Journal of East Asian studies

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Journal of East Asian studies Volume 8
published_at 2010-03

The structure of the filial piety narration cutting the body in the popular novels

通俗小説における身を削ぐ孝心治療説話の構造
Tokunaga Sairi
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1.01 MB
D300008000001.pdf
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中国には、子が身を削いだ肉を薬として親に食べさせて治療する孝行説話がある。この治療は、親孝行のためにするとしても身体を傷つける行為は孝道に反する、という矛盾をもつがゆえに議論をよびながら、時代を経るごとに広がりを見せた。明清時代に発行された多くの通俗小説にも、この治療を取り上げるものが見られる。そうした通俗小説に見られる治療説話には、身を削がないでも助かったり、身を削ぐことを鬼神が諭したり、身を削いだ孝子を死なせまいとして鬼神がその命を救うなどの描写が見られる。これは、もし身を削いで子が死ねば、かえって親不幸になることを避けるためだと考えられる。しかしそれと同時に、ストーリー中には身を削ごうとする子の孝心に感動した鬼神によって、孝子や親が救われるという展開がみられるために、結果として身を削ぐ孝心治療を推奨する印象を読者に残す説話構造となっている。そのため、民衆はこうした治療説話を通して、身を削ぐ孝心治療を親孝行として肯定的に理解することとなった。