Journal of East Asian studies

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Journal of East Asian studies Volume 18
published_at 2020-03

Patrilineal concept of Miao ethnicity from a point of inheritance of Miao priest : centered on the ghet xangs dlianb in Shidong town, Guizhou Province

苗族社会における宗教的職能者の伝承形態からみる父系理念 : 中国貴州省黔東南州施洞鎮のゴウヒャンヒャンを事例に
Cao Hongyu
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2.25 MB
D300018000005.pdf
Descriptions
本稿は多民族国家である中国の苗族社会でゴウヒャンヒャンと呼ばれている宗教的職能者の伝承について考察したものである。今まで中国の西南部少数民族に関係する研究では、宗教的職能者は民族の歴史とルーツに関する神話、世界観や価値観などを含めて、それぞれの民族が持つ多種多様な信仰体系に支えられてきたというのが一般的である。近年、急激な社会変動に伴う少数民族の信仰体系の崩壊が危惧される中、とりわけ、宗教的職能者の後継者不足が少数民族の直面している深刻な課題とされるようになっている。本稿が対象とする貴州省黔東南州施洞鎮の苗族社会の宗教的職能者もその例外ではない。本稿はゴウヒャンヒャンが如何にこのような状況の中で伝承されているのかに着目し、主に父系出自が強く意識されている苗族社会の中で、宗教的職能者の伝承の類型に視点を置き、そこから苗族社会における宗教的職能者の伝承の意義を明らかにしたものである。本稿は実地調査から得たデータを基に、伝承の方式を宗教的職能者のライフコースと結びつけ、3類型に整理し検討を行った。その結果、①自分の一族の系譜において受け継がれる父系伝承であること。②自分の一族の系譜によって伝承されながらも、他の「知識豊富な」ゴウヒャンヒャンについて知識を拡大する二重伝承であること。③自分の一族の伝承がなく、弟子入りして資格を得ることの3つの伝承形式があることを明らかにした。そして、3つの伝承に類型化することにより、苗族社会の系譜観念の深さを確認した。これまでも父子連名による父系出自の理念を主として、苗族社会の社会組織を分析することは重要な研究課題とされてきたが、本稿では父系理念に従い、ゴウヒャンヒャンと呼ばれる宗教的職能者の伝承のあり方が、苗族社会において極めて重視されている系譜に大きく関与していることを、儀礼の有無から考察を行い、明らかにした。
Creator Keywords
宗教的職能者
父子連名
父系伝承
二重伝承
弟子入り