phosphatase target subunit 1 (MYPT1) at T853 and myosin light chain (MLC) at S19 in both VSMs and HCASMCs, which were significantly suppressed by hesperetin. Our results indicate that hesperetin inhibits the SPC-induced contraction at least in part by suppressing the Fyn/ROK pathway, suggesting that hesperetin can be novel drug to prevent and treat vasospasm.
Creators : Lu Qian Dissertation Number : 医博甲第1628号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-03-16 Degree Grantors : Yamaguchi University
ダイアモンド・ブラックファン貧血 (Diamond–Blackfan anemia : DBA) は, リボゾーム蛋白異常によって生じる赤芽球癆で, 新生児期の貧血および一部で身体奇形を合併する. 臨床的特徴が多様で, 原因となるリボゾーム蛋白遺伝子も多数存在するため, 新生児期にDBAと確定診断し, 適切な治療を行うことが困難である. 本研究では, 全エクソーム解析 (whole-exome sequencing; WES) を用いて最終診断した3組の母子例について報告する. 貧血の重症度や治療反応性は各母子間で異なり, 低身長, 翼状頸, 母指球形成不全などの特徴的な身体奇形を認めた症例は, 母1名のみだった. この母はRPL11 (exon 2, c.58_59del) のフレームシフト変異があり, 子は一過性の新生児貧血を認めたがリボゾーム蛋白遺伝子の変異はなかった. 他の2組の母子では, それぞれRPS19 (exon 4, c.185G>A) のミスセンス変異とRPS7のスプライシング変異 (exon 3, c.76-1G>T) を同定した. それぞれの変異と別に, 貧血を来し得る遺伝子変異はなかった. 本研究は, WESがヒトリボゾーム病の迅速かつ正確な診断を得るために有用であることを示唆した.
Creators : 市村 卓也 Dissertation Number : 医博乙第1102号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2022-01-12 Degree Grantors : Yamaguchi University
細胞は熱ストレスなどのタンパク質毒性ストレスにさらされると、熱ショックタンパク質群(HSPs)を誘導することで適応する。この適応機構は熱ショック応答と呼ばれ、熱ショック転写因子HSF1によって主に転写レベルで制御される。活性化されたHSF1はHSP遺伝子プロモーターに存在する熱ショック応答配列(HSE)に結合し、メディエーターを含む転写開始前複合体を集積させることで転写を促進する。一般に、転写因子及びその調節因子は液―液相分離によってプロモーター上に凝縮体を形成すると考えられている。しかし、HSP遺伝子プロモーター上でも同様かどうかについては、凝縮体が微小であるために十分な解析ができていない。本研究では、ヒトHSP72プロモーター由来のHSEを多数連結したレポーター遺伝子をマウス細胞に導入した。このHSEレポーター遺伝子を持つ細胞に蛍光タンパク質mEGFPを融合したHSF1を発現させることで、熱ストレス条件下でHSF1凝縮体を可視化することに成功した。この人工的なHSF1凝縮体は部分的に液体様の性質を持つ、すなわち液―液相分離により形成されていた。また、大腸菌から精製したタンパク質を用いた実験から、HSF1の天然変性領域IDR)が相分離に寄与することも分かった。さらにこの実験系を用いて、HSF1凝縮体の形成が転写調節因子によって制御されるかを調べた。特に、熱ショック応答を促進するメディエーターの一つであるMED12に着目して解析したところ、MED12のIDRはHSF1凝縮体に集積すること、そしてMED12の発現抑制はHSF1の凝縮体形成を著しく抑制することが明らかとなった。本研究は、HSP72プロモーター上のHSF1凝縮体を解析する実験系を提示するとともに、それが転写調節因子によって制御されることを示唆する。
Creators : 岡田 真理子 Dissertation Number : 医博甲第1677号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
現在の日本は少子高齢化・医療高度化を背景に、要介護者数の増加、医療費増加、人材不足、医療格差などの医療課題に直面している。近年、人工知能(ArtificialintelligenceAI)技術やシステム医学に基づいたデータ駆動型医療の登場によって、これら課題を解決できる可能性が広がった。筆者自身は呼吸器診療に携わる立場でもあることから、呼吸器診療を支援する以下3つの医療AI技術を開発した。1つ目の技術では、副作用ビッグデータ(JapaneseAdverseDrugEventReportJADER)に基づきベイズ推定を行うことで、AUC0.93の精度で副作用の原因薬を推定できた。呼吸器領域では薬剤性肺障害など重篤な副作用があるが、本技術の臨床応用によって、副作用による健康被害の最小化と副作用管理の効率化が期待できる。2つ目の技術では、喘息患者の臨床データ(年齢、BMI、血中好酸球数、呼気NO値、増悪回数)をもとに教師あり機械学習を行うことで、喘息患者の気流閉塞の急速進行1秒量低下)をAUC0.85の精度で予測できた。実用化によって、早期の治療介入が必要な喘息患者を同定でき、重症化を防ぐための先制治療につながる。3つ目の技術では、喘息質問票(AsthmaControlQuestionnaire-5:ACQ-5)のデータを用いて教師なし機械学習を行うことで、症状から喘息病態である気流閉塞、2型気道炎症、増悪リスクを推定できた。従来、治療選択のため病態評価には専門的検査が必要だが、本技術ではACQ-5に含まれる喘息症状の評価のみから、個々の喘息の病態に応じた治療選択(個別化治療)につなげることができる。本技術は、発展途上国、過疎地域、プライマリケアの現場など、医療環境が不十分な地域で、適切な喘息治療薬の選択を支援できる。ひいては、医療格差の是正につながる可能性が期待できる。本研究で開発したAI技術の実用化によって、臨床現場における副作用管理、先制医療、個別化治療を支援する。これによって、健康寿命の延伸、医療費抑制を目指す。同時に、開発したAI技術によって専門医療の一部を補完することで、医療従事者の業務負担軽減と、医療格差の是正均てん化につながることが期待できる。
