Assessment of the relationship between the hepatic contrast enhancement effect in the hepatobiliary phase and hepatic signal changes in free-breathing continuous multiphasic dynamic EOB-MRI
Title
圧縮センシングを用いた自由呼吸下での多相ダイナミックEOB-MRIにおける肝実質の信号の経時的変化と肝細胞相の造影効果との関連性の評価
Assessment of the relationship between the hepatic contrast enhancement effect in the hepatobiliary phase and hepatic signal changes in free-breathing continuous multiphasic dynamic EOB-MRI
Degree
博士(医学)
Dissertation Number
医博甲第1674号
(2023-03-16)
Degree Grantors
Yamaguchi University
[kakenhi]15501
grid.268397.1
Abstract
方法:
本研究は圧縮センシングを用いた自由呼吸下での多相ダイナミックEOB-MRIを撮像された96人の患者を対象とした。多相ダイナミック撮像として自由呼吸下で11秒毎に1相を5分間、脂肪抑制T1強調画像を撮像し、単純1相と造影28相を撮像した。造影剤投与後20分後に肝細胞相を撮像し、30相目とした。ROI: region of intensityを肝右葉に2つ、左葉に1つを脈管を避けながら可能な限り大きく設定した。3つのROIの信号強度の平均値をそれぞれの時相の信号強度とした。
以下の増強効果のパラメータについて評価した。
CER (contrast enhancement ratio)
CERy-x: (SIy -SIx)/SIx (x相目からy相目)とし、
CER4-pre:動脈相
CER7-5:門脈相から動脈相にかけて
CER7-pre:門脈相
CER28-pre:5分早期肝細胞相
CER28-7:門脈相から5分早期肝細胞相
CERHBP-pre:20分肝細胞相
GRL (gradient of regression line):回帰曲線の傾き
GRLy-x: x相目からy相目とし、
GRL4-2:動脈相での傾き
GRL7-4 :門脈相での傾き
GRL 7-2 :動脈相、門脈相にかけての傾き
GRL 28-7:門脈相から早期肝細胞相での傾き
先行研究によると、肝実質の線維化の重症度(F0-F2 vs F3-F4)に基づいてCERHBP-preでcut off値を0.703として肝細胞相での増強効果がinsufficient HBP enhancement groupとsufficient HBP enhancement groupに分けれるとしている。CERHBP-pre<0.703またはCERHBP-pre>0.703により患者を2群に分け、CERy-x、GRLy-xについて検討した。
上記に加えて年齢、性別、総ビリルビン、プロトロンビン時間、アルブミン、eGFRについても、この2群間で比較した(ウィルコクソンの順位和検定)。
肝細胞相の増強効果に対する影響の大きさを調べるためにノンパラメトリック検定も用いられた(スピアマンの順位相関係数)。
結果:
動脈相(CER4-pre、GRL4-2)に関する結果として、これらはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupの間に有意差を認めなかった。
動脈門脈相(1相目~7相目)に関する結果としては、CER7-preはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.55 vs 0.44, p<0.001)。CER4-pre、GRL4-2、Gradient7-4、Gradient7-2では2群間に有意差は見られなかった。
5分後の早期肝細胞相(1相目~28相目)に関する結果としては、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7においてsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.64 vs 0.47, 0.10 vs 0.03, 1.27 vs 0.27、すべてp<0.001)。
血液データ(総ビリルビン、プロトロビン時間、アルブミン、eGFR)においても2群間で有意差が認められた(p=0.004-0.049)。CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。
CER28-preが最も相関係数が高かった(0.838)。
考察:
動脈相では2群間(sufficient HBP enhancement groupとinsufficient HBP enhancement group)に有意差を認めず、門脈相のパラメータでは有意差が見られた。機序としては推測になってしまうが、肝の線維化の進行に伴い門脈血流は低下しやすいが、動脈血流は比較的保たれることが原因であろうか。
また、肝細胞相の信号強度は、血液データなどによって得られた肝機能を示す数値と相関することはこれまでにも報告されてきた。肝機能が良好であるほど、肝細胞がEOBを取り込みやすいためとされる。
本研究では腎機能と肝細胞相の信号強度とにも相関が見られたが、腎機能が低い症例の方がより肝排泄の割合が増えるからと思われた。
本研究のように、ダイナミック撮像中に得られるパラメータが肝細胞相における肝実質の信号強度と相関することを報告した研究はこれまでになかった。
CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは、いずれも血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。
本研究のようにダイナミック撮像中に得られたパラメータを用いれば、血液データよりも高い精度で肝実質の信号強度を予測することができる。
これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
結語:
圧縮センシングを用いた自由呼吸下でのEOB-MRIのダイナミック撮像おいて、肝実質の信号強度の変化を連続データとして捉えることにより得られたパラメータは、肝細胞相での肝実質の信号強度と強い相関を示す。これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
本研究は圧縮センシングを用いた自由呼吸下での多相ダイナミックEOB-MRIを撮像された96人の患者を対象とした。多相ダイナミック撮像として自由呼吸下で11秒毎に1相を5分間、脂肪抑制T1強調画像を撮像し、単純1相と造影28相を撮像した。造影剤投与後20分後に肝細胞相を撮像し、30相目とした。ROI: region of intensityを肝右葉に2つ、左葉に1つを脈管を避けながら可能な限り大きく設定した。3つのROIの信号強度の平均値をそれぞれの時相の信号強度とした。
以下の増強効果のパラメータについて評価した。
CER (contrast enhancement ratio)
CERy-x: (SIy -SIx)/SIx (x相目からy相目)とし、
CER4-pre:動脈相
CER7-5:門脈相から動脈相にかけて
CER7-pre:門脈相
CER28-pre:5分早期肝細胞相
CER28-7:門脈相から5分早期肝細胞相
CERHBP-pre:20分肝細胞相
GRL (gradient of regression line):回帰曲線の傾き
GRLy-x: x相目からy相目とし、
GRL4-2:動脈相での傾き
GRL7-4 :門脈相での傾き
GRL 7-2 :動脈相、門脈相にかけての傾き
GRL 28-7:門脈相から早期肝細胞相での傾き
先行研究によると、肝実質の線維化の重症度(F0-F2 vs F3-F4)に基づいてCERHBP-preでcut off値を0.703として肝細胞相での増強効果がinsufficient HBP enhancement groupとsufficient HBP enhancement groupに分けれるとしている。CERHBP-pre<0.703またはCERHBP-pre>0.703により患者を2群に分け、CERy-x、GRLy-xについて検討した。
上記に加えて年齢、性別、総ビリルビン、プロトロンビン時間、アルブミン、eGFRについても、この2群間で比較した(ウィルコクソンの順位和検定)。
肝細胞相の増強効果に対する影響の大きさを調べるためにノンパラメトリック検定も用いられた(スピアマンの順位相関係数)。
結果:
動脈相(CER4-pre、GRL4-2)に関する結果として、これらはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupの間に有意差を認めなかった。
動脈門脈相(1相目~7相目)に関する結果としては、CER7-preはsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.55 vs 0.44, p<0.001)。CER4-pre、GRL4-2、Gradient7-4、Gradient7-2では2群間に有意差は見られなかった。
5分後の早期肝細胞相(1相目~28相目)に関する結果としては、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7においてsufficient HBP enhancement groupがinsufficient HBP enhancement groupより有意に高い値となった(0.64 vs 0.47, 0.10 vs 0.03, 1.27 vs 0.27、すべてp<0.001)。
血液データ(総ビリルビン、プロトロビン時間、アルブミン、eGFR)においても2群間で有意差が認められた(p=0.004-0.049)。CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。
CER28-preが最も相関係数が高かった(0.838)。
考察:
動脈相では2群間(sufficient HBP enhancement groupとinsufficient HBP enhancement group)に有意差を認めず、門脈相のパラメータでは有意差が見られた。機序としては推測になってしまうが、肝の線維化の進行に伴い門脈血流は低下しやすいが、動脈血流は比較的保たれることが原因であろうか。
また、肝細胞相の信号強度は、血液データなどによって得られた肝機能を示す数値と相関することはこれまでにも報告されてきた。肝機能が良好であるほど、肝細胞がEOBを取り込みやすいためとされる。
本研究では腎機能と肝細胞相の信号強度とにも相関が見られたが、腎機能が低い症例の方がより肝排泄の割合が増えるからと思われた。
本研究のように、ダイナミック撮像中に得られるパラメータが肝細胞相における肝実質の信号強度と相関することを報告した研究はこれまでになかった。
CER7-pre、CER28-pre、CER28-7、GRL28-7の各パラメータは、いずれも血液データのパラメータよりも相関係数が高かった。
本研究のようにダイナミック撮像中に得られたパラメータを用いれば、血液データよりも高い精度で肝実質の信号強度を予測することができる。
これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
結語:
圧縮センシングを用いた自由呼吸下でのEOB-MRIのダイナミック撮像おいて、肝実質の信号強度の変化を連続データとして捉えることにより得られたパラメータは、肝細胞相での肝実質の信号強度と強い相関を示す。これにより、肝細胞相の撮像タイミングを症例により短縮できることが期待される。
Creators
田邊 雅也
Languages
jpn
Resource Type
doctoral thesis
File Version
Version of Record
Access Rights
open access
Relations
[references]
10.1016/j.ejrad.2021.109959