遠隔教育支援環境における授業と学習活動の支援に関する研究
Title
遠隔教育支援環境における授業と学習活動の支援に関する研究
Degree
博士(学術)
Dissertation Number
東アジア博甲第165号
(2023-03-16)
Degree Grantors
Yamaguchi University
[kakenhi]15501
grid.268397.1
Abstract
本論文は,申請者が山口大学大学院東アジア研究科在学中において進めてきた,遠隔教育支援環境における授業と学習活動の支援に関する研究をまとめたものである.
人口減少社会の到来により,特に地方において,適正規模での学校運営が難しい小規模の学校が増加傾向にある.小規模校では,きめ細やかな指導等が行える一方で,人間関係が固定化しがちであったり,多様な意見や考え方に触れることが少なくなったりなど,教育上の課題を抱えている.その解決策の1つとして,複数校の児童生徒が1つの学校に集まって合同授業が実施されているが,時間的・金銭的な問題などから実施回数が制限されるケースが多い.この合同授業を補う形で,日進月歩の勢いで進歩しているICT技術を活用した遠隔合同授業の取組みが期待され,教育実践が進められてきている.
一方,小学校や中学校だけでなく,大学などの高等教育機関においてもICTを活用した遠隔教育は進められてきている.さらに,新型コロナウィルス感染症のパンデミックを契機に,小学校・中学校・高校や高等教育機関だけでなく,塾など様々な場でオンライン授業あるいはオンライン学習といった遠隔教育の取り組みも行われてきている.
しかしながら,オンライン授業や遠隔合同授業を実践する上では,環境整備面や授業実施面などで課題が存在する.特に,授業実施時における教員の作業負荷が非常に高いことが問題であり,オンライン授業や遠隔合同授業の特性や授業プロセスを踏まえた仕組みの構築や機能の開発が必要となる.さらに,オンライン授業や遠隔合同授業における学習者個人あるいはグループによる学習活動や,教員による教授活動や学習者グループの活動支援のプロセスを分析した上で,その状況に応じた支援手法を検討し,学習支援機能やその機能と連動した授業支援機能を遠隔教育支援ツール・アプリとして提供することが必要となる.
そこで本研究では,高校・大学などにおけるオンライン授業や小学校・中学校の小規模校における遠隔合同授業といった遠隔教育を対象にして,校種やICT活用能力に応じた機能や画面に切り替えることができる設計思想を持った,課題解決的な学習が展開される際の学習者の学習活動と教員の教授活動を支援するための遠隔教育支援環境を設計して開発することを目的にする.
本論文では,本研究の目的を達成させるために,以下に示す5つの調査・研究・開発の成果がまとめられている.
(1) 遠隔教育の支援環境に関する研究動向の調査
(2) 遠隔教育を支援する環境・機能についての整理と必要機能の提案
(3) 「クラス(学級)」と「個」をつなぐ遠隔教育支援環境「つながる授業アプリ」の開発と評価
(4) 「比べる」協働的思考活動支援機能の開発と評価
(5) グループ学習活動・対話状況確認支援機能とグループ活動状況管理機能の開発と評価
(1)では,遠隔教育に関する研究動向を調査した.これらの整理・分類などを踏まえ,遠隔教育における学習環境,学習支援機能,授業支援機能の研究に対する本研究の位置づけを行った.
(2)では,遠隔教育をICTで支援する環境について説明した.さらに,2つのつながり(「クラス(学級)」と「個」)を保障する遠隔教育システムと協働学習支援システムに必要な機能を整理した.
(3)では,遠隔教育システムと協働学習支援システムの両方の機能を併せ持つ遠隔教育支援環境「つながる授業アプリ」を設計・開発した.さらに,「つながる授業アプリ」のの有用性を評価し,基本機能を完成させた.
(4)では,遠隔合同授業における小学生を対象として,より深い学びを実感できることを目的として,グループ活動時の思考に必要なプロセスを整理し,最も基本的な思考活動の1つである「比較思考」を協働的に進めることができる支援を「つながる授業アプリ」の拡張機能として実装した.「比べる」協働的思考活動支援機能は,「比べる」思考手順を1スライドずつ学習者間の協働的な思考手順として提示して,思考活動プロセスをガイドする仕組みである.さらに,開発した支援機能についてその有用性を評価した.
(5)では,大学の遠隔教育を対象にして,グループ学習活動における学習者の対話内容の確認や振り返り,教員による見とりを支援する目的として,対話音声データ(バーバル情報)とノート記述データ(ノンバーバル情報)を活用した活動状況・対話状況の可視化機能を「つながる授業アプリ」の拡張機能として実装した.さらに,教員の見とり支援としてグループ活動状況管理機能も拡張機能として実装し,これらの機能の有用性を評価した.