Creators : 濱田 和希 Dissertation Number : 医博甲第1678号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
ダントロレン(DAN)はRyR2のN末端ドメインLeu601-Cys620に直接結合し、RyR2の4量体構造を安定化させることにより、RyR2からの拡張期Ca2+漏出を防ぐ。以前我々は、RyR2へのCaM高親和性KIマウス(V3599K)を用いて、横行大動脈縮窄(TAC)による圧過負荷誘発性心肥大マウスモデルにおいてRyR2からのCaM解離を抑制することで、Ca2+漏出を防ぎ、左室リモデリングを抑制することを報告した。そこで本研究では、横行大動脈縮窄(TAC)による圧負荷誘発性心肥大マウスモデルにおいてダントロレンの慢性投与がCaMとRyR2の結合親和性を遺伝的に強化した場合と同様の機序で左室リモデリングを抑制するかを調べた。横行大動脈縮窄(TAC)による圧負荷誘発性心肥大マウスモデルを作成した。野生型マウスを、Sham群、TAC群、TAC-DAN群(ダントロレン20mg/kg/day腹腔内投与)の3群に割り付けた。ShamまたはTAC手術から8週後の生存率、心機能および組織評価、単離心筋細胞を用いたCa2+ハンドリング、RyR2-CaM結合性の評価を行った。TAC-DAN群はTAC群と比較し、TAC手術から8週後の生存率は良好であった(TAC群 49% vs TAC-DAN群83%)。また、心エコーと心筋組織においては、TAC群で認めた左室リモデリングは、TAC-DAN群で抑制された。TAC手術から8週後の単離心筋細胞ではTAC群で拡張期Ca2+スパーク頻度の増加およびRyR2-CaM結合親和性の低下を認めたが、TAC-DAN群ではそれが抑制された。我々の研究はダントロレンの慢性投与によりRyR2を安定化させ、RyR2からのCaM解離を抑制することで、RyR2からの拡張期Ca2+漏出を防ぎ、左室リモデリングが抑制され、予後が改善することを示した。
Creators : 矢野 泰健 Dissertation Number : 医博甲第1679号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
To investigate whether dantrolene (DAN), cardiac ryanodine receptor (RyR2) stabilizer, improves impaired diastolic function in an early pressure-overloaded hypertrophied heart, pressure-overload hypertrophy was induced by transverse aortic constriction (TAC) in mice. Wild-type (WT) mice were divided into four groups: sham-operated mice (Sham), sham-operated mice treated with DAN (DAN+Sham), TAC mice (TAC), and TAC mice treated with DAN (DAN+TAC). The mice were then followed up for 2 weeks. Left ventricular (LV) hypertrophy was induced in TAC, but not DAN+TAC mice, 2 weeks after TAC. There were no differences in LV fractional shortening among the four groups. Catheter tip micromanometer showed that the time constant of LV pressure decay, an index of diastolic function, was significantly prolonged in TAC but not in DAN+TAC mice. Diastolic function was significantly impaired in TAC, but not in DAN+TAC mice as determined by cell shortening and Ca2+ transients. An increase in diastolic Ca2+ leakage and a decrease in calmodulin (CaM) binding affinity to RyR2 were observed in TAC mice, while diastolic Ca2+ leakage improved in DAN+TAC mice. Thus, DAN prevented the progression of hypertrophy and improved the impairment of LV relaxation by inhibiting diastolic Ca2+ leakage through RyR2 and the dissociation of CaM from RyR2.
Creators : CHANG YAOWEI Dissertation Number : 医博甲第1680号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : Srivastava Pratibha Dissertation Number : 医博甲第1621号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 小室 拓也 Dissertation Number : 医博甲第1622号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 藤原 康弘 Dissertation Number : 医博甲第1623号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 森 純一 Dissertation Number : 医博甲第1624号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 小林 由佳 Dissertation Number : 医博甲第1625号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 小林 利彦 Dissertation Number : 医博甲第1626号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-09-27 Degree Grantors : Yamaguchi University
