Journal of East Asian studies

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Journal of East Asian studies Volume 18
published_at 2020-03

Interpretation of Miao embroidery from embroidery line : the embroidery of Xijiang town, Leishan County, Qiandongnan Miao and Dong Autonomous Prefecture,Guizhou Province as the object of study

糸からの苗族刺繍研究 : 中国貴州省黔東南苗族侗族自治州雷山県西江鎮の刺繍を研究対象として
Yang Meizhu
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4.21 MB
D300018000004.pdf
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中国の苗族は文字を持たない民族であり、苗族の刺繍は時として自民族の歴史を記録する「文字」として説明される。これまで苗族の刺繍に関する研究は、刺繍の紋様、技法、色などの面にその意義を置き、論述するものがほとんどであった。細部である刺繍糸に注目して、糸・刺繍・刺繍製作者の関係についての研究はほとんど存在しなかった。しかし存在しないからといって、重要でないわけではない。刺繍を見る際に、紋様と技法はもちろん重要であるが、刺繍に不可欠な素材である刺繍糸を見逃しては刺繍そのものの価値を理解するには不完全である。本論の調査地は中国貴州省黔東南苗族侗族自治州雷山県の西江鎮とし、刺繍をする苗族女性に聞き取り調査し、現地の博物館、刺繍販売店などで集めた刺繍及び刺繍糸に焦点を当てる。これまで研究者たちが刺繍の紋様、刺繍の技法で苗族の刺繍を解読したことはもちろん重要であるが、刺繍製作には刺繍糸がなければならない。そのため、本論は苗族刺繍の刺繍糸に注目し、糸の色彩と素材の特質を検討した上で、刺繍糸、刺繍、刺繍製作者との関連性を考察する。近年、技術の発展により、機械製作の刺繍が現れ、手工製作の刺繍と同じ場所で販売されるような状況が生じている。本論は刺繍糸を通して機械製作と手工製作の刺繍の違いを見出すことで、手工製作の刺繍の芸術的な価値、文化的な価値及び経済的な価値などについて再考する。加えて調査地である西江で集めた刺繍のデータを分析し、刺繍の色彩的特徴を物質としての糸の観点からとらえなおし、女性たちが刺繍製作過程において、「いかに糸によって動かされているか」を明らかにする。また、糸・刺繍・刺繍製作者の関係を改めて整理することで、これまで技法と紋様だけを中心としてきた苗族刺繍の研究に新たな可能性を提示する。すなわち、本論は刺繍糸を通して、苗族の刺繍技法や紋様を中心とした刺繍の見方ではなく、これまであまり注目されてこなかった物質としての糸を中心とする新な視点で刺繍製作を「紐解く」ことを試みるものである。
Creator Keywords
苗族
刺繍
変化