以上により,オンライン授業が展開でき,学習者の個別学習やグループ学習の活動支援や教員の見とり支援が可能な「つながる授業アプリ」の開発・授業実践を通して,遠隔教育において必要な学習環境の要素機能,学習支援・授業支援の機能を確認することができた.
人口減少社会の到来により,特に地方において,適正規模での学校運営が難しい小規模の学校が増加傾向にある.小規模校では,きめ細やかな指導等が行える一方で,人間関係が固定化しがちであったり,多様な意見や考え方に触れることが少なくなったりなど,教育上の課題を抱えている.その解決策の1つとして,複数校の児童生徒が1つの学校に集まって合同授業が実施されているが,時間的・金銭的な問題などから実施回数が制限されるケースが多い.この合同授業を補う形で,日進月歩の勢いで進歩しているICT技術を活用した遠隔合同授業の取組みが期待され,教育実践が進められてきている.
一方,小学校や中学校だけでなく,大学などの高等教育機関においてもICTを活用した遠隔教育は進められてきている.さらに,新型コロナウィルス感染症のパンデミックを契機に,小学校・中学校・高校や高等教育機関だけでなく,塾など様々な場でオンライン授業あるいはオンライン学習といった遠隔教育の取り組みも行われてきている.
しかしながら,オンライン授業や遠隔合同授業を実践する上では,環境整備面や授業実施面などで課題が存在する.特に,授業実施時における教員の作業負荷が非常に高いことが問題であり,オンライン授業や遠隔合同授業の特性や授業プロセスを踏まえた仕組みの構築や機能の開発が必要となる.さらに,オンライン授業や遠隔合同授業における学習者個人あるいはグループによる学習活動や,教員による教授活動や学習者グループの活動支援のプロセスを分析した上で,その状況に応じた支援手法を検討し,学習支援機能やその機能と連動した授業支援機能を遠隔教育支援ツール・アプリとして提供することが必要となる.
そこで本研究では,高校・大学などにおけるオンライン授業や小学校・中学校の小規模校における遠隔合同授業といった遠隔教育を対象にして,校種やICT活用能力に応じた機能や画面に切り替えることができる設計思想を持った,課題解決的な学習が展開される際の学習者の学習活動と教員の教授活動を支援するための遠隔教育支援環境を設計して開発することを目的にする.
本論文では,本研究の目的を達成させるために,以下に示す5つの調査・研究・開発の成果がまとめられている.
(1) 遠隔教育の支援環境に関する研究動向の調査
(2) 遠隔教育を支援する環境・機能についての整理と必要機能の提案
(3) 「クラス(学級)」と「個」をつなぐ遠隔教育支援環境「つながる授業アプリ」の開発と評価
(4) 「比べる」協働的思考活動支援機能の開発と評価
(5) グループ学習活動・対話状況確認支援機能とグループ活動状況管理機能の開発と評価
(1)では,遠隔教育に関する研究動向を調査した.これらの整理・分類などを踏まえ,遠隔教育における学習環境,学習支援機能,授業支援機能の研究に対する本研究の位置づけを行った.
(2)では,遠隔教育をICTで支援する環境について説明した.さらに,2つのつながり(「クラス(学級)」と「個」)を保障する遠隔教育システムと協働学習支援システムに必要な機能を整理した.
(3)では,遠隔教育システムと協働学習支援システムの両方の機能を併せ持つ遠隔教育支援環境「つながる授業アプリ」を設計・開発した.さらに,「つながる授業アプリ」のの有用性を評価し,基本機能を完成させた.
(4)では,遠隔合同授業における小学生を対象として,より深い学びを実感できることを目的として,グループ活動時の思考に必要なプロセスを整理し,最も基本的な思考活動の1つである「比較思考」を協働的に進めることができる支援を「つながる授業アプリ」の拡張機能として実装した.「比べる」協働的思考活動支援機能は,「比べる」思考手順を1スライドずつ学習者間の協働的な思考手順として提示して,思考活動プロセスをガイドする仕組みである.さらに,開発した支援機能についてその有用性を評価した.
(5)では,大学の遠隔教育を対象にして,グループ学習活動における学習者の対話内容の確認や振り返り,教員による見とりを支援する目的として,対話音声データ(バーバル情報)とノート記述データ(ノンバーバル情報)を活用した活動状況・対話状況の可視化機能を「つながる授業アプリ」の拡張機能として実装した.さらに,教員の見とり支援としてグループ活動状況管理機能も拡張機能として実装し,これらの機能の有用性を評価した.
以上により,オンライン授業が展開でき,学習者の個別学習やグループ学習の活動支援や教員の見とり支援が可能な「つながる授業アプリ」の開発・授業実践を通して,遠隔教育において必要な学習環境の要素機能,学習支援・授業支援の機能を確認することができた.
Creators
横山 誠
Languages
jpn
Resource Type
doctoral thesis
File Version
Version of Record
Access Rights
open access