Creators : 柳井 章江 Dissertation Number : 医博乙第1101号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2021-04-14 Degree Grantors : Yamaguchi University
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は造血器腫瘍において優れた抗腫瘍効果を示している一方、固形がんにおいては臨床応用がまだなされていない。臨床応用におけるハードルとなっている理由の一つとして、固形がんでは適切なCAR ターゲットが欠如しているということにある。GM2 は糖鎖にシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質の一群であるガングリオシドの一つであり、様々なタイプの固形がんにおいて過剰発現している。本研究では、我々が以前に開発したインターロイキン7(IL-7)/ケモカインリガンド19(CCL19)産生型ヒトCAR-T細胞システムを用いて、GM2が固形腫瘍に対するCART細胞療法のターゲットとなりうるかという点についてヒト肺小細胞がん異種移植マウスモデルを用いて探究した。IL-7/CCL19 産生型抗GM2 CAR-T細胞治療を行ったところ、GM2 陽性腫瘍の完全な退縮が観察され、腫瘍内部への豊富なT 細胞浸潤や長期のメモリー応答形成も観察されたが、有害事象は認めなかった。加えて、臨床においてCAR-T 細胞使用時に問題となるサイトカイン放出症候群や神経毒性をコントロールする方法として、ガンシクロビル(GCV)投与によりアポトーシスが誘導される自殺システムである単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-TK)をCAR-T細胞に遺伝子導入した。HSV-TK発現IL-7/CCL19産生型抗GM2 CAR-T細胞は、in vivoにおいてGCV投与により効果的に除去された。以上より、我々の研究はIL-7/CCL19産生型ヒト抗GM2CAR-T細胞のGM2陽性固形がん治療への臨床応用における安全性を実証し、その有望な治療効果を明らかにした。
Creators : 佐々木 貴宏 Dissertation Number : 医博甲第1681号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
Objective: Anastomotic leakage is a common and severe complication of esophageal reconstruction. Accordingly, there is a clinical need for novel methods to prevent it. We developed multilayered, growth factor-secreting fibroblast sheets that promote wound healing and angiogenesis. The present study aimed to assess the utility of allogenic multilayered fibroblast sheets in preventing esophageal anastomotic leakage in a rat model of esophageal reconstruction. Methods: Allogenic multilayered fibroblast sheets prepared from oral mucosal tissues were implanted at esophageal anastomotic sites. Results: The allogenic multilayered fibroblast sheet group had significantly higher burst pressure and collagen deposition compared to a control group five days postoperatively. The expression levels of collagen type I and III mRNAs around esophageal suture sites were higher in the allogenic multilayered fibroblast sheet group compared to the control group on postoperative days 0, 3, and 5. There was a trend toward lower anastomotic leakage and lower abscess scores in the allogenic multilayered fibroblast sheet group compared to the control group; however, these differences did not reach statistical significance. Allogenic multilayered fibroblast sheets completely disappeared at ten days after implantation. Further, no inflammation was observed at suture sites with implanted allogenic multilayered fibroblast sheets at five days after surgery. Conclusion: Allogenic multilayered fibroblast sheets may represent a promising method of preventing esophageal anastomotic leakage.
