Gsk-3はATF4のプロテアソーム分解を介してマウス膵β細胞のアポトーシスを促進する
Title
Gsk-3はATF4のプロテアソーム分解を介してマウス膵β細胞のアポトーシスを促進する
Degree
博士(医学)
Dissertation Number
医博乙第1108号
(2023-07-05)
Degree Grantors
Yamaguchi University
[kakenhi]15501
grid.268397.1
Abstract
膵β細胞量の進行性の減少が糖尿病の発症・進展に関与する。糖尿病病態では、インスリン作用不足による高血糖に対する代償的なインスリン産生の増加や脂質異常のためにβ細胞において小胞体ストレスが亢進する。一方、セリン・スレオニンキナーゼGsk-3 はPI3/Akt により抑制され、Gsk-3 の活性制御障害がβ細胞不全と小胞体ストレス関連β細胞死に関連する。しかし、Gsk-3 を介した細胞障害の分子機構は十分に解明されていない。本研究では、Gsk-3 を介する小胞体ストレス応答調節と膵β細胞アポトーシス誘導の関連について検討を行った。方法:マウス単離膵ランゲルハンス氏島(ラ氏島)およびマウス膵β細胞株で薬理学的に小胞体ストレスを誘導した。Ins2 遺伝子に変異を持ち、変異インスリンの蓄積により小胞体ストレスが亢進しβ細胞死を来すAkita mouse 由来の膵β細胞株を遺伝的小胞体ストレスのモデルとして用いた。低分子化合物、あるいは酵素不活性型Gsk-3βの導入によりGsk-3 活性を阻害した。結果:小胞体ストレス下ではGsk-3 を抑制するAkt の活性が減弱しGsk-3 が活性化した。Gsk-3 はATF4 のSer214 リン酸化を介してATF4 とSCF-βTrCP の結合とそれに続くATF4 のユビキチン化、蛋白分解を促進する。したがって、Gsk-3 の抑制によりATF4 の分解速度が低下し、ATF4 蛋白質量が増加することが明らかになった。このとき、β細胞のアポトーシスが減弱することを確認した。この抗アポトーシス効果はdominant negative-ATF4 導入あるいはATF4 ノックダウンにより有意に減弱した。Gsk-3 抑制によるアポトーシス抑制のメカニズムについて、ATF4 の転写標的であるGADD34 および4E-BP1 の発現増強を介した全般的な蛋白翻訳の動態との関連が考えられた。さらに、Akita mouse 由来の膵β細胞株でもGsk-3 活性阻害によるアポトーシス抑制が確認され、これにはATF4 の発現増強と全般的な蛋白翻訳抑制が関連した。以上の結果より、インスリンシグナルとストレス応答のクロストークが明らかになり、Gsk-3/ATF4 経路が糖尿病におけるβ細胞保護の治療標的となる可能性が示唆された。
Creators
永尾 優子
Languages
jpn
Resource Type
doctoral thesis
File Version
Version of Record
Access Rights
open access