A Study on Patent Analysis Method Using F-term for Dominant Design in Product Development
Title
製品開発におけるドミナントデザインのFタームを用いた特許分析手法に関する研究
A Study on Patent Analysis Method Using F-term for Dominant Design in Product Development
Degree
博士(学術)
Dissertation Number
創科博甲第135号
(2024-03-18)
Degree Grantors
Yamaguchi University
[kakenhi]15501
grid.268397.1
Abstract
製品にはプロダクトライフサイクルがあり,その段階ごとに要求される開発内容も変化するため,市場における製品のイノベーションの状態を把握することが重要である. また,ドミナントデザイン発現前に製品を市場に投入することは,製品が広く受け入れられるための有効な手段の一つであるといわれている. しかし,ドミナントデザイン発現時期は,事後にしかわからないという問題があり,その対策として,特許情報を使った手法が多くの研究者によって検討されているが,製品に関する技術の専門家が必要であることが課題である. 例えば,分析に使う特許分類コードや技術の専門用語が特定できないことである. 特許情報を使った先行研究では,特許分類コードを使った方法,テキストマイニングを使った方法,機械学習・ディープラーニングを使った方法があるが,製品に関する技術の専門家の知見が必要とされている.そこで,製品に関する技術の専門家の判断によらず,イノベーションの状態変化,ドミナントデザインの発現時期を得る方法に対する社会的要求がある.
本研究では,製品に関する技術の専門家の判断によらず,日本の特許情報と分類コードのFタームを使い,ドミナントデザインの発現時期を得る新たな手法を提案した.また,分析手法の有用性の検証として,製品の開発事例を元に,ドミナントデザインの発現時期を示すことができることを確認した.ここで,検証には,組み立てて完成する製品で,精密機器・装置分野の製品であり,かつFタームが付与されているものを対象とした.
本論文は,以下の4章から成る.
1章では,研究の背景を述べ,先行研究の調査を行った. 先行研究の課題を認識し,取り組む課題を考え,本研究の目的を定めた. さらに,本論文の構成のアウトラインを示した.
2章では,製品に関する技術の専門家の判断によらず,Fタームを使い,イノベーションの状態変化,ドミナントデザイン発現時期を捉える新たな手法を提案した. 提案した新たな手法では,まず,分析対象の製品に関する特許を選定するために,特許分類コードのFIを特定する必要がある.FIを特定する手法の検討では,カメラを対象とし,製品を表す一般的な単語からFIを求めることができることを示した.また同時に,コア技術を表す特許分類コードを顧客の声から特定するため,日本の農業用草刈り機メーカーを分析し,コア技術を表すテーマコードが特定できることを示した.つぎに,イノベーションの状態変化とドミナントデザインの発現時期を得る手法を確認するために,先のそれぞれの結果及びFタームを用いて,製品に関するFIから,Fタームを特定し,Fタームから,イノベーションの状態変化を求めた.求めたイノベーションの状態変化から,AbernathyとUtterbackが提唱したA-Uモデルの条件を適用し,ドミナントデザインの発現時期を特定できることを示した.また,インクジェットプリンタ,NC加工機,プロジェクタについて分析し,ドミナントデザイン発現時期を求め,製品のドミナントデザイン時期と比較した結果も示している.
3章では,2章で示した,新たな手法の有用性を検証した.有用性の検証は,製品開発に成功した日本企業を事例として分析し,2章で得た結果と比較した.この分析企業は,日本の業務用可食インクジェットプリンタ市場において,最も早く製品を投入した企業の一つであり,市場においてトップシェアを獲得している.製品開発の歴史と,ドミナントデザイン発現時期の分析結果を比較し,製品開発に着手したタイミング,製品を市場へ投入するタイミングは,ドミナントデザインの発現時期の前であることを示した.このことから,本研究で提案する手法は,製品開発において,製品を市場へ投入するタイミングを判断する際に有用であることを確認した.さらに,製品開発においては,ドミナントデザイン発現時期を鑑みた製品を市場へ投入するタイミングだけではなく,ターゲット選定,独自性や品質を実現する技術開発も重要であるため,事例でとりあげた企業の事業戦略,実行計画についても調査した.事例企業は,製品を市場へ投入するタイミングを定め,目標時期までにターゲット選定,製品の独自性を実現するための課題認識,課題解決のための技術開発を,戦略的,計画的に実施しており,このことからも,本研究で提案した新たな手法は,事業戦略において,製品を市場へ投入するタイミングを決定することに活用できることを示唆している.