Creators : 山本 直宗 Dissertation Number : 医博甲第1684号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
Generalized pustular psoriasis (GPP) is a rare form of psoriasis, which is characterized by sudden onset of repeated erythema and pustule formation with generalized inflammation. Recent advances in molecular genetics have led to the identification of several genes associated with GPP, including IL36RN, CARD14, AP1S3, SERPINA3, and MPO. Of these, only limited cases of GPP have been reported to carry mutations in the AP1S3, SERPINA3, or MPO to date. In the present study, we investigated a Japanese patient with GPP and found a bi-allelic missense mutation c.1769G>T (p.Arg590Leu) in the MPO gene. Structural analysis predicted that the mutant MPO protein would abolish its ability to bind with heme protein. In vitro studies using cultured cells revealed that the mutant MPO was stably expressed, but completely lost its myeloperoxidase activity. Immunohistochemistry (IHC) using an anti-MPO antibody showed markedly-reduced expression of MPO protein in the patient’s skin, suggesting that the mutation would lead to an instability of the MPO protein in vivo. Finally, IHC with an anti-citrullinated Histone H3 antibody demonstrated a sparse formation of neutrophil extracellular traps within a Kogoj's spongiform pustule of the patient’s skin. Collectively, we conclude that the c.1769G>T (p.Arg590Leu) in the MPO is a complete loss-of-function mutation associated with GPP in the patient. Our data further underscore critical roles of the MPO gene in the pathogenesis of GPP.
Creators : 鬼束 真美 Dissertation Number : 医博甲第1685号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
アミノグリコシド系抗菌薬は有害反応として聴覚障害をきたすことがあり、蝸牛基底回転の外有毛細胞が障害されやすいことが知られている。本研究では、ネオマイシンの有毛細胞障害に対するアスタキサンチンナノ製剤の保護効果を検討した。ネオマイシンを加えたCBA/Nマウスの卵形嚢培養に対し、培養液にアスタキサンチンナノ製剤を投与した群では有毛細胞の減少および酸化ストレスが有意に抑制された。さらに、アスタキサンチンナノ製剤の鼓室内投与を行い音響曝露前後の聴性脳幹反応(ABR)閾値の変化、有毛細胞減少率を評価した。アスタキサンチン投与群では音響曝露後のABR閾値変化、有毛細胞減少率が抑制される傾向が見られた。血液内耳関門の存在により、鼓室内投与に適した薬剤は限られるが、アスタキサンチンナノ製剤の形態は正円窓膜を浸透する可能性があり、内耳障害抑制の効果を有する可能性が示唆された。
