The philosophical studies of Yamaguchi University

山口大学哲学研究会

PISSN : 0919-357X

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The philosophical studies of Yamaguchi University Volume 28
published_at 2021-03-26

The relation between “Ten-do” and humanity in Ito Jinsai’s philosophy : based on “Makoto”

仁斎学における天道と人道 : 「誠」を軸として
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伊藤仁斎(一六二七-一七〇五)の学問において、「天道」や「天命」、ひいては「天」は、「人道」とどのように連関するのか。すなわち、「人道」に生きる主体にとって、「天」がもつ意義はどのようなものであったか。この問題は、すでにこれまでも論じられてきた。主要な先行研究を踏まえたとき、当の問題を探究し続けていくためのカギは、「天道」における「誠」と、「人道」における継続的な実践・修養の核と仁斎が位置づけた「忠信」、両者の関係にあるのではないか、と本稿は着想したものである。これらを順に問うていった結果、(1)「天道」における「真実無偽」の「誠」、(2)「人道」においてそれにもとらぬ生を実現した(「仁義礼智」の徳を体現し得た)「聖人」(あるいは「天命」を「知り」得た「君子」)のありよう、(3)「誠」には至らないながらもそれを「求」めて「尽」そうとする、という「人」一般の当為、(4)「誠を尽す」よりも手前で、広く全ての主体に開かれた「忠信を主とす」という当為、これらは、仁斎の理解において太く通じながらも、きわめて慎重な、段階的区分のもとにあることがわかった。しかし仁斎学の本領はもともと、人倫日用における卑近な道徳と、そこへの連絡を可能にする、「忠信を主と」した実践・修養・当為にある。仁斎が見ていたであろう「誠」や「天」との接点への手がかりも、その地平に立ち戻ってこそ、見出されなくてはならない。他者への「誠実」「朴実」を標榜する「忠信」は、「忠恕」をはじめとする他の実践項目とどのように連関しつつ、「仁義礼智」の道徳と、どのようにつながるのか。それを明らかにしていくことが、今後の課題である。