4章では,2,3章を総括した. 2章,3章の成果をまとめ,本研究で新たに提案した特許情報と日本の特許分類コードのFタームを使った特許分析手法は,組み立てて完成する製品で,精密機器・装置分野の製品であり,かつFタームが付与されている製品において,製品に関する技術の専門家の判断によらずドミナントデザインの発現時期を特定できることを示し,企業の製品開発事例の検証から,提案した新たな手法の有用性を示唆している.また,本研究の限界と今後の展望,さらに,その実現のために取り組むべき課題を述べた.
本研究では,製品に関する技術の専門家の判断によらず,日本の特許情報と分類コードのFタームを使い,ドミナントデザインの発現時期を得る新たな手法を提案した.また,分析手法の有用性の検証として,製品の開発事例を元に,ドミナントデザインの発現時期を示すことができることを確認した.ここで,検証には,組み立てて完成する製品で,精密機器・装置分野の製品であり,かつFタームが付与されているものを対象とした.
本論文は,以下の4章から成る.
1章では,研究の背景を述べ,先行研究の調査を行った. 先行研究の課題を認識し,取り組む課題を考え,本研究の目的を定めた. さらに,本論文の構成のアウトラインを示した.
2章では,製品に関する技術の専門家の判断によらず,Fタームを使い,イノベーションの状態変化,ドミナントデザイン発現時期を捉える新たな手法を提案した. 提案した新たな手法では,まず,分析対象の製品に関する特許を選定するために,特許分類コードのFIを特定する必要がある.FIを特定する手法の検討では,カメラを対象とし,製品を表す一般的な単語からFIを求めることができることを示した.また同時に,コア技術を表す特許分類コードを顧客の声から特定するため,日本の農業用草刈り機メーカーを分析し,コア技術を表すテーマコードが特定できることを示した.つぎに,イノベーションの状態変化とドミナントデザインの発現時期を得る手法を確認するために,先のそれぞれの結果及びFタームを用いて,製品に関するFIから,Fタームを特定し,Fタームから,イノベーションの状態変化を求めた.求めたイノベーションの状態変化から,AbernathyとUtterbackが提唱したA-Uモデルの条件を適用し,ドミナントデザインの発現時期を特定できることを示した.また,インクジェットプリンタ,NC加工機,プロジェクタについて分析し,ドミナントデザイン発現時期を求め,製品のドミナントデザイン時期と比較した結果も示している.
3章では,2章で示した,新たな手法の有用性を検証した.有用性の検証は,製品開発に成功した日本企業を事例として分析し,2章で得た結果と比較した.この分析企業は,日本の業務用可食インクジェットプリンタ市場において,最も早く製品を投入した企業の一つであり,市場においてトップシェアを獲得している.製品開発の歴史と,ドミナントデザイン発現時期の分析結果を比較し,製品開発に着手したタイミング,製品を市場へ投入するタイミングは,ドミナントデザインの発現時期の前であることを示した.このことから,本研究で提案する手法は,製品開発において,製品を市場へ投入するタイミングを判断する際に有用であることを確認した.さらに,製品開発においては,ドミナントデザイン発現時期を鑑みた製品を市場へ投入するタイミングだけではなく,ターゲット選定,独自性や品質を実現する技術開発も重要であるため,事例でとりあげた企業の事業戦略,実行計画についても調査した.事例企業は,製品を市場へ投入するタイミングを定め,目標時期までにターゲット選定,製品の独自性を実現するための課題認識,課題解決のための技術開発を,戦略的,計画的に実施しており,このことからも,本研究で提案した新たな手法は,事業戦略において,製品を市場へ投入するタイミングを決定することに活用できることを示唆している.
4章では,2,3章を総括した. 2章,3章の成果をまとめ,本研究で新たに提案した特許情報と日本の特許分類コードのFタームを使った特許分析手法は,組み立てて完成する製品で,精密機器・装置分野の製品であり,かつFタームが付与されている製品において,製品に関する技術の専門家の判断によらずドミナントデザインの発現時期を特定できることを示し,企業の製品開発事例の検証から,提案した新たな手法の有用性を示唆している.また,本研究の限界と今後の展望,さらに,その実現のために取り組むべき課題を述べた.
Creators
石井 好恵
Languages
jpn
Resource Type
doctoral thesis
File Version
Version of Record
Access Rights
open access