Creators : 小林 由貴 Dissertation Number : 医博乙第1109号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-11-08 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】結腸直腸癌(colorectal cancer:CRC)の予後については、腫瘍の特性だけでなく、宿主の免疫反応も重要な因子となる。我々は宿主の免疫反応として全身および腫瘍微小環境(tumor microenvironment: TME)の炎症性サイトカイン発現に注目し、これらを評価することにより、免疫抑制状態と患者の予後との関係を検討した。 【方法】 切除可能CRC患者209名において、術前に採取した血清サンプルを用いてサイトカイン濃度(IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α)を電気化学発光法により測定し、予後との関連を検討した。また切除切片における腫瘍組織でのサイトカイン発現を腫瘍細胞、間質細胞に分けて免疫組織化学的に評価した。さらに、切除したCRC患者10例において、新鮮な切除切片から抽出した腫瘍浸潤細胞を用いたマスサイトメトリーによるシングルセル解析を行った。 【結果】 無再発生存期間において、血清IL-1β、IL-8、TNF-α濃度の高低では有意な関係を認めなかったが、血清IL-6高値群で有意に予後不良であった。また血中IL-6濃度上昇は腫瘍組織中の間質細胞におけるIL-6高発現と関連していた。シングルセル解析の結果、腫瘍浸潤免疫細胞のうちIL-6+細胞は主に骨髄球系細胞で構成され、リンパ球系細胞ではIL-6発現をほとんど認めなかった。またIL-6高発現群では、CD33+HLADR-骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell: MDSC)およびCD4+FOXP3highCD45RA-エフェクター型抑制性T細胞(effector regulatory T cell: eTregの割合がIL-6低発現群に比べ有意に高かった。さらに、MDSCにおけるIL-10+細胞の割合、eTregにおけるIL-10+細胞またはCTLA-4+細胞の割合は、IL-6高発現群で有意に高かった。 【結論】血清IL-6濃度の上昇は間質細胞のIL-6発現と関連し、予後不良であった。腫瘍浸潤免疫細胞におけるIL-6高発現は、TMEにおけるMDSCやeTreg等の免疫抑制性細胞の蓄積と関連し、その機能性マーカーの上昇も認めた。これらIL-6を介した抑制性免疫機構がCRC患者の予後不良の一因となっている可能性がある。
Creators : 山本 常則 Dissertation Number : 医博甲第1683号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University
【背景】インターロイキン(IL)-33は, 宿主防御, 神経損傷, 炎症などに重要なIL-33/ST2シグナル経路を誘導する. 一方, IL-33のデコイ受容体である可溶性ST2(sST2)は, IL-33/ST2シグナル経路を抑制する. sST2は種々の神経疾患患者の血清中で増加するが, 低酸素性虚血性脳症(Hypoxic-ischemic encephalopathy; HIE)では知られていない. 【目的】本研究の目的は, HIEにおける血清中のIL-33, 及びsST2濃度を測定し, HIE重症度と神経学的予後との関連性を検討することである. 【対象と方法】2017年1月から2022年4月の期間に, 山口大学医学部附属病院総合周産期母子医療センターに入院した, 在胎期間36週以上, かつ出生体重1,800g以上の新生児を対象とし, HIE群23名, 対照群16名を本研究に登録した. HIEの重症度はSarnat分類により軽症, 中等症, 重症に分類し, 生後6時間以内, 及び1-2, 3, 7日目の血清IL-33及びsST2濃度を測定した. プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーによりHIE群の基底核におけるlactate/N-acetylaspartate(Lac/NAA)比を算出し, 退院後の神経学的後遺症の有無を追跡調査した. 【結果】血清中IL-33濃度は各群で差を認めなかった. 一方, 中等症及び重症HIE群の血清sST2濃度は, 対照群に比し著明に高値で, HIE重症度と相関して高値であった. 血清中sST2濃度はLac/NAA比と有意な正の相関を示し(相関係数=0.527, P=0.024), 神経学的後遺症を来したHIE児では予後良好の児に比し, sST2濃度及びLac/NAA比が有意に高かった(それぞれP=0.020, <0.001).【結論】血清sST2濃度はHIEの重症度および神経学的予後予測に有用である可能性が示唆された.
Creators : 濱野 弘樹 Dissertation Number : 医博甲第1682号 Degree Names : 博士(医学) Date Granted : 2023-09-26 Degree Grantors : Yamaguchi University